HOME |
てるてる家族 | (NHK総合月〜土曜8:15〜8:30) |
連続テレビ小説 制作・著作/NHK大阪 制作統括/若泉久朗 原作/なかにし礼『てるてる坊主の照子さん』より 脚本/大森寿美男 演出/榎戸崇泰(1、2、7、8、13)、高橋陽一郎(3、4、9、15、18、20、24、25)、佐藤譲(5、6、10、13)、福井充広(11、22)、小島史敬(12)、本木一博(14、17、19、21、23)、城宝秀則(16)、須崎岳(21) 音楽/宮川泰 主題歌/『ブルースカイ・ブルー』RYTHEM 出演/岩田冬子・語り…石原さとみ、岩田春男…岸谷五朗、岩田夏子…上原多香子、岡谷(岩田)春子…紺野まひる、岩田秋子…上野樹里、松本(川島)弘子…森口博子、桑原和人…錦戸亮、佐藤浪利…杉浦太陽、大平辰造…でんでん、伊藤喜介…有薗芳記、松本勘助…桂小米朝、寺井敏也…九十九一、寺井都子…紅萬子、稲本栄子…いしのようこ、萩原肇…ほんこん、吉野恒夫…松尾敏伸、吉野(小林)静子…田島寧子、米原恭司…近藤芳正、岡谷信夫…川岡大次郎、立川麻子…木内晶子、吉沢理江…橘実里、井口恵美子…堀朱里、安達京子…竹中絵里、岩田冬子(少女)…田島由魅香、岩田春子(少女)…滝裕可里、岩田夏子(少女)…櫻谷由貴花、岩田秋子(少女)…足立悠美加、太田トミ子…タイヘイ夢路、久世看護師長…絵沢萠子、星川(販売員)…白木みのる、藤井文治…曾我廼家文童、斉藤忠之…伊藤正之、小池一郎…倉田操、運転手…多賀勝一、ギターの女…石井聖子、司会者…田渕岩夫、青田慶彦…ミッキー・カーチス、浅月昇…ポール牧、浅月美穂…白川和子、小林千代子…安田ひろみ、吉野満…美濃優輝、ディレクター…なべおさみ、桑原政也…中村健、木塚拓夫…森田直幸、木塚光樹…金崎由名来、村田敏司…腹筋善之介、刑事…宝亀克寿・竹本翔之介、管理人…一木美貴子、クラブの客…桂きん枝、ラーメン屋…泉ひろし、田中幸司…樋口浩二、森野芳樹…嘉島典俊、浜口…大野賢治、川辺…佐々木慎介、演出家…門田裕、同期生…菅由紀子・山本真由美・南山千恵美、米原恭子…金城優花、バレエ講師…堀川美和、面接官…亀井賢二・小島信一・山口勝司、若いコーチ…今川知子、講師…筒井康隆、声楽講師…恋塚ゆうき、バレエ講師…久野麻子、白石滝子…山崎千惠子、福島美希…芹沢侑子、大橋久仁子…白崎あゆみ、木下豊美…北村綾子、予科生…保田美帆、山岡珠実…植野葉子、演劇講師…金谷克海、パン屋の主人…水野晴郎、斉藤愛子…村木よし子、斉藤久美…大野風花、コメディ俳優…三波伸一・今出哲也・今川知子、面接官…結城市朗・佐藤浩・東山千恵子、大平知香子…松本麻希、ラジオの声…福寿淳、坂本昭彦…キダ・タロー、西山ディレクター…中村育二、辰子…大西ユカリ、ピアノ…マンボ松本、アコーディオン…井山明典、川上敦子…大沢あかね、米原幸子…出口結美子、藤原医師…福田転球、司会…佐藤誠アナウンサー、義太夫…竹本友香、三味線…豊澤雛司、小倉先生…白川明彦、市川校長…小松健悦、清水…吉田勝浩、西山…野田裕成、桑原賢作…阪本浩之、プロデューサー…はりた照久、演出家・竹中…鍋島浩、ピアノ伴奏者…今出哲也、振付師…城華阿月、看護師…松寺千恵美、トラック運転手…大八木淳史、山喜屋・高木…石井光三、岩田冬子(子役)…小林ゆか、岩田春子(子役)…大島正華、岩田夏子(子役)…中村愛、岩田秋子(子役)…釜口茅耶子、桑原和人(子役)…米田良、佐藤浪利(子役)…矢本悠馬、桑原政也(子役)…宍戸佑輔、安西史郎…赤阪凌、安西麻紀…清水花菜、福島美希…平田華子、住井真一…夢路いとし、銀行員・岡…木下ほうか、中村…北野誠、森下一平…尾上寛之、小山少佐…ベンガル、デービッド…クロード・チアリ、女子行員…久留島愛・広田真理、藤井滋…松本友宏、医師・ハリー…イエンズ・カサンダー、看護師…ケイティ・アドラー、町医者・松井…上村厚文、軍人・堀越…赤松和宏、助産師…志賀智恵子、相場師・波野…ラサール石井、復員兵…Mr.オクレ、上司・鈴木…ホープユタカ、役員・上岡…芝本正、岩田滝子…大西麻恵、女子行員…前田真紀、写真屋・助手…萩原宏紀、小林家の子供…明石泰葉・長岡殿世、写真屋・石川…桂米朝、佐藤通夫…大村崑、安西千吉…中村梅雀、安西節子…堀ちえみ、岩瀬かおる…真矢みき、山根ミサ子…いしだあゆみ、岩田ヨネ…藤村志保、岩田照子…浅野ゆう子ほか >>公式サイト |
第25週(3/22〜3/27放送) ☆☆☆☆ あの浪利(杉浦太陽)にフラれて以来、しかも告白の現場を和人(錦戸亮)に見られて以来、どうにも調子が出なくなった冬子(石原さとみ)。宝塚音楽学校で劣等生になったときでさえもへっちゃらだったことを考えると、これって冬子にとっての初めての精神的危機?! 世間ズレしてないところは母・照子(浅野ゆう子)ゆずり?! ここに、照子が戦争中で世の中から男の人がいなくなると思ってあせって春男(岸谷五朗)と結婚した、極めてまじめな事実が発覚する?! いくら冬子が不調とはいっても、照子考案のばってら入りサンドイッチを却下する判断力は残ってたみたい。 和人が冬子のことをどう思ってるのかを確かめるため、春男にさりげなくズバっと聞くようにとの照子の注文は、それはちょっと難しいでしょうよ。 「冬ちゃんにはもっとええ人がいてる思います」by和人 もっとええ人って、なかにしさんってこと?なんて思ってたら、秋子(上野樹里)が鉄人28号クラスの大きなリモコンを操作して、クレーンで吊り下げた羽根付きの和人を天から舞い降りさせる。このドラマの愛の告白といえば、もちろん「ラブ・ミー・テンダー」に決まってる。ちょっぴりドラマ・愛の詩的なファンタジックなノリがうれしい。それにしても、あれだけの大掛かりな装置を秋子はいつの間に! 和人は冬子がかき氷をかけて家まで運んでいたあの器を大事に保管してたんですね。真夏のあの日にカキ氷を手に駆けていく回想シーンが心にしみわたる。ハッピーストーリーのおかげさまは、パンの匂いに包まれて、そのうちなるようになるといかにも冬子らしい心持のおかげかな。冬子と和人の子供時代を描いた米原(近藤芳正)の新作童話は『パンの耳ください』の温かい色づかいにもあわせてしんみり。誰かを思う気持ちは簡単には折れないと熱弁をふるう米原というキャラクターもとても魅力的でした。 秋子の大活躍により、ついにカップラーメン(=カップヌードル)が完成。エビには、インド洋で採れるプーバランを使ったらしいです。ところが秋子は麺類ではなく、人類の遺伝子学の道へ進むべくアメリカに留学することを決意する。たんぱく質は音楽みたいなもので、それが正しく奏でられれば人生がミュージカルのように楽しくなるとは、まるでこのドラマそのもののよう。生命の情報をひも解く分子生物学を、子供は親に似るものと冬子が簡単に説明してくれたのには助かりました。秋子の英語が佐世保時代の春男じこみじゃ、あまりにも心もとない?! 確かに、これまで秋子用のてるてる坊主とはあまり記憶にない。そんな手のかからない三女のため、3つずつのてるてる坊主をアメリカに発つまでの毎日ぶら下げると宣言をする照子に感極まる秋子が実にいい。涙する秋子を抱きかかえた照子が、 「あんた、重たいな」 はリアルなアドリブ?! 科学はたまたま、とはいいことを言う。 浪利は“白い鳩”と名づけられたフォークグループのボーカリストとして、ついにレコードデビュー。ファーストシングルは何と冬子をふったあの曲、「この宇宙の果てで」。秋子に思いを寄せていた森野(嘉島典俊)は、ラジオの浪利の歌にまでも、その恋路を邪魔されるのか。秋子から冬子へのアドバイスで、森野の思いを秋子が心得ていたことがわかる。さすがに理系、秋子の天然ぶりはそれも計算づくだった?! この場面は約2分間、ズームアップだけの長回しで見せきった。難しい芝居だと思うも、演出は実に自然。 お久しぶりの春子(紺野まひる)はおなかに「3ヶ月の命」を授かる。春子の子はアメリカに行く秋子の生まれ変わりって、秋子を殺してどうするの。夏子も突然帰ってきて、「あなたならどうする」で2年連続紅白出場決定の報告に一同万歳三昧。子供が生まれれば、秋子は外国から帰って来る秋子おばちゃんになるのか。そして照子は、春子の子供に金メダルを夢見る! 