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ユン: 暗く、深い、闇の底…。独り、泣く、冷たい世界…。
ユン: …わかる…、そこにいるんだろ? …紅の翼…、オレを見てる…。
ユン: こんな時間は、もうイラナイ…。これ以上、苦しめないでくれ…。
ユン: …クソッ! …この石コロに、自分を封じ込めることが出来ればいいのに…!
ユン: …なんの役にも立たない…傷つけることしかできない、この…ちから…。
ユン: イヤだ…イヤだッ…! オレが…神獣に…? なるしか…ない、のか…。


オリアクス: 準備はいいかー! …ついにここまで来ちまったな。
オリアクス: ルーチェ、それにお前たち。よく付いてきてくれた。
オリアクス: ユンを連れ戻すため、力を尽くすぞ!
ルーチェ: ここが Chaos Age…。暗く、寂しいところですね…。
ルーチェ: 光と闇が混ざり合った、激しい力の奔流を感じます…。
ルーチェ: …迷える子羊は、無事でしょうか?
オリアクス: ――ユン! 無事だったか!
ユン: オリアクス…兄ちゃん…? ルーチェ…姉ちゃん…? それに、みんなも…
ユン: …どうして? …ここは兄ちゃんたちの来るところじゃないよ…。
ユン: …もう、諦めた。…オレは逃げられない。あの【神獣】を、受け入れるしかないんだ…。
オリアクス: 何をグズグズ言っている! 俺たちは、お前を Present Age へ連れ戻すために来た。
オリアクス: いいから…、来い。…詳しい話は、向こうでいくらでも聞いてやる!
イーゴ: オリアクスか…。また【器】が暴れているのかと思ったが、 妙な客が来たものよ…!
イーゴ: わざわざ【サザン ゲートキーパー】の、餌食となりに来たのか?
イーゴ: ――【器】よ、喜べ!【神獣】となった貴様が、最初に血祭にあげる贄が、目の前に――
ユン: …やめろッ! オレのことを勝手に喋るなッ!!
オリアクス: サザン…ゲートキーパー…? …【器】だと?
ユン: …兄ちゃんだって、わかってるだろ…? オレは…オレは、人間じゃない…っ!
ユン: …Chaos Age で生まれた、【神獣】を宿すための【器】なんだ!
ユン: 【サザン ゲートキーパー】に身体を明け渡すために、生きてきた…。
ユン: 【神獣】と1つになったら、オレは人をキズつけるだけの生物になる…。
ユン: 血にまみれるためだけに、生き続けるんだ!
イーゴ: …そう。こやつの命に価値などない! 必要なのは、【器】としての肉体のみ!
イーゴ: 運命に抗うのは自由…。だが放っておいても、あと数日の命よ…!
イーゴ: Chaos Age で息絶えれば、【肉体】は無に帰し、【魂】は永久に混沌の世界に囚われるだろう!
イーゴ: …だが、サザン ゲートキーパーと一つになれば、話は別だ。
イーゴ: 【魂】は解放され、【肉体】は神獣として生き長らえることが出来る…!
イーゴ: ――そいつは、闇に囚われることを恐れ、【神獣】と一体になることを決めたのだ!
オリアクス: …ユン。…お前、本当にそれでいいのか?
オリアクス: 【サザン ゲートキーパー】に、身体を乗っ取られちまっても、いいのか!
オリアクス: ――お前は、血を嫌い、闇に震えた。なぜ、受け入れる必要があるッ!
ユン: ――オレだってッ! …オレだって、イヤだよ! 神獣になんか、なりたくない!
ユン: 楽しい時間を、一緒に過ごしたみんな…
ユン: それを、オレの体で…この腕で…痛めつけるなんて…、イヤだ、イヤだよ…。
ユン: でも、もうここからは逃げ出せない…。…兄ちゃんにはわかるでしょ? 忍び寄る、闇の気配…
ユン: 【サザン ゲートキーパー】はそこまで来てる。…オレはもう、ヤツを受け入れるしか無いんだ…!
オリアクス: ――よし、わかった。
オリアクス: ユン。これ以降「オレ」と言うのはやめろ。俺の知る坊主は、いつも「僕」と言っていた。…戻せ。
オリアクス: そして、命が尽きる瞬間まで「人」として…「ユン」として、生きろ!
ユン: …え?
オリアクス: ――イーゴ様。
オリアクス: サザン ゲートキーパーの【器】には、ユンの代わりに俺を使ってください。
オリアクス: …たとえ、坊主があと数日の命だとしても、構わん…!
