【今回のまとめ】
1.ロシアという国は強いリーダーの元で大きく成長する国である
2.2001年の改革でロシアは市場経済に必要なすべての要件を整えた
3.資源依存型経済からの脱却が課題
4.ロシアと日本は協力できることがたくさんある
■ロシアは歴史的に、強いリーダーの元で大きく発展する
広瀬: 1998年にルーブル危機が起きたとき、西側の投資家の多くは「ロシアはもうダメだ」と諦めてしまいました。ところが、1999年あたりからロシア経済は目に見えて改善してきました。これはなぜですか?二階堂: ロシア経済の復興はプーチン政権の誕生によって始まりました。プーチン大統領はロシアにおいては熱狂的な支持率を誇っており、大統領を退いた今も首相として強力なリーダーシップを発揮し、ロシアの成長の原動力となっています。
イヴァン3世、ピョートル1世、エカチェリーナ2世、レーニン、スターリンなど、ロシアという国は歴史的に強いリーダーの元で大きく発展する国なのです。プーチン首相も「皇帝(ツァーリ)」と呼ばれるほどに、強いリーダーと目されています。すなわち、ロシア経済の復興は、強いリーダー主導によるスピーディなトップダウン型の政策によるものなのです。
具体的な政策としては、ロシア国内で生産する資源エネルギーを最大限活用するために、ルーブルの切り下げによって輸入代替による内需を拡大し、これが輸出産業の活性化につながりました。その結果、資源エネルギーはもちろんのこと、それ以外の品目も含めて国内生産が拡大したのです。
もちろん、折りよく石油輸出価格が高騰していたことも回復を後押ししました。また、政府・中央銀行が連携して、緊縮財政・通貨政策に取り組んだことも回復の大きな要因です。
広瀬: ルーブルが安くなり、輸入が抑えられるという構図は、現在のロシアの置かれた状況に通じるものがありますね。すると、当時と同じように輸出産業が立ち直り、外貨準備が再び増加に転じる日が来ることもそう遠くはないかも知れませんね。■マフィアの一掃がロシアの基盤を確立させるための最重要課題
ところで先日、二階堂さんのWebセミナーを拝見させていただいた際に、私が良くわからないことがあったので、質問させていただきたいのですけれども、2000年、2001年に行われたロシアの構造改革とは具体的にはどのようなものを指すのですか?
二階堂: 2000年から2001年というのは、市場経済への移行に伴う混乱期に生じたさまざまな弊害を取り除き、その後の発展の礎を築き上げる時期だったのです。具体的には、マフィアの退治、新興財閥(オリガルヒ)の解体、税制改革、法制度の整備、連邦管区の設置などが実施されました。当時、例えば「ブリガダ」というマフィアに関する映画が大流行していたのです。それが示すように、マフィアによる企業や個人資産の乗っ取りや犯罪、脅迫まがい不法行為が横行していたのです。
この問題を解決することがロシアの基盤を確立させるのには最重要課題となり、プーチンがマフィアを一掃するための改革を実施したのです。