選挙:名取市長選 閖上再建、かすむ争点 出馬表明の現新2氏−−1日告示 /宮城
毎日新聞 6月28日(木)10時53分配信
東日本大震災で1000人近くが死亡・行方不明となった名取市で7月1日、市長選が告示(8日投開票)される。現職と新人の2人が立候補を表明しているが、津波被害が最も大きかった閖上(ゆりあげ)地区の住宅再建については、ともに「現地再建プラス一部内陸移転」を掲げるが、具体策はあいまいなままだ。同市の最重要課題である再建計画で争点はかすみ、被災した有権者にとって復興についての民意反映が難しくなっている。【金森崇之】
立候補表明しているのは、いずれも無所属で、3選を目指す現職の佐々木一十郎(いそお)氏(62)と、新人の大橋信彦氏(68)。
昨年8月、有識者らでつくる「市新たな未来会議」は、防潮堤と道路かさ上げ、宅地盛り土で津波被害を防ぐ現地再建を市長に提言。市議会も現地再建を中心とした復興計画を承認した。
しかし、今年2月の市の調査では、居住地を「閖上以外」とする被災者が4割を超え、5月に計9回開かれた住民説明会では「他に選択肢はないのか」「復興住宅をもっと山側に建てるべきだ」などの反対意見が続出。これを受け、佐々木氏は、内陸側への移転も検討する方針へ転換した。
一方の大橋氏は、自然と共生する社会の実現を掲げ、同地区の日和山を拡幅して避難所とする津波対策などを提案。「移転したいという住民の声に耳を傾けるべきだ」と主張するが、現地再建を主眼とする方向性は佐々木氏と同じで、大きな対立点は見いだせない。
自宅を流され、市内の仮設住宅で暮らす無職男性(75)は、「閖上には戻りたくないと1年も前から話しているが何も変わらなかった。(佐々木市長の)方針が変わっても、市長が代わっても、また復興が遅れるだけだ。投票には行かない」とつぶやいた。
6月28日朝刊
最終更新:6月28日(木)10時53分
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