強烈だったのが冬子の前に現われて、天国でみんなを待っている(?!)ことを告げるヨネ(藤村志保)の亡霊。人生のつぼを見つけるようにというお久しぶりのありがたいお言葉にひたすら感謝してたら、ついにフランスパンが完成。喜助(有薗芳記)は自分の店をてるてる家族2号店に。本人は喜助店にしたい模様も、それでは店の名前に傷がつく?! 自分の分は自分でぶらさげる子と、照子が冬子を抱きしめる雪降る中、初めて引きのショットでおなじみのベランダの全貌が明らかに。別々の場所で生きていこうとしている4姉妹に乗り遅れまじと、子供と一緒に自分も巣立とうとしていたとは、やはり照子は恐るべし。日本は狭いと言う照子に、目の前しか見えてない照子にとっては、どこに行っても狭いとの春男の弁は言い得て妙。 「想像してみて。エッフェル塔のてっぺんに立ってる私を。想像してみて。凱旋門をまたいでる私を」by照子 って、想像できちゃうから怖いですよ。 浪利は秋子に引き続いての留学を宣言。 「いつか2人で宇宙へ行って」by佐藤(大村崑) 「話が違うて」by冬子 って、確かに。朝ドラでその話だと『まんてん』になっちゃうし。最後の最後まで見ると、最終週は秋子の週だったかと思う。 グランドフィナーレは大階段に出演者勢ぞろいで「若いってすばらしい」の大合唱。写真屋さん(桂米朝)のシャッターで締めくくりとは、第1回のオープニングにつながってるんだ。ここまで上出来の朝ドラには、少なくともあと5年は出会えないでしょうね。(麻生結一) 第24週(3/15〜3/20放送) ☆☆☆☆ まったくこの朝ドラは大したものだと思う。ドラマも押し迫ってきたところでのユーモアに余裕綽々さ加減。例え朝ドラ史上平均最低視聴率を更新してしまったとしても、そんなことは大したことではないと思えてくるほどに、隅から隅まで面白すぎるほどに面白かった最終週一週前の週。 東京から大阪に戻って紅白歌合戦で夏子(上原多香子)を見納めた照子(浅野ゆう子)は急に老け込んでしまって、一人ラーメン屋台に座ってカルメン・マキの『時には母のない子のように』にあわせて絶妙の振付を披露、ってぜんぜん老け込んでないじゃないの。ヒッピー風の衣裳で流しのギター弾きを演じていたのは、坂本スミ子の娘さん・石井聖子。 何かにつけててるてる坊主で験を担ぐ習慣は、パン屋のリニューアルオープンを目前に控えた冬子(石原さとみ)に受け継がれた模様。新装開店する店の名前はずばり“ベーカリー てるてる家族”。看板がドラマのロゴと一緒だとは気が利いてますね。ちなみにこの看板は、売れない絵本作家・米原(近藤芳正)作。命名にまつわる家族の会話を聞きながら、ヒロインが開業した美容院の看板をかけるシーンが印象的だった『あぐり』を思い出した。再三再四書いてきたが、この朝ドラは『あぐり』以来の傑作と称したい。ってことは、朝ドラの傑作には店に看板をかけるシーンが不可欠ってこと?! 『天花』は看板かけないだろうなぁ。 何事にもピンときて決めるところも照子ゆずりか、冬子はオーブン・フレッシュ・ベーカリーの売り場を導入するも、不衛生だしお客さんに働かせる気かと、照子は最初否定的立場をとる。ところが、「一番乗り」の言葉に思わず乗り気に早変わりとは、やっぱり照子は元気です。家族の歴史として、喫茶「シャトー」も店の脇に存続するさせるエピソードには思わずしみじみとなる。 確かに春男(岸谷五朗)にとってのもっとも手の届かない娘は、秋子(上野樹里)なのかもしれない。少女時代に千吉(中村梅雀)と共同開発した即席めんに引き続き、今度はカップ麺の完成に尽力。フリーズドライの具をこしらえるためには機械が必要も、それもこしらえてしまうとはあまりにも理系的に頼もしい。赤みのえびが入って、ついにカップ麺の誕生秘話は最終週のお楽しみ。秋子の才能はカップ麺にとどまらない模様なれど、何はともあれ無性にカップヌードルが食べたくなってきたのは、チキンラーメンのときと同じ。 工場は喜介(有薗芳記)までもが手伝い始めて、昔の活気が戻ったかのよう。客引き上手の照子がお得意のメガホン攻撃を復活させて、ドラマのにぎやかしさも最高潮に。ヒデとロザンナならぬ、春男と照子の『愛の奇跡』の熱唱が笑えます。 ついに結婚することになった春子(紺野まひる)が 「長い間〜」 と口走るたび、敏感に反応する春男が楽しいやら、物悲しいやら。春子の身支度を手伝うべく、夏子も含めた四姉妹が久々に集う場面は壮観。大人になってからは、密かにこの4ショットはほとんどありませんでしたからね。冬子から今の夢は何かと問われて、 「これから新しい夢を見つけることが、今の私の夢や」 という春子の答えには元オリンピック選手らしくいっさいの迷いなし。よくわからないのが幸せということもよくわからない冬子もやっはり幸せ!あの鬼の稲本(いしのようこ)もやっぱり『ブルー・ライト・ヨコハマ』の歌詞、間違えてましたね。と思ったら、番組の最後に流れる『ブルー・ライト・ヨコハマ』のテロップの「きれいね」の「ね」が黄色で強調されてる!こういう遊び心一つのおかげで、その一日をいい気分で過ごせるんですよね。 春子との最後の晩餐には、ヨネ(藤村志保)の幽霊も加わってのしみじみぶり。すき焼きの肉がいつの間にかなくなってたり、春子の花嫁衣裳を仏壇の隙間から覗き見してたりと、幽霊ならでは神出鬼没ぶりが楽しい。仏壇から呼びかけても、その声は春男にだけは聞こえないという仕掛けも、女系が連なる岩田家らしい。修学旅行ばりに、春子と夏子がじゃれあうシーンはアドリブも入ってた?! 花嫁衣裳も艶やかに、春子は春男と照子にお礼の挨拶をする。泣きじゃくる春男が 「春子、幸せになり」 と連呼すると、ご近所の野次馬に加えて迎えのハイヤーの運転手までもが涙。照子は子供たちのために、いくつのてるてる坊主をぶら下げたことだろう。結婚式自体を見せないところも逆に味わい深かった。フィギュアスケートのように流れるプログラム、新婦・春子をも上回る照子のお色直しも見たかったけれど。 佐藤(大村崑)にけしかけられて、浪利(杉浦太陽)が地球に残れるようにと念のために「好きや」と告白する冬子は、嘘でも本当でも「好きや」と初めて言った不思議な余韻に酔う。しかしそのすべては、佐藤の自主出版本『宇宙から来た孫』のSF的構想にすぎなかった!追い討ちをかけるように、冬子は浪利にフォークソング『この宇宙の果てで』を通じてフラれてしまうこと。ヒロインが最終回一週前にフラれてしまう展開に、やはりこの朝ドラはただごとではないと思いつつ、笑いをとめるのに苦労するほど大いに笑いころげる。 「フラれたって言うこと、浪利に」 がリフレインされること6回!(麻生結一) 第23週(3/8〜3/13放送) ☆☆☆★ 最近の朝ドラは、ドラマがはじまって3ヶ月以内で大願成就してしまったりするパターンが多いので、それからあと半分の余力が残っておらず失速の憂き目にあってしまうことしばしばだが、『てるてる家族』は4姉妹分の大願があるだけに、ドラマもいよいよ最終盤にさしかかってきてもまだまだ余裕がある。もちろん、単純に4倍の計算以上の巧みさがこの朝ドラにはあるわけだけど。 冬子(石原さとみ)は佐世保で知ったハンバーガーを店でも売り出そうとはりきるも、春男(岸谷五朗)たちが長年かかって築き上げてきた店の味をしっかりと受け継ぐことの方が大事と工場に戻ってきた和人(錦戸亮)から一喝される。和人も大手の製パン工場での経験があるだけに、職人的なよさを再認識したんでしょうね。それでも転んでもただでは起きない冬子は、ならばデーニッシュを応用したパンをとミートデーニッシュを考案し、店の名前も「冬子ベーカリー」に変える気まんまんになる。「岩田製パン店」じゃ、岩みたいなパンが出てきそう?! ここのところ、すっかりうなずき役になった感のある春子(紺野まひる)と秋子(上野樹里)だが、天然キャラの秋子には若干の見せ場が。研究室の先輩・森野(嘉島典俊)が仙吉博士(中村梅雀)の会社に就職が決まって、 「あぁ、早よう卒業しはらへんかなぁ」by秋子 とは、何て秋子らしい罪作りな発言なんでしょう。ここにラストスパートの伏線があるのかな。 この第23週は夏子(上原多香子)の大願成就の週。そんな夏子のモデルであるいしだあゆみ自身が、長年クラブ回りを続ける歌手・山根ミサ子役で登場し、圧倒的な存在感を見せる。 