東京都内で観光バスやツアーバスが利用できる駐車場は、公営と民間の主な場所を総計しても約四百台分にとどまり、慢性的に不足している。銀座や上野、浅草など観光スポット周辺では、駐車場に入れず、降ろした客の戻りを路上で待つバスの車列が日常的にみられる。政府は観光立国を掲げ、都も誘客に力を入れるが、都心部での新たなバス駐車場整備は簡単ではない。 (上條憲也)
日本バス協会によると、都内には施設や公園の併設を中心に大型バスの駐車場が約三十カ所ある。しかし、国会や明治神宮の駐車場のように見学や参拝など施設利用以外では止められない場所も多く、主な観光エリア内で短時間の客待ちに使える駐車場は限定される。
上野動物園や国立西洋美術館を抱え、行楽期には学校行事のバスも多く訪れる上野公園(台東区)の場合、バス専用駐車場のスペースは二十四台分。付近の路上には平日でも順番待ちのバスが連なる。管理する都公園協会によると、都内六十九カ所の所管駐車場でバス専用の駐車スペースがあるのは、ほかに葛西臨海公園(江戸川区、十八台)と、お台場近くの潮風公園(品川区、十台)だけだ。
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年間約二千万人が訪れる浅草。地元の台東区はバス駐車場三カ所計六十一台分を二〇一〇年末までに整備したが、このうち浅草寺に近い区民会館の十二台分は車高制限が三・三メートルで、一般的な大型バスは利用できない。
浅草から隅田川の対岸にオープンした東京スカイツリー(墨田区)は施設内外に五十五台分を確保。ただ、完全予約制で原則二時間以内。銀座に近い築地・市場橋駐車場(中央区、九台)は営業時間が午後三時までと早いなど、駐車場によっては制約もある。
観光バスやツアーバスを運行する貸し切りバス事業の新規参入は、二〇〇〇年の規制緩和で加速した。国土交通省の統計によると、全国のバス車両数は同年末の三万六千八百十五台から、一〇年末には四万七千四百五十二台に増えた。
一方で駐車場の新規整備は追いついていない。
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路上駐車対策などを手掛ける公益財団法人・都道路整備保全公社は〇七年、首都大学東京と共同で東京駅、新宿駅、浅草周辺でバス駐車場の実態を調査。報告書では路上での乗降や客待ちの常態化を指摘し、「観光バスの駐車施設や乗降施設の整備量が不足している」「大都市部は街全体が観光の対象になり、施設だけに依存した駐車場整備では不十分」と分析した。
観光庁は、誘客と都内駐車場のバランスについて「駐車場整備は町づくりと一体で進めていかないと厳しい面がある」としている。
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