ユン: …兄ちゃん! なに言ってるの…? やめて…、やめてよッ!
ユン: 兄ちゃんは関係ない!
オリアクス: …神獣の覚醒が、マブ教にとって――イーゴ様にとって大切なことは承知しています。
オリアクス: なればこそ…その重責を、こんな坊主じゃなく俺に任せてください。
イーゴ: …うぬぼれるな! 貴様ごときの力で、務まるとでも思っているのか!
イーゴ: カオス生物を器にしなければ、神獣は本来の力を発揮できん。
イーゴ: 弱き者は、不要! 何の役にも立たん虫ケラ同然の存在よ…!
イーゴ: 第一、子どもの姿をしていようとも、そいつはカオスの生命体。
イーゴ: 本気を出せば、ビスクの街など、一撃で跡形もなく滅ぼすことができる。
イーゴ: そんな化け物を助け、何になるというのだ? そいつの生きる場所など、どこにも在りはせんわ!
オリアクス: 俺は、どんな試練でも受ける覚悟がある!
オリアクス: ユンが「人」として死ねるのなら…、俺の魂など惜しくは無いッ!
イーゴ: …クックックッ。
イーゴ: …面白い。面白いぞ、オリアクス! 貴様は、マブ神祭をあそこまで成功させた男。
イーゴ: そこまで言うのであれば、その力、見せてもらおう!
イーゴ: 貴様は【サザン ゲートキーパー】となって後、この地に群がる人間どもを、血祭りにあげることができるか?
イーゴ: …断末魔が闇にこだまするたび、神獣は本来の力を取り戻してゆく…!
イーゴ: そして、貴様の肉体も、精神も、完全に混沌へと葬られるだろう…! それでも良いのだな…!
オリアクス: …構わん!
ルーチェ: オリアクス、本気で言っているのですか!
ルーチェ: あなた様の魂は…この暗闇に呑まれてしまうのですよ!?
オリアクス: ――構わん。
イーゴ: クックックッ…! 6体の神獣がこの時空に集う時、すべての力は我が物となる…!
オリアクス: …お前たち。俺は本望だ。
オリアクス: イーゴ様に拾われ、闇の力に染まり、ギルドを率いてきた…。
オリアクス: たくさんの、愛すべき信徒にも恵まれた。…悪くない時を、過ごしたと思う。
オリアクス: 闇の力は不滅だ。…マブ教徒ども、ダイアロスを紅に塗り替えろ! …マブ神祭で深めた血の結束を、ムダにするんじゃない!
オリアクス: …そして、ルーチェ。 お前とは色々とぶつかりもしたが…今となっては良い思い出だ。
オリアクス: お前が、ユンのために来てくれるとは思ってもみなかったぞ。
ルーチェ: …迷える子羊を救うことは、私たちの使命です。
ルーチェ: ですが、それだけではありません。今回のあなた様の行動に、深く感銘を受けました…。…力になれず、口惜しく思います。
ルーチェ: …今後もマブ教とは、徹底的に戦わせて頂きます。…良いですか? あなた様と!でございます!
ユン: 兄ちゃん、イヤだ…、…僕、僕…っ…!
ユン: …僕、何のお礼もしてない! …助けてもらうばっかりで…
オリアクス: いいか、「ユン」。俺が与えた名を、決して忘れるな。
オリアクス: 最後まで、胸を張って生きろ。…命が尽きるその瞬間までな。
オリアクス: 俺は、お前を拾ってから…今まで気付かなかった多くの物を見出した。
オリアクス: 過去に失った物、これから失うであろう物、俺の中に眠る、人を思いやる心…。
オリアクス: …悪くない、気分だったぞ。
オリアクス: ――そこにいるのだろう【サザン ゲートキーパー】!
オリアクス: さぁ…、来い!!
オリアクス: 血塗られた御手に、栄えあれ――!
イーゴ: クックックッ…! 新たな神獣が覚醒したぞ!!
イーゴ: 人間とはいえ、暗使の頂点に君臨する男だけはある。不完全ながらも、分身は作り出せるようだな!
イーゴ: さぁ【サザン ゲートキーパー】よ! 血を浴び、本来の力を取り戻せ! 全てを混沌に沈めるのだ…!
サザン ゲートキーパー: …ぐ……ッ!
サザン ゲートキーパー: お、お前たち……、歯ぁ…くいしばれッ!
サザン ゲートキーパー: …ここにいたら、…俺に…殺されるぞッ…!
サザン ゲートキーパー: 次に、会うときは…容赦せん…! …だが、今は生き延びろ…! ユンと共に、帰れ……ッ!
ユン: ――今だッ!
ルーチェ: オリアクスッ!!
サザン ゲートキーパー: …さらばだ。


サザン ゲートキーパー: ――シシッ!