「年取って、こういうとこ回って歌うのはしんどいやろね。でも夏子はあとちょっとでここから出られる」by照子(浅野ゆう子) この会話が歌っているミサ子に聞こえるはずもないのだが、持ち歌を歌い終えたミサ子は、夏子の出番前になるもマイクを離さず『ブルー・ライト・ヨコハマ』を横取りして歌ってしまう。何と、いしださんがアカペラで『ブルー・ライト・ヨコハマ』を披露してくださいます。やっぱり雰囲気ありますね。 店の閉店後、ミサ子に食ってかかる夏子は、歌は心、気持ちで歌うと言うとミサ子は、 「気持ちはお客さんが作るのよ。歌手の気持ちを押しつけられたって困るのよね」byミサ子 と皮肉っぽく応えるも、その意見に照子は全面的に同意の模様。ミサ子が付け加える言葉があまりにも重い。 「歌は時間で歌うのよ」byミサ子 生きてきた時間で歌うという貫禄十分の場末の歌手に、みんなにかわいがられて歌ってきたんでしょと言われれば、夏子は唇を噛むしかないか。 ここにお客さんに聞いてもらうのではなく、聞かせることをミサ子に学ぶ夏子。対して、歌手は売れたもん勝ちと応えるミサ子があまりにも痛切。 「あなたほんとに、まっすぐに育てられたのね。あのお母さんに」byミサ子 夏子の人生を涙ながらに絶賛するのは、ミサ子というよりもいしださんご自身?! 「あなた売れるわよ。売れてほしいじゃない。あなたみたいないい子には」byミサ子 義姉(=いしだあゆみ)への賛辞の言葉を、義弟(=なかにし礼)が書き連ねてると考えると変な気になるも、ここまで言いきれちゃうぐらいにいい子だったんでしょうね。どこにいたって花を送ると、そして紅白に出場したあかつきにはつけてほしいとイヤリングを渡す場面が実にいい。ミサ子の飲んだくれてやつれた感じは、『恋文』の美木子役をほうふつとさせた?! 紅白歌合戦の出場通知って、甲子園出場みたいに電話連絡なんですね。夏子のプロダクションにはあれほど従業員いたんだ。まぁ、渡辺プロですから当然なんだけど。祝祭風の紅白のてるてる坊主がかわいい。 冬子は喫茶店シャトーを「冬子ベーカリー」にする陳情のため、照子を訪ねて東京に向かうも、大阪に帰って家で紅白を見ると言い出す照子に言い出せずじまい。東京に向かう冬子に新幹線の資料映像のインサートなんて遊びが楽しい。夏子は東京で見つけたてるてるパンの盗作に感激したことに加えて、宝塚の文化祭をこっそり見に行ったことを告白。確かに夏子は冬子のおかげで復活できたようなものだもの。冬子にあこがれていたとの夏子の言葉にしみじとなる。川の字に寝る母と姉2人の図に温かい心持に。 大阪に帰ってきた照子にようやくシャトーをパン屋にすることを相談する冬子に、凍りつく家族。ところが照子は思いっきり脱力したノリで、 「えぇ〜んちがう」by照子 と快く承諾!浅野さん、うますぎです。 紅白のその日、春男はテレビのブラウン管を磨き、花が贈られてくる。いまだにおせちのつまみ食いが直らない冬子=照子の最強ライン。秋子だけはいつの間にやらコップ酒よ。お酒が飲めない照子は、一口飲んでひっくりかえったってことは、秋子は春男似?! 目覚まし時計を持って放送開始を待つ前の名場面集にほろっとくる。視聴者にとってもあまりにも思い出深いテレビジョンが見られる喫茶店シャトーの幕引きは、夏子出演の紅白歌合戦だった。大願成就とはこのことですね。 紅白の場面を再現してるあたりは本家ならでは。照子の遅れてきた、そして長かった青春時代は今日終わった、というNRに青春がまだ続いていたのかと逆ビックリ。 サクセスストーリーの宝庫である朝ドラといえども、オリンピック出場に紅白出場、さらにはチキンラーメン開発と連打されるここまでのサクセスの嵐はかつてなき分量では。アポロ11号つながりの浪利(杉浦太陽)の宇宙人の謎はほっらかし状態!(麻生結一) 第22週(3/1〜3/6放送) ☆☆☆ 和人(錦戸亮)が拓夫(森田直幸)と光樹(金崎由名来)を連れて逃避行する佐世保篇はロケ満載のミステリー童話風。人を信じられない自分が人にやさしくなれるはずがないと教会で絶叫する和人に、お前はやさしすぎるとねぎらう春男(岸谷五朗)のやさしさが心にしみる。 ドラマのキー・ステーションは、岩田会長(『白い巨塔』)ではなく、ヨネ(藤村志保)の弟・藤井文治(曾我廼家文童)が夫(松尾敏伸)&静子(田島寧子)夫婦らと佐世保で営むハンバーガーショップ空天歌=食うてんか!和人の身を案じて夜行でかけつける冬子(石原さとみ)はバランスを大事にする絶品のハンバーガーに何かを学んだ?! シャトーへこっそり訪ねてきた事件の張本人、政也(中村健)は働いていた現場で死んだ父親の子供たちに対して何の保障もしない会社に腹を立てて裏金を盗んだことを告白し、米原(近藤芳正)の付き添いで警察に自首。弘子(森口博子)にスパッとふられた弁護士の村田(腹筋善之介)が政也の弁護を引き受けることに。まさかこんなところで再登場してくれるとは。 事件解決後、「ブルー・ライト・ヨコハマ」のキャンペーンで佐世保を訪れていた照子(浅野ゆう子)と夏子(上原多香子)も空天歌に合流。ちなみに「ブルー・ライト・ヨコハマ」のオープニングは、 「街の灯りがとてもきれいなヨコハマ♪」 ではなく、 「街の灯りがとてもきれいねヨコハマ♪」 です。決して肇(ほんこん)が 「きれいね」by春男 というわけではない。喫茶店の有線で流れる「ブルー・ライト・ヨコハマ」は、やっぱり照子自らのリクエストかい。どうやったら人を愛せるかという問いに、自分を好きになることだと答える夏子に成長の跡を見たりして。静子は昔子供のころ水泳が得意だったという楽屋落ちネタ。デビュー当時に夏子が散々いじめられたディレクター役でなべおさみ。和人(錦戸亮)が身を寄せる旅館の主人・浅月役でポール牧。 「今日は大漁たい」by浅月(ポール牧) って言ったって、鯛が釣れたわけではなさそう。 岩田製パン店に復活した和人は新工場長に就任したことにより、工場長の辰造(でんでん)は元工場長、冬子は新喜介を襲名?! そして喜介(有薗芳記)は、何と元喜介に!(麻生結一) 第21週(2/23〜2/28放送) ☆☆☆ ラーメン屋で照子(浅野ゆう子)を「おばはん」呼ばわりしてた男は、和人(錦戸亮)の兄・政也(中村健)だった。賢作(阪本浩之)の死以来音信不通だった政也は、職場で世話になった人の子供だという拓夫(森田直幸)と光樹(金崎由名来)を和人の部屋に置き去りにして再びいなくなってしまう。どうやら次週もこのエピソードがメインになるみたいだが、サスペンス風の予告編を見るにつけ、大いに不安になった。ここ数年、平均3ヶ月過ぎてからの朝ドラの息切れぶりは目も当てられないほどだけに(1ヶ月もたなかった『こころ』なる例外もありますが)、必要以上に心配性になっております。まぁ、5ヶ月を余裕でクリアしてくれた『てるてる家族』に限って間違いないとは思うんだけど。ここまでの視聴率の低迷を考えれば、ある程度のてこ入れは必要かとも思うし。 レコードのキャンペーンで夏子(上原多香子)が大阪に帰ってきたおかげで、瞬間的ながら家族が久々に勢揃い。岡谷(川岡大次郎)といちゃついてたのか、春子(紺野まひる)も随分とお久しぶりだったはず。使い慣れてない台所ではおいしい味噌汁が作れないと言い訳したり、塩辛い味噌汁を高血圧そうな(?!)辰造(でんでん)にすすめたりと、照子のはじけっぷりだけはいかなることがあろうと普遍ですね。そしてついに、夏子は『ブルー・ライト・ヨコハマ』をレコーィング! 焼きたてパンが大成功し、今度は辰造の指導の下、春男(岸谷五朗)と一緒にデーニッシュ作りを学習中の冬子(石原さとみ)は、まるで恋人のように和人の部屋に足しげく通う。 「無邪気な思い出も、すべて男と女の記憶に塗り替えられてしまうねん。愛の化学変化や」by秋子(上野樹里) ついに2人はと匂わせといて、拓夫と光樹の出現により、いきなり2児の母待遇に。 ただ一人、知的路線を行く秋子の口からは、ベトナム戦争とエヴァリストのヒット曲「積分の計算を発明した動物を知ってるかい?」の話題。相棒(?!)の浪利(杉浦太陽)はシャトーを根城にフォークバンド、ローリーストーンズを結成。 「秋ちゃんと浪利が普通やったら、普通の人間なんかどこにもいてへんで」by冬子 とは言いえて妙。