東京電力の社員や家族だけを診療し、稼働率が低い東電病院(東京都新宿区)を東電が保有し続けている問題で、東京都の猪瀬直樹副知事は27日、株主総会で東電側が虚偽の答弁をしたとして「東京都を冒涜(ぼうとく)する発言だ」と文書で抗議し、発言の撤回と陳謝を求めた。
猪瀬副知事は東電が一兆円の公的資金を受けながら、一般患者を診ない病院に東電が財政支援するのはおかしいと指摘していた。
株主総会で、猪瀬副知事は東電病院の病床稼働率が二割程度で、公共性も低いと指摘。資産価値は百二十二億円に上るとして、公的資金を受ける以上、売却すべきだと述べた。
東電の山崎雅男副社長は「一般開放を検討したが、新宿区には大きな病院がいくつかあり、都から難しいと言われた。都の指示だ」と答弁。さらに、病院の医師が福島第一原発の現場に行き、作業員の医療支援に当たっていることを理由に継続保有することを決めたと説明した。
これに対し、猪瀬副知事は福島で医療業務に当たっているのは、土日に一人だけだと暴露。二十六日に都が行った立ち入り検査で、百十三床のベッドのうち入院患者は二十人しかいないことを確認したと明かし、「東電病院が百十三床も持っていると、医療法でその地域のほかの病院がベッド数を増やそうと思ってもできない。(病院経営を)やるんなら、ちゃんと満床にしなさいよ」と厳しく指弾した。
山崎副社長に代わって、勝俣恒久会長が医療スタッフの派遣が現在は指摘の通りだと認め、「今後、福島の医療態勢も整ってくるので、どういうふうに整備するか検討課題にしたい」と答えた。
都側は株主総会の終了後、二〇〇七年二月に東電労務人事部の副部長が来庁し、一般病院への移行を相談したとする文書を公開。文書には、当時の都医療安全課長が「条件さえクリアできれば、一般開放は可能」と回答したと記録されており、その後は東電側から相談がなかったという。都は東電に事実確認を求める方針。
東電広報部の話 当時は、企業立病院として存続したまま一般開放できないかを都に打診した。しかし、それは無理だと言われたので、それ以上は話を進めなかった。社員の福利厚生を優先する企業立病院として存続する前提が伝わっていなかった。言葉足らずだった。
<東京電力病院> 1951年に東電社員らの健康管理を目的とする「職域病院」として開設。現在の診療科は内科や外科など9科。受診は東電社員とOB、家族などに限られる。開設当時ベッド数は210床。その後、許可病床192床に。2009年の定期監査時は145床。それでも入院患者は60人余だけで、113床に減らされていた。
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