地井武男さん急死…２月から休養、復帰目指し散歩も

死去した地井武男さん Photo By スポニチ

　「ちい散歩」などのバラエティー番組や、ドラマ「太陽にほえろ！」「北の国から」などでの人情味あふれる演技で人気を集めた俳優の地井武男（ちい・たけお）さんが２９日午前７時５分、心不全のため東京都港区内の病院で死去した。７０歳。千葉県出身。葬儀・告別式は近親者で行い、後日お別れの会を開く。心臓疾患で今年２月から休養し、入退院を繰り返していた。

　名優がまた旅立った。地井さんは１０日ほど前に検査のため入院し、２９日早朝に容体が急変。１２歳年下の妻、０１年６月に死別した前妻との１人娘にみとられながら、静かに息を引き取った。

　今年１月末に「視界が狭くなった」と体調不良を訴え検査入院。心臓の疾患と診断され、２月には「ちい散歩」の出演を見送るなど当面の仕事をとりやめ、休養を発表した。その後も、入退院を繰り返していた。

　高校卒業後の１９６３年に俳優座養成所入り。同期で仲が良かったのが小野武彦（６９）、高橋長英（６９）、夏八木勲（７２）、前田吟（６８）、村井国夫（６７）と、元フジテレビの高島彩アナウンサー（３３）の父で故竜崎勝さん（８４年に４４歳で死去）。この７人で俳優事務所「どりいみい７」を作ったこともある。私生活でも心を許せる仲間だった。

　関係者によると、地井さんは「見舞いは家族と“どりいみい７”のメンバーだけに…」と希望。知人は「俳優として、闘病している姿は限られた人にしか見せたくなかったのでは」と話しており、俳優ならではの美学を最期まで貫きたかったとみられる。

　私生活では０１年６月、「真木沙織」の芸名で活躍した元女優の前妻を乳がんで亡くした。０４年に再婚した元モデルの妻と、長女は仲が良く、そろって病室で見舞った。２８日までは会話も交わし、家族で和気あいあいと過ごしていたという。

　知人によると、１カ月ほど前には“どりいみい７”の仲間と食事をするほど回復し、復帰を誓っていた。

　「ちい散歩」は５月４日放送分で終了したが、もともと散歩好き。休養中も、俳優復帰を目指して体力を付けようと、家に戻ってくると近所を散歩するなどしていた。あいさつを交わした付近の住民は「顔色はあまり良くなかったが、笑顔であいさつしてくれて、具合が悪そうには見えなかった」と驚いていた。

　小野は「覚悟はしていましたが、まいりました。これからゆっくり受け止めます」と悼み、夏八木は「２０代からきょうまで肩を接してともに走ってきたランナーが突然消えた。ぽっかり穴があいた。この喪失感に充てる言葉は見つからない」。前田は「よきライバルであり友人。身内を亡くしたかの悲しみに暮れております」とコメント。

　やはり同期だった故原田芳雄さんは昨年７月に死去。通夜で、地井さんは「（原田さんに）若いころ、５００円貸したんだよ。いつ返してくれるんだよ」と独特の言い回しで悲しみを表現していた。天国で再会し、５００円をめぐって笑い合うに違いない。

　◆地井　武男（ちい・たけお）本名同じ。１９４２年（昭１７）５月５日、千葉県生まれ。６３年俳優座養成所に入り、６８年に映画「斬る」でデビュー。７２年「どぶ川学級」などで毎日映画コンクール男優演技賞を受賞。２時間ドラマにも多数出演、シリアスからコミカルな役まで幅広く演じ分けた。血液型Ｂ。