ワシントンの米連邦控訴裁判所は26日、温室効果ガス排出の抑制を目指したオバマ政権のキャンペーンを支持する判決を下し、科学的根拠がないまま規制当局が温室効果ガスの抑制を進め、雇用創出を抑えていると主張してきた石炭産業などに打撃を与える格好となった。
控訴裁が示した82ページに及ぶ判決文では、米環境保護庁(EPA)の主張がほぼ全て認められた。EPAは2009年、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが人々の健康に害をもたらすばかりでなく、過去半世紀における世界温暖化の原因になってきた可能性が高いという研究報告を発表した。審理に当たった3人の判事は今回、全員一致でEPAの報告を支持した。
一方、ニクソン大統領が1970年に署名した大気汚染防止法(CAA)で与えられた権限を越えてEPAが規制を行っていると主張する企業は、判決をすぐさま批判した。
アトランタに本拠を置く電力大手サザンの広報担当者は大気汚染防止法について、同社では温室効果ガスなどの問題の対応には向いていないと考えており、この分野の政策を立案するのは議会であるべきとの見方を示した。
今回の判決はまた、今年の大統領選でも争点になる可能性が高い。共和党候補に内定しているロムニー氏を含む共和党側は現在、環境規制を強化することで雇用増加を妨げているとオバマ政権を非難している。
ロムニー陣営が炭鉱業の盛んなオハイオ州内で今週流したテレビ・コマーシャルでは、「大統領就任から100日までに、エネルギー産業を苦しめ、雇用を抑えている規制を撤廃する」というロムニー氏が政権を獲得した暁に取り組む施策が描かれている。同氏は以前から、大気汚染防止法を修正して二酸化炭素を規制する権限をEPAからはく奪したい考えを示してきた。
一方、EPAのリサ・ジャクソン長官は控訴裁の判断について、EPAのアプローチの「正当性を確認するもの」として歓迎した。
また、自動車業界は他の産業とは立場の違いを示し、温室効果ガス規制でオバマ政権を支持。連邦政府が規制しなければ、50州がそれぞれ独自の規制を採用する可能性が高く、それよりは全米的な基準を設けるほうが容易だとの考えを示している。