2012年6月29日(金)
6月28日終値
株式:独6228.99 +92.30 英5523.92 +76.96 米12627.01 +92.34
10年債:独1.560% +4.4bp 英1.688% +0.2bp 米1.621% -0.7bp
商品:金1553.90 -23.60 WTI 78.44 -1.76
EUサミット一日目は事前予想通りの展開といっていいだろう。肝心な事柄は何も決まらなかった。各国の主張や思惑の違いがぶつかり合い、絡み合った複雑な状況が浮かび上がっただけである。
1200億ユーロの成長パッケージに関してアウトラインは合意されたが、イタリアが最優先課題に掲げる国債利回り適正化のための買支え措置が合意されない限り同国は成長パッケージの署名を拒否すると明言し、EFSF等のユーロ共通基金による国債介入に反対するドイツ政府と真っ向から対立している。モンティ伊首相は月曜朝まで討議する用意があると譲歩を拒否している。
昨日も当コラムで書いたようにモンティ首相は緊縮財政反対勢力から厳しい攻撃にさらされており、成果を持ち帰れなければ内閣が崩壊するリスクに直面している。ドイツ政府は一日目の会議終了後に予定していたメルケル首相の記者会見を急遽キャンセルした。これを受けて、マーケットではひょっとしたらドイツが軟化する兆しかと売り込まれていたリスク資産を引けにかけて買い戻す動きにつながった。現時点では単なる思惑の域を出ない。
二日目はサミットの討議時間が3時間ほどに限られている。メルケル首相がドイツ下院のESM批准採決のため帰国しなければならない日程になっている。この採決も重要な政治イベントであり跳ばすことは不可能だろう。5千億ユーロで発足する予定のESM基金は出資予定額の90%を満たさなければ発効できないことになっているが、ドイツはそのうち26%を拠出することになっている。ドイツが批准できなければESMは絵に描いた餅で終わることになる。ESMが発効しなければ、感染防止の防波堤は大崩壊しユーロ圏参加国の多くで金融システムが危機にさらされることになる。もしそのような多発的感染の状況になれば救済はもはや不可能だろう。複数のユーロ参加国がユーロから離脱せざるを得なくなる考えられる最悪のコースである。
何らかのかたちでイタリアの要求を満たす譲歩が必要だろう。市場のうわさではEFSFがイタリア、スペイン国債等の投資家にインシュアランス(保険)を提供することで実質的に保有リスクを縮小させるという案も検討されているという。この措置でも国債利回り低下を促すことは可能であろう。いずれにしても結果は日本時間土曜早朝まで待たざるを得ない。
今回のサミットも討議項目は多岐にわたる。一つ一つを吟味するスペースは当コラムにはないので、サミットの成否を占う上でもっとも基本的かつ本質的なポイントを押さえた単純化したシナリオを記しておこう。あくまでも単純化したシナリオであることには留意されたい。
①ベスト・シナリオ:
問題国とユーロ圏救済のため、ドイツが自国の財政資金投入を決断するとき。
-国債共同化や汎ユーロ圏共通預金保護措置に向けてドイツが大規模な財政 資金投入を決断すればユーロ危機の抜本的解決に向けて大きく前進するこ とになると理解される。このシナリオが実現するときはユーロのショート ・ポジションをすべてクローズしてロング・ポジションを構築すること。
②ワースト・シナリオ:
イタリア、スペインなど利回りが急騰している国債相場安定化措置を拒否 し銀行同盟(Banking Union)も監督官庁の一本化だけで預金保護措置につ いて手付かずのまま放置するとき。
-ドイツがこれ以上の負担を嫌い一切の財政資金投入を拒否し各国の財政的 責任で問題に対応することを要求する場合は抜本的危機解決はない。脆弱 国の銀行システムからの預金流出は加速するリスクが高い。ユーロは新た な売り局面入りへ。
③中間シナリオ
ユーロ圏統合強化への長期的ロードマップが示される。南欧諸国の要求を容認するが措置発動に当たって前提条件を課すとき。
-ロードマップで陶業強化のための長期課題実現の時間軸が具体的に示され ることはポジティブ材料。一方で当面の対応が短期的時間稼ぎ策に終始す ると受け止められるとき、ユーロは材料出尽くしから需給面からの買戻し で上昇することが考えれるが上昇は長くは続かないだろうし、上げ幅も さほど大きくはならないだろう。不透明感が残りリスク回避心理の改善は 短命に終わる可能性がある。EURUSDの戻り上値目途は1.26台後半付近か。 この戻り局面はショートポジション構築の好機ととらえるべきだろう。
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