「太陽にほえろ!」「北の国から」などのドラマ、映画からバラエティーまで幅広いジャンルで活躍した俳優・地井武男(ちい・たけお)さんが29日午前7時ごろ、心不全のため都内の病院で死去した。70歳だった。葬儀・告別式は近親者のみで行う。近年はテレビ朝日系「ちい散歩」(06年4月~12年5月、関東ローカル)で人気を博したが、今年2月に体調不良を理由に番組出演を中断。6月から入退院を繰り返していたという。 個性派の名優が逝った。関係者によると、地井さんは1週間ほど前、都内の病院に入院。この日朝、体調が急変し、帰らぬ人となった。一人娘の麻衣子さん、04年に再婚した12歳年下の元モデルの夫人が最期をみとったそうだ。葬儀・告別式は近親者のみで行い、後日、お別れの会を開く。
地井さんは1月末、「視野が狭くなった」と目の不調を訴えて検査入院。2月、6年間続いたレギュラー番組「ちい散歩」(テレビ朝日系)の出演を見合わせ、休養を発表。検査の結果、心不全の恐れがあるとして療養が長期化。6月からは入退院を繰り返していた。
地井さんは高校卒業後、俳優座養成所に入り、1968年に「斬る」で映画デビューした。俳優座養成所の同期は「花の15期生」と言われ、赤座美代子、栗原小巻、太地喜和子さん(故人)、高橋長英、夏八木勲、林隆三、原田芳雄さん(故人)、前田吟、村井國夫、竜崎勝さん(故人)ら、そうそうたるメンバーがそろっていた。
70年の初主演映画「沖縄」で注目を集め、「海軍特別年少兵」(72年)で毎日映画コンクール男優演技賞を受賞。三部作の映画「戦争と人間」「あゝ野麦峠」などの文芸作品にも出演している。ドラマでは幅広い役柄をこなし、「太陽にほえろ!」ではベテラン刑事の井川利三を、「北の国から」では田中邦衛が演じる主人公の親友・中畑和夫を熱演した。
96年に狭心症を患い、仕事先の札幌市内の病院に1か月近く入院したが、それ以降、大病はなかった。2001年に乳がんのため、長年連れ添った元女優の佐和子夫人(享年61歳)と死別。地井さん本人は再婚を機に大好きなたばこもやめ、健康面にも気を使っていたという。
近年は「ちいちい」の愛称でバラエティー番組などで親しまれた。ナビゲーター役を務めた「ちい散歩」では、街を紹介しながら歩き、地元の人たちと交流。“町歩きの達人”として好評を得た。5月4日放送の最終回には、直筆の手紙で「突然病に倒れ、私自身もびっくり致しました。この際、治療に専念すべくお休みさせていただくことに致しました。担当者の一人として大変楽しく、あっという間の6年でした」と思いをつづっていた。
◆地井 武男(ちい・たけお)1942年5月5日、千葉県出身。ドラマ「刑事貴族」「新マチベン」「ハコイリムスメ!」などに出演。NHK「双方向クイズ にっぽん力」では司会、「スーパーモーニング」「ザ!情報ツウ」ではコメンテーターを務めた。趣味はゴルフ、絵で美術展に出展するほどの腕前。身長175センチ。血液型B。
◆絵手紙563枚、7月10日から展示 〇…約6年にわたって出演した「ちい散歩」で、地井さんが描いた絵手紙を披露する「地井さんが描いた563枚の絵手紙展」が7月10~16日、東京・銀座三越で開催される。商店街や伝統芸の職人、散歩を通して目にした風景を描いた一点モノの絵手紙を展示販売するそうだ(一部非売品もあり)。
[2012/6/30-06:05 スポーツ報知]