「人は何のために働く?」との問いに、「怠けもんて言われんために働く」との答えは美しすぎます。 人類ではなく麺類の千吉(中村梅雀)が再登場し、ドラマのにぎやかしさも最高潮に。アメリカにはハシもどんぶりもない。だったら、カップに入れてフォークで食べればいいじゃんという発想が、カップヌードルをうむんでしょうね。「麺類に国境はない」と言い放った千吉と秋子が指差す方向が頼もしい?!インスリンのアミノ酸配列を音符に置き換えたらマンボーだった?! 「岩田はただの変わりもん?」森野(嘉島典俊) 秋子の研究室の先輩って、新キャラですよね。(麻生結一) 第20週(2/16〜2/21放送) ☆☆☆★ 冬子(石原さとみ)のパン屋修行と弘子(森口博子)のお見合い騒動の2本立て。パン屋になる許しを肝心の春男(岸谷五朗)から得られないままの冬子は、元工場長の辰造(でんでん)にサポート要請とは頭がいい。パン作りの厳しさを身をもってわからせようとしていた春男の拍子抜けぶりが笑えます。家族なら給料を払わなくていい(?!)と冬子のパン屋修行に乗り気の照子(浅野ゆう子)はそんな工場長に対して、もしものことがあったらちゃんとやってあげると硬く約束する?! 唯一の心配は、声がでかい辰造のつばがパン生地に飛んでるんじゃないかということ。 レコード会社を移籍することになった夏子(上原多香子)と照子を前にして、ミッキー・カーチス扮するプロダクションの社長が日本歌謡史の講釈をたれる場面には思わずニッコリ。とりわけ、ロカビリのくだりは熱かったです。「あっちぶつかりこっちぶつかり、流されやすいしおぼれやすい。でも結局は誰もワラもつかまない」(by照子)冬子のバイタリティが、照子とイコールなのは夏子(上原多香子)に言われなくても一目瞭然。冬子、春男、辰造に喜介(有薗芳記)を加わえたウィンターとイースターズが歌う「恋の季節」を聞きながら、ウィンターは本当にタカラジェンヌ候補生だったのかと耳を疑う。冬子のソロが少ないのも納得。 照子は弘子の将来のことを気にしすぎて、そのうち慣れてしまった?!冬子は出来ることなら、弘子を奥さんにしたい?! いきなりの見合い話に弘子が 「考えさせてください」 と答えるも、間髪おかずに 「何時まで?」 と問い直す照子は今週もさえてますね。ここで弘子に身寄りがなかったことがはじめて判明する。 弘子のお見合い相手は弁士じゃなくて大企業を敵に回すほんまもんの弁護士・村田(腹筋善之介)。その席で 「岩田夏子の母でございます」 との先制攻撃がまたまたおちゃめな照子。弘子が人気者だったおかげで、シャトーにはかつてなきほどにキャストが勢ぞろいしてなかなかに壮観。「あれ」と「お金」、どっちの言い方がいやらしいか論争も大いに盛り上がる?! 結局、本当の幸せはごく近くにあったというわけで、弘子が本屋の松本(桂小米朝)と結ばれる展開は予測通りも、結婚するなりペアルックになるところまでは予測出来なかった。 早朝3時の目覚ましで起きて、冬子を起こす役目に嫌気がさした秋子(上野樹里)は、警報機型の目覚ましを置き土産にヨネ(藤村志保)の部屋へとお引っ越し。そんなヨネの仏前に、東京で夏子と一緒に生活することになった照子の遺影が!そりゃ、春男も手を合わさないわけにはいかないでしょうよ。(麻生結一) 第19週(2/9〜2/14放送) ☆☆☆★ 昭和43年2月の冬季オリンピック・グルノーブル大会で、春子(紺野まひる)は26位になる。ジャンプでこけたらしいです。このドラマでその模様をテレビ観戦するシーンが出てこなくなる時が来るとは。時を同じくして、照子(浅野ゆう子)はシャトー梅田リンク店を手放すことに。リンクで練習に励む未来の春子を見て微笑む照子。今度の先生は竹刀を持ってらっしゃらないようです。 ただ、岩田家からビッグイヴェントが消え去ることはない?! 次はいよいよ冬子(石原さとみ)の宝塚音楽学校の卒業記念文化祭。ダンスの猛特訓で冬子にはっぱをかける麻子(木内晶子)は、春子や夏子(上原多香子)にとっての照子的存在?! 忙しくてノルマのチケットをさばく時間がない冬子は、そのすべてを秋子(上野樹里)にたくしてしまった人選ミス。まだ自信がないのでご近所じゃない人に売ってほしいと頼んだにもかかわらず、秋子はありがたい“姉心”を発揮してご近所の人のみにチケットをばらまく。「台詞はあるの」の家族の問いに、「…」は台詞かとはあまりにも難問。本番前には先輩たちが教える化粧講習があるだ。 そして公演当日。そういえば、すべてのきっかけは看護婦長の久世(絵沢萠子)でしたね。どこに出てるかわからないほどの冬子が目立っていたのは、琴の演奏の時ぐらい。冬子が集中しているときの顔が春男(岸谷五朗)がパンを作っているときの顔にそっくりと、チラッと伏線が入ったり。 白眉は第111回分の演劇『きっといつか』実況中継7分間。全15分中オープニングが1分だから、14分中の半分を占めたこの劇は役者のイメージした世界と現実とを交互に繰り返す構成だが、演劇のレッスン中にエチュードのねたとしてフランス貴族の話が混じったりするあたりがいかにも宝塚的で、卒業公演にふさわしい。毎場登場はするもまったく台詞がない冬子に、これが「…」の正体かと思わせといて、5分後ついに初めての台詞がくると、端役だって生き生きと演じられると言い放つ“女3”の役こそがこの劇の裏主役だったことを知る。この役をアンサンブルで終わってしまう人間=冬子にキャスティングした先生は、あまりにもわかってらっしゃる。これって卒業公演の定番?! それともこのドラマのオリジナル?こっそり見に来ていた夏子が劇中に自分を重ね合わせるあたりも泣かされるところ。夢中になって歌い踊り、フィナーレで燃焼しつくした姿をを目にした直後だけに、公演後の「まるで昼寝の夢から覚めたかのよう」という冬子の言葉に同化してしまったりして。 客席に春子の姿がないと思ったら、ちょうどオリンピックと時期が重なってしまった模様。照子はひそかに4年後の札幌オリンピックへの出場を目論む?! 浪利(杉浦太陽)は大学に合格し、いっそう秋子にラブ・ミー・テンダー。和人(錦戸亮)は念願の自動車工場からは採用されず、経験がかわれて大手の製パン会社に就職することに。春男は和人を励ますも、それはあまりにも皮肉ななりゆき。誰もいなくなったパン工場のたたずまいにほろり。そこで昼寝してしまう冬子には、パン屋になれとの天の声が。 冬子の卒業式についに照子出席!仲間たちは午後からの入団式のため、慌しく校舎を出ていってしまい、一人で教室に残ってありがとうを繰り返す冬子。ここで終わってもドラマの余韻としてはよかった気がするけど、同期の全員が再び集まって歌で送り出してくれるラストも、ほのぼのしくていい。果たしてトップスターのパンは作れるのか、というところでまた来週。(麻生結一) 第18週(2/2〜2/7放送) ☆☆☆★ 照子(浅野ゆう子)と春子(紺野まひる)のその物語がついに結末をむかえた第18週は、その1週間が丸ごと名場面集のようだった。春子(紺野まひる)のオリンピック出場を懸けた全日本選手権の日が迫り、岩田家は総出で東京まで応援に行くことに。大会直前に春子のライバルだった福島(芹沢侑子)が引退。このニュースに大喜びする照子(浅野ゆう子)の反応は、限りなく4位に近い3位の春子のことを思えば当然でしょうね。 ついに全日本選手権。規定の見せ方が相変わらず禁欲の局地なのがうれしい。その氷が削れる音にドラマの緊張感は増していき、いよいよフリーを残すのみとなる。フリーの前日、岡谷(川岡大次郎)がリンクでは照子も一緒だと助言する場面から早くもうるっとなるも、家族応援団の騒々しさには春子ならずとも見ているほうの緊張感もほぐれる。お久しぶりの夏子(上原多香子)が現れて4姉妹+1=弘子(森口博子)が客席で騒いでいると、周りの観客が眉をひそめるリアクションも当然のこと。 春子の出番にあわせて広げられた横断幕のてるてる坊主は、点数はやりがいであって生きがいではない論を説く絵本作家・米原(近藤芳正)作のはず。4位の選手が高得点を出した後の追い詰められた状況だけに、春子のパフォーマンスには手に汗握らざるを得ない。そして、最高の出来ばえで見事3位に入る。繰り返しになるが、吹き替えを感じさせない春子のスケーティングが見事。