市民が裁判に参加し、分かりやすく迅速な裁判の実現を目的に始まった裁判員制度は21日、施行から丸3年を迎える。法曹三者が「順調に運営されている」と評価する一方で、裁判員への負担など多くの課題も残されている。
同制度は2009年から始まり、従前の裁判官による裁判(裁判官裁判)と異なり、市民が裁判官とともに審理や評議に参加し、量刑を決める。裁判員法に基づき、施行後3年を経過した場合に、必要に応じて検討の上、見直しをすることになっている。
3月に山口地裁で公判があった宇部市の女児が顔を切りつけられた殺人未遂事件では、被害者家族の意見陳述もあり、求刑を上回る判決が言い渡された。裁判員経験者の女性は「私にも子どもがいるので、(家族の)つらい気持ちが分かった」と話し、これまでの裁判官裁判に比べ、市民感覚が量刑に反映されたケースとみられる。
一方、殺人や現住建造物等放火など重大事件を中心に扱うため、裁判員の心理的負担が懸念される。山口県内の裁判員経験者の中には「自分が人を裁く立場にあるのか」「被告の人生を決めなくてはいけないという不安があった」と話す人も。裁判員は守秘義務があり、判決後も評議の内容などを第三者に明かしてはいけないことになっている。
ほかにも負担がある。裁判員は午前中に選任手続きを終え、午後には初公判を迎える。「心の準備ができなかった」「職場に迷惑をかけた」と訴える裁判員経験者も少なくない。県内の裁判員裁判は山口市の山口地裁でしか行われない。裁判員が県内各地から足を運ぶため、来庁に時間がかかるなどの問題もある。
6月18日に初公判を控えた下関市彦島福浦町の女児殺害事件の裁判員裁判では、県内の裁判員裁判で過去最長の38日間の公判日程となる。犯人性が争点となっており、弁護側は無罪を主張していることなどから、裁判員には長期間の拘束や複雑な判断など、これまで以上の負担が予想される。山口地裁の竹田隆所長は「裁判員の一定の負担は理解いただき、検察官と弁護人の協力のもと、審理スケジュールを組み立てることが必要」と話している。 |