ルーチェ: …皆さま…? おケガはありませんか…?
ルーチェ: …ここは…イプス雪原…? …Future Age へと戻ってきたのですね…。
ルーチェ: …オリアクスが最後の力を振り絞り、逃がしてくれたのでしょう…。
ルーチェ: …そして恐らくは、これが彼に残された最後の良心…。
ルーチェ: 【サザン ゲートキーパー】となったオリアクスは、じきに人の心を失うでしょう。
ルーチェ: もはや彼は…「人」としての存在ではありません。【悪しき神獣の1人】として、混沌の地で生き続けるのです…。
ルーチェ: Chaos Age のイーゴは、私たちが生きる時代―― Present Age のイーゴとは全く違う、強大な邪念に包まれていました。
ルーチェ: この Future Age でカオス・ゲートを開き、邪悪な力を一身に集めたのでしょう。
ルーチェ: あの場で感じた気配を思い出すだけで、震えが走ります…!
ルーチェ: 全ての神獣が彼の元に集う時、あの者は、どれほどの力を掌握するのでしょうか…。
ルーチェ: ――そういえば…ユンの姿が見当たりませんね?
ルーチェ: ユン? ユンッ! どこにいるのですかッ? ――まさか…!
ユン: ルーチェ姉ちゃん、みんな…、僕なら大丈夫だよ。心配しないで…。
ユン: ねぇ…1つ、とっても大事なお話をするから、聞いてくれないかな?
ユン: …僕ね、ここへ飛ばされる寸前に、【オリアクス兄ちゃんの意識】を封じたの。
ユン: Chaos Age にだけ存在する、記憶と意識を封じられる石――この【時の石】に、ね。
ユン: この意識を移す【身体】さえあれば、兄ちゃんを復活させられるかもしれない…。
ユン: その可能性は、この Future Age に眠っているんだ。…この雪原のはるか上空に浮かぶ、【浮遊都市 バハ】にね!
ユン: …Chaos Age で、イーゴから聞いたことがあるんだ…
ユン: 【バハ】では、この時代のイーゴが、失われた古代文明の力を暴いて、人工生命体を生み出しているんだ…って。
ユン: たしか…【ホムンクルス】とか言ってた気がする。
ユン: …ルーチェ姉ちゃん、この石を受け取って欲しい。そう、【時の石】だよ…!
ユン: 僕は、兄ちゃんの意識を封じるために、カオス生物としての力をほとんど使っちゃったんだ。…だから、僕じゃ復活させられない…。
ユン: でも、兄ちゃんのことを大切に想う、勇気ある人ならきっと、何とかしてくれると思うんだ!
ルーチェ: …このような小さな石に、オリアクスの意識が…?
ルーチェ: ユン…。たしかに受け取りました。
ユン: エヘへ! 僕ね、自分の力は、人をキズ付けるコトにしか使えないと思ってた…
ユン: だから、最後の最後で、大切な人のために使えて嬉しいよ!
ユン: …僕、もう行かなくちゃ…。
ユン: オリアクス兄ちゃんがくれた、大切な大切な宝物だもん…。一分だって、ムダにするもんか!
ユン: 動けなくなるまで色んな物を見て…色んな物に触れて…、たくさんのことを感じたいんだ。
ユン: …みんなの顔をみたら、泣いちゃいそう…。
ユン: …だから僕、…このまま行くね。
ユン: 人間の心、あったかい心。…幸せな気持ち。
ユン: みんなと会って初めて知ったんだ。
ユン: 本当にありがとう…。僕を、「人」にしてくれて、どうもありがとう。
ルーチェ: ――ユン。あなたは、強い子ですね…。
ルーチェ: 残された時間を、精一杯…生きるのですよ。


ルーチェ: …皆さま? ユンから預かった【時の石】が、かすかに熱を発しているようです。
ルーチェ: 封じ込められた「人」としての意識が――オリアクスが、呼んでいます。
ルーチェ: これを用いれば、【浮遊都市 バハ】で、彼の肉体を復活させることができるかもしれません。
ルーチェ: …残念ですが、ここでお別れです。
ルーチェ: 私は、ユンが残した言葉を信じ、【バハ】へ向かいます。
ルーチェ: 邪神を信奉する愚か者ではありますが、ユンの身代わりとして命を捧げた彼を、このまま見捨てることはできません。
ルーチェ: この白銀の世界に眠る奇跡を、きっと呼び覚まして見せます…!
ルーチェ: …いつの日か【バハ】に来ることがあれば、再びお会いできるかもしれませんね…。


ルーチェ: ラル・ファク神よ…この勇気ある者たちに、祝福を!!


ナレーター: 以上をもちまして、ストーリーイベント【少年ユンの物語〜Southern Gate Keeper 誕生悲話〜】を終了いたします。
サザン ゲートキーパーとの戦いに挑戦される方は、4月9日〜10日の【風の日】18:00から解放されるカオス・ゲートより、時の間へとお進み下さい。
開催日が変更となり、大変なご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。ご参加ありがとうございました。


こうして、一つの物語が終わる。
人と魔、二つの心を同時に宿していた男、オリアクス。
新たな次の物語が始まろうとしている今、我らはただ、再び彼らの帰りを信じて待つのみである…。