吹き替えの方は体型から何からそっくりなんでしょうね。当時の採点はまだ小数点まで刻んでなかったんですね。 試合が終わり、春子を祝福に駆けつける家族一同も、岡谷のあとでいいとしり込みする照子のもとへ春子が真っ先に駆け寄る場面が感動的。これまでの苦楽をこの親子とともにかみ締める。紺野まひるも素晴らしかったが、稲本役のいしのようこのスケーティングはさらにお見事。と思ったら、いしのさんはもともとフィギュアスケート選手らしいですよ。通りで鬼コーチぶりがはまりすぎるほどにはまっていたわけだ。稲本の励ましの言葉に、 「私はもう消えました」 と語る照子にしみじみ。 池田の街の大歓迎ぶりには、エキストラの数にまずビックリ。新聞に春子よりも照子の方が大きく写っていることにさらにビックリ。パレードに駆け寄るのはお懐かしや、田中コーチ(樋口コーチ)。 宝塚の卒業記念の文化祭における演劇公演の配役発表になり、麻子(木内晶子)と恵美子(堀朱里)のみならず、理江(橘実里)までも大きな役をもらう中、冬子(石原さとみ)は女3の役で大喜び?! 春男(岸谷五朗)が和人(錦戸亮)のイースト菌宣言する場面もしみるが、オリンピックの日本代表の制服を真っ先に見せに行くほど、春子とお隣の床屋夫婦(九十九一&紅萬子)は仲よかったっけ? オリンピック前のパレードでも、もちろん春子よりも照子の方が目立ってました。(麻生結一) 第17週(1/26〜1/31放送) ☆☆☆★ 春子(紺野まひる)が国体で悲願の優勝を果たす。ヨネが死んでから初めてのすき焼きが岩田家の食卓に並ぶも、春子が会ってほしい人がいると爆弾発言したため、春子と春男(岸谷五朗)はすき焼きを食べ逃すことに。春子が春男に岡谷(川岡大次郎)のことを説明するシーンが台詞なしとは、やはりこのドラマはかなり変わってますねぇ。春男は生まれて初めて朝工場を休むほどの落ち込みよう。この美男美女カップルの前に立ちはだかる大いなる壁、春男と照子(浅野ゆう子)と岡谷は面談することに。弘子(森口博子)が春子の“歳の離れた”お姉ちゃんみたいな人との紹介されたのには小爆笑。パンを白く見せるために使われているのが過酸化ベンゾールであるとの豆知識を秋子(上野樹里)が披露したばっかりに、キツネザルが岡谷であったことまでもが照子にバレてしまう。そんな子離れのときだけに、照子はいつもに比べると元気がなかったが、佐藤(大村崑)から国体優勝のお祝いもらった金一封だけはあっさり受け取る現金ぶりは健在。それにしても、春子のスケートシーンがすごいでしょ。どう見ても、本人が滑っているとしか思えない。 冬子(石原さとみ)はバレエの厳しいレッスンについていけずも、宝塚音楽学校予科生同期の力を借りて、課題を克服。お礼に自分でパンを焼いていくと宣言したものだから、パン作りに明け暮れていた冬休みのすごし方がバレバレに。カンカンの先生に対して、バレエのレッスンは「毎日2時間ぐらい」と平気で言ってしまう冬子は、ある意味大物?! あまったパンをプレゼントしたことをきっかけに、本科生の卒業公演でもっと出番の多い京子(松本絵里子)を手伝うことになる冬子。舞台袖からあこがれのまなざしで見守る様が実にいい。舞台の感想を求められた後、顔についたどうらんを京子にふいてもらう場面が、ちょっぴり色っぽかったりして。ケッサクなのは、父親の期待にこたえられないことを苦にしていた理江(橘実里)を励ます場面。 「岩田はね。アホなんよ」by麻子(木内晶子) って、これはほめ言葉みたいです。 「岩田を見てみ。希望なんかなくても明るい。その明るさが希望や」by麻子 これが最上級の賛辞であることはよくわかる?! 結局、理江は冬子と仲間たちの励ましで脱落を免れ、全員一緒に本科に進むことに。本科生になった途端に、予科生たちに先輩面する冬子が笑える。 「ダメでも明るくね。その明るさが希望なんだから」by冬子 って、完全な受け売りじゃないの。ピアノの腕前も予科生のほうが上?! 大学生になった秋子(上野樹里)にはいてるだけでナンセンスな浪利(杉浦太陽)ならずとも注目。あの日曜画家、米原(近藤芳正)は春男(岸谷五朗)を見習い(?!)、在宅の絵本作家になる。あれからみんな変わってしまった。いや、変わってない?! 「大事なことに気づくということは、変わるということとは違うのかもわからへん」by秋子 秋子は理系に進んだにもかかわらず、発する言葉は文学部的。ちなみに松本(桂小米朝)の本屋で仕入れた米原の絵本は全5冊ともに完売。すべては秋子が買っていた模様です。(麻生結一) 第16週(1/19〜1/24放送) ☆☆☆☆ 夏子(上原多香子)が念願のレコードデビューを「ネェ聞いてよママ」(B面は「初恋」)で果たすも、売れ行きはいまひとつ。そのヒットしなかったいしだあゆみのデビュー曲を本当に使ってしまうとは、また大胆な。照子(浅野ゆう子)が買い込んだレコードが今は亡きヨネ(藤村志保)の遺影の前に供えられるたびに、レコードの回転数が落ちていくお約束からつかみはOK。遺影のヨネ(藤村志保)がしゃべりだしたり、実物が押入れの中から登場したしたりするたびに大いに取り乱す照子のリアクションが大ケッサクで、なるほどヨネの死がドライだったわけだと思った次第。 伸び悩んでる度でいけば、春子はさらに重症。練習に身が入らない春子と一方的に説教する照子がついに衝突し、春子はスケートをやめると言い出す。春子が大学のアイスホッケー部員たちにまぎれてスケートの練習をサボる場面に、アイスホッケーを題材にしたドラマ以上にアイスホッケーの楽しさが出てた?! 春子と恋人の岡谷(川岡大次郎)が土砂降りドライブ中、「恋のフーガ」を熱唱した直後、今度は我が家のザ・ピーナッツ=秋子(上野樹里)&冬子(石原さとみ)が登場してアカペラバージョンを披露するあたりは、「恋のフーガ」の作詞者にして今作の原作者、なかにし礼さんへのオマージュでしょうね。 「私の人生にスケートはいらんねん。お母ちゃんに返すわ!」by春子 天才少女と天才少女の母親との関係性が、この台詞に集約されているようで痛い。この痛さは、この朝ドラが積み重ねてきた歴史でもある。それにしても、いつも「ちょっとだけ見にくる」稲本役のいしのようこは、スケート上手ですね。 春子と夏子を見ている冬子は楽しいのに、そんな才能のある春子はどうして苦しそうなのか?、という問いは、このドラマで繰り返されているクエスチョン。そんな冬子は友達から、職人タイプとの評価をうける?! お琴を弾いている姿にお父さんを思い出す、と理江(橘実里)からは、言われちゃうし。 春子の尾行を照子に頼まれた冬子が、照子にほっぺをつねられる様がかわいそう。確かに、デートにまでついてこられて、「こまっちゃうナ」とはなるほどね。サル山にたとえるならば、てっぺんが照子でそのサルのノミを取ってるのが春男とは、あまりにも的を射ている!春子が岡谷とのことを照子には黙っていてと頼むに、ふきだしでキツネザルの想像とは新たなる趣向! 冬休みに入ると、早起きの習慣が癖になり目覚ましがなる前に起きてしまう冬子は、バレエの練習ではなくパン工場の手伝いに熱中。ここにこの道20年の春男のパンと素人の冬子のパンがまったく変わりばえしないことが判明?!冬子の人生のツボは、本当はこっち?春男は新製品、ホットドッグのために秘密兵器、電子レンジをへそくり19万円で購入。ホットドッグ目線の電子レンジの使い方説明が笑える。 そんな春男からさとされて、照子はまさに春子のイースト菌になる。吹っ切れた春子はスケートとひとつになって楽しんでいるよう。ただ、それですまないところがこのドラマの分厚いところで、国体に出場するための遠征先に春子と照子が向かうエンディングに、次週が早く見たくてたまらなくなる。それにしても、照子はてるてるパンをお供えしすぎでしょ。(麻生結一) 第15週(1/12〜1/17放送) ☆☆☆☆ ヨネ(藤村志保)の死を描いた1週間も、まったく暗くならなかったところがたぐいまれだったと思うし、このドラマが並じゃないことに改めて恐れ入った。宝塚音楽学校に入学した冬子(石原さとみ)は、まるで人が変わったように清く正しく美しく学校に通う毎日。ヨネの食欲がなくなったため、春男(岸谷五朗)は心配して病院に連れて行くと、精密検査の結果、重病であることがわかる。 