正直亭素直の、正直で素直な書き込み
部活が終わったので、書き込みます、正直亭素直です。
実は私、さっきまで泣いていました。
と言うのも、私は演劇部に所属しているのですが、今日は右足が痛いし、演技に関しても、演出に言われたことを改善しようとしても何もかもが上手く行かず、部活が終わり、みんなが部室に戻っても、自分だけ活動場所の教室に籠もって落ち込んでいました。
ああ、こんなんじゃ、これから入ってくる後輩達に示しつかないなぁ……なんで他の奴らは上手くできているのに、俺だけダメ出しばっかりされるんだろう……こんなんだったら、もう部活辞めようかな……
そんなことばかり考えていました。
しかしそんな時に、タイミングがいいのか悪いのか、演出担当の男の同輩が教室に入って来ました。
「どうした!?」
私は俯いた自分の顔を僅かに彼の方向にむけました。すると彼は、そんな私を見たのか、
「そんじゃ」
と、私に一瞥をくれて去っていきました。
その時、私の目から何滴も涙が零れ落ちました。嗚咽をあげながら。
その声を聞いたのか聞いていないのか、先程の演出の同輩と、女子の同輩が一緒に来ました。そして、私にこう言いました。
「悩み、聞くよ」
私はもう何もかもが堪えきれなくなって、手で涙が流れている両目を塞ぎながら、これまで私が思ってきたことを吐露しました。
このままじゃ、後輩達に示しつかない、とか、指摘されたところが全く出来なかった、とか。
数分後、私が今の心情を泣きながら吐露し終えると、女子の同輩が口を開きました。
「そっかそっか。正直亭、そんなに悩んでたんだ……」
男の同輩も口を開く。
「……まあ、ゆっくりやっていこうよ」
どういう意味だ? 私は訝しげに同輩の話に耳を傾けました。すぐ後に、女子の同輩が私に話し掛けました。
「正直亭、すごいね。そんなに自分と向き合って。うち、脳天気だから、あんまり自分のこと考えないや」
「そうだよ。お前、泣くほど自分のこと考えてたのか。こっちが驚いたよ」
男の同輩が言ったあと、女子の同輩が優しく言いました。
「正直亭、正直亭さ、後輩達に示しつかないって言ったよね?」
私は二人の目も見ずに首を縦に振りました。男の同輩が言う。
「俺達、先輩になるわけだけど、まだまだ未熟じゃん。俺なんか中学生の頃から演劇やってんのに、まだまだなってないところがいっぱいあるじゃん」
「そうそう。(男の同輩を指差し)こいつ見れば分かるでしょ。うちら、まだまだ未熟なんだから、そう焦る必要無いよ。むしろ後輩が入ってきたらさ、後輩達と一緒に、うちらを高めあっていけばいいだけなんだし」
女子の同輩がもう一言告げました。
「それにうちら三人って、人のこと考えれば考えるほど、どつぼにはまっていく性格じゃん。だから、重く考えないほうがいいと思う」
男の同輩が笑う。私もようやく二人に目を合わせることが出来ました。喋りたがりの彼女は、更に一言告げました。
「それと後輩達の前では、無理に先輩ぶらなくていいと思うよ。無理して気張るよりも、自然に接していけばいいと思う」
男の同輩も口を開きました。
「俺だって、悩みに悩んだ時期があったよ。この前の公演で主役やったじゃん。あれ、ものすごく悩んだんだよ! その人のキャラとか、性格とか、動きとか」
そうやって話している内に、自分の心が次第に晴れてくるのを感じました。
「だからうちらが言いたいのは、これから、ゆっくり、少しずつでいいから成長していこうってこと。現にうちだって、自分に与えられた役のキャラクター設定とかですごく悩むことがあるよ。だから、この部活に入っている人達は、みんなではないけれど、正直亭が持っているような悩みを持っていると思うんだ」
それに、もう一言告げました。
「それにさ、正直亭、これから悩みがあったら、うちに言ってね。できる限り相談にのるから」
私はもう泣いてはいませんでした。すると、部長が気まずそうな顔で入って来ました。
「大丈夫?」
私は笑顔で首を縦に振っていました。部長も一安心したみたいで、部室に戻っていきました。すると、女子の同輩が突然こう言いました。
「なんだか正直亭を見ていると、うちも泣きたくなってきた」
男の同輩が笑ってつっこみます。
「ここで泣くなよ!」
その直後、彼女は毅然として立ち上がり、私ともう一人の同輩の腕を引っ張って、こう言いました。
「これからも頑張っていこうよ!!」
私達二人は、雄叫びに近い声で、
「オーッ!!」
と叫びました。
それから間もなくして、私は帰り支度をするために部室へ戻りました。そこには、三年生の先輩が中にいました。
「あぁ、なんだか気が晴れた……」
私は独り言のように言いました。三年生はそれを聞いて、
「気が晴れた……?」
と呟きます。そして、私に聞いてきました。
「ねえ、気が晴れたって、どういうこと?」
しかし、私が答えを返す間もなく、先程の二人が部室に到着。それを見た三年生の先輩は、
「そういうことか……」
どうやら、私のしたことを理解してくれたみたいです。そして、私に笑って一言告げました。
「溜め込んでいたことを吐き出すのは、いいことだと思うよ」
私は笑って頷きました。
帰りはバスで帰りました。相談に乗ってくれた男の同輩と一緒でした。バスの中では笑っておしゃべりが出来ました。
なんでも、男の同輩は、私の相談に乗ってくれた女子の同輩を心から信頼しているとのこと。数日前に初めてそのことを聞いた私は、笑ってその話を聞いていたのですが、今になって、彼の気持ちが痛いほど分かりました。
降り場所のバス停に着き、男の同輩と別れると、私は相談に乗ってくれた二人にメールを送りました。
『今日はいろいろと有難う!!おかげで気が晴れたよ!!じゃ、明後日にまた会いましょう。』
明後日が楽しみです。
4月11日、この日も練習がありました。しかし、この日は9日のような失敗などなく、我ながら上手く演じることが出来ました。やっぱり心のもやもやを晴らすことは重要なんだなぁと思いました。
そして、今日も私は部活動があります。今日も張り切って行きます。それでは。
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