審理しているのは、フジテレビが本年1月9日(祝)の『情報プレゼンター とくダネ!』で放送した「ブーム発掘!エピソード・ゼロ(2)身近なモノが…知られざる街角の芸術家編」と題した企画で、ストロー、バナナ、海苔、それに石を素材とした4種類の作品と作者による制作の様子などを紹介した。
申立人は、ストローを素材にした作品(ストローアート)の作家。申立書によると、数本のストローで作り小瓶に活けた組作品の椰子を1本ずつに崩し、本来飲み物に挿すためのものではないにもかかわらず、飲み物に挿して喫茶店の客に出し反応を撮影・放送したこと、出演者に4作品の人気投票をさせた上、キャスターが「石以外は芸術ではなく趣味の域だ」とコメントしたことについて、「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」と訴えている。放送後、メールでフジテレビと交渉を続けてきたが、フジ側から提示された謝罪放送の文案に承諾しかねるとし、やり取りを重ねても話が通じないとして4月3日、委員会へ申立てを行った。視聴者への謝罪とイメージの回復、及び申立人への謝罪などを求めている。
これに対して、フジテレビは、「申立てに関する経緯および見解」の中で、「申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている。演出方法を事前に明確に伝えなかったという落ち度も認め、放送でのお詫び案を5回示して誠意をもって対応してきたつもりだが、理解を得られていない」、「現在に至るまで十分なコミュニケーションは取れていないが、実質的な話し合いに向けてメールでやり取りしている最中との認識でおり、引き続き誠心誠意話し合いを続けたいと考えている」としている。
5月の第183回委員会では、双方から提出された書面及び資料をもとに審理入りするかどうか検討した。その結果、本件申立ては審理の対象となる苦情に該当し、かつ双方の話し合いは相容れない状況になっていると判断でき、運営規則第5条の苦情の取り扱い基準を満たしているとして審理に入ることを決定した。
6月の第184回委員会では、審理入り決定後に双方から書面や参考資料の提出を受けて実質的な審理に入った。局側には番組の編集権があるが、演出や構成を事前に出演者にどこまで説明すべきか、ストローアートの組作品をばらし飲み物に挿し客の反応を撮影した演出や「趣味の域」というキャスター発言を人権や放送倫理との関係においてどのように評価するか、などをめぐって意見を交わした。
次回、7月の委員会では、申立人とフジテレビの双方に対してヒアリングを行い、さらに審理を進めることになった。
6月19日の第184回委員会で審理入りが決定した。
対象となった番組は、NHKが本年3月10日に放送した『NHKスペシャル「もっと高いところへ〜高台移転南三陸町の苦闘〜」』。昨年3月11日の東日本大震災の際、町の防災対策庁舎屋上に避難した人たちのうち42人が津波の犠牲となった宮城県南三陸町の事例を取り上げ、屋上での様子を撮った写真、町長や住民へのインタビュー取材等を交え、当時を振り返るとともに、町の高台移転の現状と難しさ、今後の課題について伝えた。
この放送に対し、番組内で使われた屋上での写真に顔と姿が写っていた職員の遺族から「肉親の最期の姿を見て大きな衝撃と苦痛を受けた、亡くなる直前の写真であれば全遺族の了解を得るか、得られなければモザイクをかける等の配慮が当然ではないか」として、NHKに謝罪等を求め、申立てがあったもの。
委員会は、委員会運営規則第5条の規定に照らし、本件申立ては要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。来月から実質審理に入る。
(詳しくは第184回委員会議事概要へ)