楽しさとせつなさを交互に描いて巧みなこのドラマのこと。今回もその調子で見せてくれるのかと思いきや、少し違っていた。人が死んでしまうエピソードはこれが初めてのはずだし、若干なりともウェットになるのかと思いきや、飄々としたタッチは通常通り、いやそれ以上で暗くなるところがまったくない。家族にはヨネの死を受け入れるための時間は十二分にあったということ。また、ご近所にいたるまでその事実を誰もが知っているというおおっぴろげな感じは、日本の劇ではあまりお目にかかれないものでは。そのあたりのバイタリティは、イタリア映画なんかだとよく見かけるところだけれど、日本でそのノリにリアリティを与えうる場所といったら、やはり大阪が舞台である以外には考えづらい。 サブストーリもいい。春子(紺野まひる)はスケートリンクで知り合った同じ大学のアイスホッケー部員・岡谷(川岡大次郎)から、「スケートが子供っぽい」とのある種の真理を言い当てられ、今のままでは勝てないと大いに悩む。秋子(上野樹里)は電子レンジの構造を電波によるものだと解説し、相変わらずの異能ぶりを発揮する。ところで、宝塚音楽学校が通いもOKだったことをはじめて知りました。『虹を織る』ですりこまれてるから 、てっきり全寮制かと思ってて。 淡々とドラマは進むも、夏子(上原多香子)がスケジュールの合間を縫って、ヨネを見舞うために大阪に戻ってくるエピソードにはさすがに泣かされた。レコードデビューの報告をするも、そのときにはきっとヨネはこの世の中にいないだろうという空気が、いっそうせつなくさせて。 いよいよヨネの臨終間際も、ドラマは決してユーモアと明るさを失わない。冬子が夏子の替え玉になるも、手を握って冬子とばれてしまう趣向も、楽しさと悲しさが入り混じって絶妙の味わいに。人生のつぼを見つけるようにとの、いかにも鍼灸師のヨネらしい気のきいた言葉を残しての大往生ぶりも実に大らかで、終始貫かれたスタンスに大いに感激した。全然深刻ぶらないのにじわっとしみてくる感じは、まるで日本のドラマじゃないみたい。ヨネの危篤を知らぬままに舞台を勤めた夏子の鏡ごしにヨネが現れる場面といい、ミュージカル調でヨネと春男(岸谷五朗)が『ラストダンスは私に』にのせて歌い踊る締めくくりといい、うなりっぱなしの1週間だった。診療台にうつ伏せになる冬子にも駄目押しのしみじみ。(麻生結一) 第14週(1/5〜1/10放送) ☆☆☆★ もう長いこと、朝ドラの後半にはいい記憶がない。ただ、『てるてる家族』には後半も大丈夫そうな雰囲気が漂う。そう思わせるほどに、楽しさとせつなさが満載だった後半の第1週目。 ついに夏子は、テレビのレギュラーの座を掴む。『ザ・ベスト・ショータイム』のホストは、三波伸介風の南紳介。その偉大なる父親役をその息子の三波紳一が演じているのだから、それらしく見えるのも当然か。ただ、夏子のコントに不満顔なシャトーのお客さんたち。関西的にはあれでは×ってことなんでしょうね。 一方、冬子(石原さとみ)は宝塚音楽学校を受験する。ここで、ダメだったときのことばかりを想定する岩田家の面々がおかしいやら、悲しいやら。照子(浅野ゆう子)が願掛けで作った宝塚用のてるてる坊主が、足つきでちょっと気持ち悪いラインダンス仕様だったりするディテールのお遊びも楽しい。調子よさそうに調子をはずして歌ってた冬子の歌声に、正直合格は難しいかと思われるも、試験の時の歌が吹き替えだったおかげか(?!)、予想をくつがえしての合格。出来る受験生、麻子(木内晶子)の受け売りで、一次試験に合格してもみんなの前では冷静に振る舞うも、一人になったらもちろん喜びを爆発させる冬子のキュートさもいいんだけど、過ぎたる姉たちへのあこがれと羨望を吐露する面接の場面はさらにいい。 「みんなが楽しいと私も楽しんです」by冬子 一視聴者サイドから見ても、とても楽しい。タカラジェンヌになったのが、 「私じゃないんです」 と弁明する春子を演じる紺野まひるが、ご存知元のように元タカラジェンヌだったりする楽屋落ちネタも喜ばしい。冬子の合格に感化された浪利(杉浦太陽)は、バンドを作る決意ををするも、前に友達を作らなきゃいけなかったって、悲しすぎるでしょ。 夏子の次なるステップアップはCM撮影。その成功を祈って作った大量のてるてる坊主が落っこちる様を見て不吉な胸騒ぎを感じた照子は、冬子の宝塚音楽学校の入学式もほっぽり出して、東京に向かうことに。これまでいかなる式にも出席してくれなかった母親がはじめて自分に同伴してくれると喜んでいたのも束の間、冬子は姉への胸騒ぎに敗れた格好に。そんな酷なと冬子に同情するも、春子、秋子、冬子のためにもがんばれと照子に言われた夏子も、勝るとも劣らぬほどに酷。夏子が一番喜ぶものは母親の手料理と思いついたまではよかったのの、手料理の一つもなかったことに気がつく照子もまた酷で。陽気なエピソードとせつない思いとのバランスは、この朝ドラのもっともいいところ。 傷心の夏子を励ましたのは、岩田製パン店名物のてるてるパンだった。それを作った東京のパン屋の店主役で水野晴郎が登場するも、よく考えたらこれって単なるパクリでしょ。入学祝いにと辰造(でんでん)、喜介(有薗芳記)、和人(錦戸亮)の3人が作ってくれたケーキのプレゼントには、しみじみとなった。(麻生結一) 第13週(12/22〜12/27放送) ☆☆☆ 東京オリンピックに合わせて、シャトーにカラーテレビ導入。テレビの中の空も青かった!国民全員がテレビにかじりついていたころ、梅田リンクは閑散として、そこで滑るのは春子(紺野まひる)のみ。オリンピックへの強い思いが、そうさせることに説得力あり。スケート靴で氷が削れる音がここでも効果的。 冬子(石原さとみ)のバレエ・レッスンが笑える。遅刻した冬子に宝塚を甘く見てないかと先生(植野葉子)に注意されるも、派手だとは思うも甘いとは思ってないとは何て率直なんでしょう。そういえば、石原さとみは『きみはペット』でもバレエをやってましたね。先週から登場してたんだけど、冬子の歌のレッスンの先生役は何とキダ・タロウー。こりゃ、本物だ!BKの朝ドラだ! まだテレビには出ていない東京の夏子(上原多香子)から電話がくるも、電話代はあちらさん持ちだから慌てなくていいだなんて、いかにも照子(浅野ゆう子)的な発想で。切れてる電話に話しかける春男が悲しいやらおかしいやら。 学校給食からはずされた岩田製パン店の今後を思いやってか、喜介(有薗芳記)は妻の実家でペン(=文房具店)とパンを一緒に売るために、辰造(でんでん)は調理学校で製パンの技術指導をするべく、べく、岩田製パン店をやめることになった。辰造は照子を命の恩人と思っているも、照子は多くの人を助けすぎていちいち覚えてないって、まったく照子は面白すぎます。 そんな辰造の家族探しが今週のメインストーリー。冬子がおせっかいからラジオ番組に辰造の家族の消息をたずねる手紙を出すと(ちなみにリクエスト曲は「遠くへ行きたい」)、偶然ラジオを聴いていた娘の知香子(松本麻希)が現れる。知香子は辰造に病床の母が別の男性と暮らしていることを告げ、その人の妻として最期を迎えさせてあげたいので、正式に離婚してほしいと辰造に頭を下げる。この場面ででんでんが名演を見せる。娘が先生になっていたことを、涙ながらに岩田家の人たちに自慢するシーンが感動的だ。 照子は芸能プロダクションの社長・青田(ミッキー・カーチス)に招待されて、タダでの東京行きに秋子(上野樹里)と冬子まで同行させることに成功してまたまたホクホク。この成り行きを家族に説明する場面の浅野ゆう子がめっぽううまい。新幹線の瞬間インサートにも(しかも資料映像風!)、ノスタルジーとユーモアがあふれている。 東京に行き、岩田夏子は「いわたなつこ」のひらがなになっていた。そういえば、「いしだあゆみ」もひらがな!夏子、秋子、冬子とのスリーショットに青田はザ・ピーナツに対抗する美人姉妹トリオを思いつくも、照子の命名は枝豆?!4人でビフテキを食べに行ったレストランで、冬子に手渡されたてるてるパンを店のパンと置き換える夏子が印象的。 最後まで売れ残ったクリスマスケーキは最後まで“残った残った”ということで横綱級とは、うまいこと言うね。年の瀬の最後の回は、ドラマも昭和39年の年の瀬の設定。