<東京電力>原発輸出事業から事実上撤退 事故対応を優先
毎日新聞 6月28日(木)2時31分配信
東京電力が原発の輸出事業から事実上撤退する方針を固めたことが、27日分かった。東電は、海外での原発の運転や保守点検などの事業を検討していたが、福島第1原発事故の対応で手いっぱいのため、日本の原発を新興国に売り込む国策会社「国際原子力開発」(東京都千代田区、資本金・同準備金2億円)が進めるベトナムでの原発建設計画への参加を断念する。東電の方針転換で、日本の原発輸出ビジネスは見直しを迫られる。
国際原子力は、ベトナム政府が計画する原発の受注を主な目的に、経済産業省主導で10年10月に設立。原発を持つ電力事業者9社と原発メーカーの東芝、日立製作所、三菱重工業、官民ファンドの「産業革新機構」が出資、社長は元東電副社長の武黒一郎氏が務める。東電は20%を出資する筆頭株主で、原発の運転や保守を担う予定だった。
しかし、東電の広瀬直己新社長は毎日新聞の取材に「我々の原子力技術者は(福島第1原発の)安定化や廃炉を長い道のりでやらねばならない。そっちを放り出して(原発輸出)ということはあり得ない」と説明。国際原子力への出資比率は当面維持するが、技術者の派遣や助言業務は行わない方針だ。
日本勢は09年、アラブ首長国連邦(UAE)での原発受注で、日本より約2割安い価格を提示した韓国勢に競り負けた。地震国である日本の原発は、安全性を高めるコストがかさむとされる。このため経産省は、原発の建設だけでなく、技術者育成から運転、保守までを一体で売り込み、コスト面の劣勢を補う戦略を提唱。国際原子力のベトナム受注は成功例とされ、今後も東電が加わる形で原発輸出を続ける計画だった。
東電の撤退で、日本の優位性は失われかねず、政府内には「リーダー役を関西電力などに代わってもらう」(経産省関係者)との声もある。
しかし、態勢立て直しが遅れれば、条件の変更を理由にベトナム政府が契約を解消したり、他の新興国での受注競争に悪影響を及ぼす可能性もある。【宮島寛、和田憲二】
★国際原子力開発 経済産業省の呼びかけで電力会社や原発メーカー、産業革新機構の国内13事業者が出資し10年10月に設立。海外からの原発受注の窓口となり、建設だけでなく運転保守や人材育成まで一体で提案する。10年10月末にベトナムから原発2基を受注した。
最終更新:6月28日(木)2時42分
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