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警告
この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
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ある男の手記
作者:正直亭素直
 俺は今、G国の刑務所に抑留されている。俺は悲しい、情けない気持ちでこれから筆をとろうと思う。俺の母国、S国の同志たちのために。

 俺が逮捕された際、ここの警察は、俺の罪状を次のように話した。


 お前は我らの聖地、G国の一切をけなした上、同志などという名目で逆賊を募った。お前は、我らの聖地を根底から破壊し、革命を起こそうとしていたのだ。


 罪状だけを見ると、お前は逮捕されて当然なことをやらかした。そう思うのかもしれない。しかし、君たち同志には分かる筈だ。俺は、不当に逮捕されたのだと。

 今から綴ったことは、どうかS国の市民に広めて欲しい。彼らはG国の恐ろしさ、傍若無人ぶりを良く分かっていないのだから。そして、我が国がG国に情報を統制されている事実を。

 俺はひと月前、S国でG国の政治批判を行った。G国の傍若無人ぶりは国際社会からも非難の声が集中していた。しかし彼らはそんな声を体よくシャットアウトし、有りもしない美談、偏った情報を国民に流していた。

 その事実を知った俺はいてもたってもいられなくなり、行動に移した。俺はG国に関する資料を文献やインターネットを使い片っ端から集め、G国の評判に詳しい人にも電話をつなぎ、メールのやりとりを行って、詳細な話を聞いた。そして集めた情報を基に、その中に俺の考えを混ぜて、デモ活動を開始した。

 最初は誰もが耳を傾けることが無かったが、諦めず続けていくうちに徐々に同志が集まり、活動の規模を拡大することに成功した。しかしこの時、俺たちは奴らの本当の恐ろしさに気付いていなかった。奴らはこの時から、俺たちをマークしていた。

 その証拠として、俺が逮捕される十日前、同志の一人が遺体で発見されたのだ。バカな俺はようやく、G国は俺たちのことを粛清しようと動いたのだと感じた。しかし、遅かった。

 その翌日、俺はS国の首都で街頭演説を行おうと車を走らせていた。その中には、今は亡き同志二人も乗車していた。いよいよ到着する時、不審な音が俺たちの耳をつんざいた。俺たちの真上で、G国の軍が所有しているヘリコプターが飛んでいたからだ。

 俺は諦めて車を路肩に停める。ヘリコプターから見えたのは四人の軍人で、俺たちには勝てっこないと思ったからだ。軍人はにやけながらヘリコプターから出てくる。すると立て続けに、俺の同志を撃ち殺したのだ。

 俺は言葉に出せずに立ち尽くしていた。直後、俺は一人の軍人からクロロホルムを吸わされ、気付いたらG国の施設の中にいた。そこにはでっぷりと太った、おそらく軍の最高司令官であろう男が、先ほどの軍人をバックに引き連れており、俺に対して侮蔑のこもった笑みを見せた。

 俺はもう、何をされるか分かっていた。いちゃもんをつける余裕も、気力も無かった俺は、最高司令官を睨み付けることしか出来なかった。奴は無言で四人の軍人に指図すると、軍人は無抵抗な俺に容赦ない暴力を振るった。俺は悲鳴もあげずに、奴らの暴力が終わるのを待っていた。いや、待つしか無かったと言った方が正しいのかもしれない。

 今、俺は顔面を腫らし、下半身が動かない状態、すなわち寝たきりの状態でこの手紙を書いている。もうすぐ、俺は拷問を受ける。この傷だらけの体で。しかし奴らは当然のように、俺の体のことなど気にも留めずに殴り続けていくだろう。また、数限りないほどの罵声を浴びせられることになるだろう。俺はそれに反論すると殴られる。しかし、無視を貫こうとしても殴られることに変わりはない。

 奴らは理不尽だ。それは君たちにも分かることだと思う。しかし俺たちには、奴ら、いや、G国と戦っていく使命がある。この手紙が届いた時、俺はもうこの世にはいないかもしれない。しかしそうなったとしても、どうか君たちはこの使命を守って欲しい。これが、俺の伝言だ。

 親愛なる同志に、これを捧げる。
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