春子は同志(もしくは士)館大学に進学し、4年後のオリンピックを目指す。カラー放送に変わった紅白歌合戦にシャトーは大いににぎわう。ちょっと前までは、紅白のラストにかかる「ほたるの光」を一緒に歌っていた記憶が蘇ってきたりして。最近の紅白でも、ラストには「ほたるの光」が流れるんでしょうか?(麻生結一) 第12週(12/15〜12/20放送) ☆☆☆ 珍しく4姉妹の話は薄めで、岩田製パン店の周辺を描いた週。夏子(上原多香子)が所属した芸能プロダクションの社長・青田役にミッキー・カーチスとはあまりにもピッタリ。あの和人(錦戸亮)が青年になって再登場し、住み込みで働くことになった。冬子(石原さとみ)は和人に宝塚音楽学校を目指していると言ってしまったものだから、引っ込みがつかずに歌やバレエのレッスンを始める羽目に。バレエの先生役は植野葉子。学校給食の仕事がなくなって、岩田製パン店大ピンチのはずも、すぐさまのんびりムードに逆戻りするあたりはさすがです。 静子(田島寧子)は母親の病気を看病するため、プロポーズしてくれた恒夫(松尾敏伸)と一緒に佐世保へ帰る。従業員が2人いっぺんに減って密かに助かったなんて、善良なこのドラマは決して言いません。冬子が考案した「もちもちパン」改め「てるてるパン」は起死回生の一打となるのか。シャトーのテレビは東京オリンピックに合わせてカラーになるのか。(麻生結一) 第11週(12/8〜12/13放送) ☆☆☆★ 冬子(石原さとみ)、宝塚へ、という照子(浅野ゆう子)の思いつきはいったん凍結されて、その前に夏子(上原多香子)の東京行きがトピックに。オリンピック出場を逃し、スケートの練習に身が入らない春子(紺野まひる)は、田中コーチ(樋口浩二)が指導役をつとめる歌声喫茶に入りびたり。夏子(上原多香子)は梅田劇場の斉藤(伊藤正之)に東京行きを打診されるも、春男(岸谷五朗)は頑としてそれを許さなかった。 照子と春子は無理して体壊すし、夏子は暇してパチンコ球を鼻に詰める?!パチンコ玉事件といい、せんべいのイッキ食いといい、今週はスラプスティックな要素が多めと感じていると、その反動のように今度はホロっとくるエピソードが連打されるあたりはいかにもこの朝ドラらしい。 とりわけ、ヨネ(藤村志保)が夏子を自室に呼び、古い手紙を見せる場面と、夏子が歌声喫茶で歌う歌を選ぶ際に、そこに現れた春男を見て「センチメンタル・ジャーニー」を歌う場面は感動的。ベランダで照子が歌う「センチメンタル・ジャーニー」の方が雰囲気満点だったけど。お年玉も渡さないドケチのヨネが、夏子の東京行きのせんべつに空の財布を渡すオチも気がきいてる。(麻生結一) 第10週(12/1〜12/6放送) ☆☆☆ 照子(浅野ゆう子)が入院中につき、いつもは大忙しの春子(紺野まひる)と夏子(上原多香子)も珍しく照ちゃんする=ダラダラする。というわけもないだろうが、第10週は「激しい情熱を持ちながらも普通に生きる」秋子(上野樹里)の週。 傑作だった“人類は麺類篇”以来のメインに、またまた変なおじさん=素人画家の米原(近藤芳正)に惹かれてしまうあたりが、このドラマきっての異色キャラクターらしいところ。熱すぎず寒すぎず、春のように浮かれすぎてもいないという絶賛のラブレターもまた、秋子の自作自演だったってことか。色彩豊かな森の中に迷い込んだかのような米原のアトリエもまた、実生活の世知辛さが押し流していくという苦々しい隠し味にうまみあり。四姉妹マンボに哀愁さえ感じてしまうのは、深読みのしすぎだろうか。 看護士長の久世(絵沢萠子)の歌声に端を発し、冬子(石原さとみ)の前途に宝塚の道。さすがに宝塚の説明をさせたら、掃除の仕方、礼儀作法にいたるまで、やはり紺野まひるが詳しい!照子の主治医が春男(岸谷五朗)の不倫相手、かおる(真矢みき)にプロポーズした男とぴったり一致するあたりの小話もお上手でした。(麻生結一) 第9週(11/24〜11/29放送) ☆☆☆ リハーサル室から廊下へ、病院の診察室から病室へ、カメラが移動してワンカットで見せる工夫がいっそう冴えてる。とりわけすごかったのが、人々が行き来する屋外から喫茶シャトーの店内、家族が集う居間、さらには再びシャトーの店内へとカメラが行ったり戻ったりを繰り返しで移動してワンカットで見せた6分間。こういう舞台じみた手法は、ノスタルジー満点のこのドラマにふさわしく思えるし、セットの創意にも頭が下がる思いだ。 第9週のメインストーリーは春男(岸谷五朗)の浮気。3面鏡に映して、不倫の相手、かおる(真矢みき)が幽霊風に「おひまなら来てね」って、面白すぎ。照子(浅野ゆう子)に浮気を問い詰められ、春男が文楽人形のように骨抜きになったりするあたりも凝りに凝っている。さらに趣向が抜群だったのが、照子がかおるの家に押しかけた時に、浄瑠璃を習いに来た冬子(石原さとみ)と鉢合わせになった一連。浄瑠璃のお稽古に暗転する怨念の世界に、さすがの冬子も思わずかおるの家を飛び出してしまう。このあたりの入れ子構造も、洒落がきいてて楽しげ。 二度と浮気はいたしませんという誓約書を春男に書かせる会合中に、「取り込み中」の張り紙が笑える。誓約書が薬の注文書とは、また苦しい言い訳を。浮気防止の刑は目隠し散髪って、それは危なすぎるよ。(麻生結一) 第8週(11/17〜11/22放送) ☆☆☆ 学校でパンを売るエピソードは『チョッちゃん』にあったものによく似ている。同級生にパンを売った冬子(石原さとみ)は、怒られるどころか、商売はそうあるべきだと照子(浅野ゆう子)に珍しく褒められる。唯一説教サイドにいた春男(岸谷五朗)の目には、女性陣全員が照子に見えた?! たまたまうまくいくということこそ、いつか大きなチャンスにつながるということとは、いかにも照子的な教訓。伝書鳩が注文取りで大活躍する奇想天外に、携帯電話に想像もつかない当時の人々と、このあたりの絡め方はいまさらながらにうまいと思う。ここでも浅野ゆう子扮する照子のはじけっぷりが最高。 フィギュアスケートの全日本選手権で3位以内にも入れなかった春子(紺野まひる)が、照子と逆向きのベンチに座って悔しさをぶつけるシーンは、このドラマの思いっきりダークサイドなもう一つの顔だ。紺野まひるはフィギュアスケートの経験がないってホント?うまいですねぇ。夢がかなわないことのつらさについての冬子のNRには、しみじみとなった。 ただ、急性肺炎との診断を受けて4ヶ月の入院を強いられた春子が、長期間の闘病生活をそれほど感じさせることなく、あっさり退院してしまうあたりはどうなんだろう。もう少し春子の苦悩を深めた描き方があってもよかったのではと。照子が病人である春子の隣で、むしゃむしゃとまむし丼を食べて精をつけるエピソードなどは、いかにもこのドラマらしいおかし味なんだけど。 貧血で苦しそうだった浄瑠璃の先生・かおる(真矢みき)を病院まで連れて行った縁で、春男が浄瑠璃を習い始める原因と、『ロミオとジュリエット』のパロディと文楽の実演を連打して見せて、学校でパンを売ることに飽きてきた冬子が浄瑠璃をなりたいと言い出すも、春男が必死に反対する理由の関係。確かに浄瑠璃は口移しで、息を受け止めるものだけれど、部屋があれほどまでに真っ赤になるなんて!真矢みきの浄瑠璃の先生がハマってます。(麻生結一) 第7週(11/10〜11/15放送) ☆☆☆★ 夏子(桜谷由貴花)の芸能界入りまでを描いた週。全日本ジュニア選手権で1番の演技を見せるも、資格年齢に満たない参考選手としての出場だったため、夏子は優勝扱いにはならなかった。ここで審査員に詰め寄って、悔しさを爆発させる夏子の迫力に圧倒されてしまった。照子(浅野ゆう子)をも驚かせたその負けず嫌いぶりを見るにつけ、血は争えないというか、芸能人になるべくして生まれてきたと痛感させられる。夏子を励ますために、春男(岸谷五朗)が冬子(田島有魅香)と秋子(足立悠美加)と一緒に土手で空を見に行くシーンがいい。 梅田劇場のプロデューサー、斉藤(伊藤正之)にスカウトされ、夏子がオーディションを受ける一連では、夏子の奮闘ぶりも見物だが、むしろオーディションに合格した夏子の影で、廊下で泣いていた落ちた女の子のことを思う冬子に心引かれた。自分はそのどちらでもなく、ただ中間にいるだけとの思いにしみじみとする。 そして4姉妹は成長し、春子(紺野まひる)、夏子(上原多香子)、秋子(上野樹里)、冬子(石原さとみ)になる。正月の家族写真に立ち戻る語り口も、その折り目正しさが好印象。(麻生結一) 第6週(11/3〜11/8放送) ☆☆☆★ 人生はケ・セラ・セラと歌うほろにが週。“旗本退屈男ごっこ”のスローモーションからノスタルジーは全開モードに。賢作(阪本浩之)、政也(宍戸佑輔)、和人(米田良)が食い逃げのお金を返しに来た人情話にも、どことなく懐かしさが匂う。 ドラマ的なミソは、パン職人を志し、真面目に働く賢作(阪本浩之)が、いつどんな理由で挫折してしまうのか、というある種のヒヤヒヤ。結局、夜逃げしてしまった和人たち兄弟。心配して和人の家に冬子が走る場面は、全編にわたって冬子の目線映像。この朝ドラがまたまたあまりにも朝ドラ的じゃない表現に挑んだ瞬間に、こっそりとうれしくなる。こういうことやってたんじゃ、視聴率で苦戦するわな(ほめてるんです!)。 裏切られた思いで、和人にわたそうと思っていたドロップを包む袋を冬子がビリビリに破り捨てる場面がショッキング。夕日に照らされながら、冬子が「ケ・セラ・セラ」を歌う場面にはほろりとさせられた。(麻生結一) 第5週(10/27〜11/1放送) ☆☆☆★ 博士こと安西千吉(中村梅雀)と秋子(足立悠美加)の師弟コンビが繰り広げる即席ラーメン開発物語が、奇想天外にしてユニーク。 「人類は麺類や!平和とはゆげや!」by博士 なんて意味不明の絶叫に奇天烈な面白さが満載だ。ドラマの展開にに引き込まれたからか、十数年ぶりにチキンラーメンを買って食べちゃった。ちなみに、「栄養価の高いラーメン」ばかり食べて倒れてしまう(?!)千吉の妻・節子を演じるのは、BK版『おしゃれ工房』の司会を長年にわたってつとめてNHKへの貢献度抜群の堀ちえみ。 照子(浅野ゆう子)のかんしゃくは、パンばっかり食べてるから?! 秋子が麺類になった(=家を出て行った)ことで、春子(滝裕可里)と夏子(桜谷由貴花)は少しだけ泣くも、次の日から笑顔でスケーティング、ってのはケッサク中のケッサク。寝室のライトがブルートーンで統一されてるなんて、細やかな配慮だこと。照子が作ったやけくそのようなてるてる坊主を実写で見る喜びはひとしおよ。博士が自転車で針金を買いに行って、角を曲がると即買い物から帰ってくる、なんて場面をワンカットで見せてしまう遊び心は今週も健在だ。 博士と照子が秋子をめぐって対決するクライマックスでは、浅野ゆう子のずらしたボケ演技が絶妙に決まる。和解の場面も爆笑が大半で、感動はちょっぴりといった配分。物語の面白さ、演出の工夫、そして随所の脱力ぶりと、この朝ドラがかなりの変り種であることを改めて強く思う。そんな異色の面白さを牽引する石原さとみのナレーションに、いつの間にかとりこになっていることに気がつく。(麻生結一) 第4週(10/20〜10/25放送) ☆☆☆★ ドラマは春子(滝裕可里)のスケート猛練習編と冬子(田島有魅香)のパンの配達便編の2部構成。パンの耳をもらいに来ていた和人(米田良)の家に冬子がパンを届けに行く場面に、必ず長塀登場させるあたりの見せ方は絶品といえよう。繰り返し使うことで、見る方はパブロフの犬状態になる。このあたりに、この朝ドラのセンスのよさを感じずにはいられない。ただ、静子(田島寧子)の歌だけは、今後遠慮したいところだけど。 稲本(いしのようこ)が東京に去り、それからというもの覇気のない練習を続ける冬子にスケート靴を脱ぐよう怒鳴りつけ、さらには無理やりに脱がせようとする照子(浅野ゆう子)がド迫力。照子を演じる浅野ゆう子は、ちょっぴりうそっぽい感じがこのドラマでは逆にピタッときている。足をケガした春子に背中を貸す春男(岸谷五朗)に自分がおぶさろうとしてみたり、美人の話になったら地獄耳になったりするあたりには笑わせてくれるし、シリアスとコメディのバランスが抜群だ。 愚連隊のアニメーションから抜け出してきたような和人の兄、賢作(阪本浩之)と冬子の出会いの場面は、塀の穴から覗く形で2分に及ぶ長回しか。このドラマ、こっそりといろんなことをやってます。その試みの細かさに★ひとつプラス。(麻生結一) 第3週(10/13〜10/18放送) ☆☆☆ 今週はBKの朝ドラらしい見せ方の工夫がいっぱい。スケートの進級試験を受ける様の静寂からして並みじゃない。規定演技の氷の削れる音が緊張感満点で、思わず見ながらに息をのむ。BKの朝ドラって、こういう変わったことを時々やってくれるから見逃せない(まぁ、この朝ドラは普段から変わったものづくしなんだけど)。 「天才少女の母、あらわる!」by冬子(石原さとみ)NR とは言い得て妙。春子(大島正華)と夏子(中村愛)の負けず嫌いも、コーチの田中(樋口浩二)以上にリンクの娘たちに激を飛ばす照子(浅野ゆう子)を見ていれば、それが遺伝に違いないと思えてくる。フィギュアスケートの第1人者、稲本(いしのようこ)に習わせたい一身で、春子(滝裕可里)にわざと目立つ演技をするよう指示する照子(浅野ゆう子)の懸命さに、見るほうも力が入る。普通、級って数が少なくなる方が強いはずなのに、スケートは逆なんですね。 冬子(田島由魅香)が登場するシーンも今週は工夫尽くし。おせちをつまみ食いする場面で、左に右に縦横無尽にカメラを移動して見せたり、遊び相手がなく、ちんどん屋と戯れる場面では3分間以上長回してみたり。 おさがりのおさがりのおさがりをあてがわれる冬子にとって、残り物には服がある?!オート三輪でいく年始の挨拶も壮観。岸谷五朗の大阪弁はまったく正調じゃないんだけど、温かい雰囲気にあふれている。「禁じられた遊び」にパン職人全員が号泣。そういう時代だったんですね。(麻生結一) 第2週(10/6〜10/11放送) ☆☆★ テレビジョンつき喫茶店シャトーを持ち出して、絶好の機会とばかりにNHKが自画自賛に明け暮れた週。 「しばらくお待ちください」 ってテロップ、ちょっと前まではしょっちゅう出てましたよね。テレビジョンの中の照子(と現実の照子が同時に歌う変化のつけ方は絶妙。これから毎話ごとに歌を入れていくとなると、それはそれで大変だとは思うが。屈託のない時代の雰囲気が素直に出ているあたりはいい。 弘子(森口博子)が19歳?のネタには爆笑ものも、全体的に脇役が弱い印象。 「このドラマはフィクションであり……」のテロップは朝ドラでは珍しいのでは。何か苦情でもあったのかな?!(麻生結一) 第1週(9/29〜10/4放送) ☆☆☆ 朝ドラとしては『オードリー』以来の時代物。原作物としては何と1997年の『天うらら』以来。その前年の『あぐり』も原作物で、この2本がここ数年の図抜けた傑作だということを考えても、今回はもしかしてもしかするかも(『走らんか』も原作物だったなんていうつらい記憶はここでは封印することにいたしましょう)。 『トトの世界』『長良川巡礼』『君を見上げて』とNHKでの仕事はことごとく???の大森寿美男による脚色も上々。ソフトフォーカスのセピア調がレトロな雰囲気の画作りも、時代物の気分を盛り上げてくれる。心配していたミュージカル風では、BKお得意のアフレコ的なアフレコが炸裂。毎度の災いもこれが逆の効果をあげてたりするあたりが、ミュージカル風の強みか。 秀逸は回想で散りばめられた結婚式のエピソード。春男(岸谷五朗)と照子(浅野ゆう子)のパーソナリティが鮮明になるとともに、どれも面白おかしく小気味いい。 宮川泰の音楽は、セルフパロディっぽくてうけた。いまどきそんなのありなの的なお気軽ぶりが妙に楽しい。フランス人のクロード・チアリがなぜかアメリカ人のデービッドはん役だったりする欧米人一緒くたも戦後風?! 再放送枠が『ひまわり』なのもうれしい。欽ちゃんのナレーションに不安になった方、大丈夫ですよ。半年すれば慣れますから?! それにしても、朝から浅野ゆう子三昧だこと。もしくは藤村志保三昧だこと。藤村志保は昼間も出てるから(『温泉へ行こう』)、毎日1時間半、藤村志保を見る格好だ(もちろん、出ずっぱりなわけじゃないけれど)。(麻生結一) |
|
Copyright© 2003-2004 TV DRAMA REVIEW. All Rights Reserved. |