きょうの社説 2012年6月28日

◎安管協に専門委 的確な人選で機能の発揮を
 石川県は志賀原発周辺の住民の安全確保などを検討する県原子力環境安全管理協議会( 安管協)の中に、専門家で構成する委員会を新設する。県議会予算特別委員会の質疑で谷本正憲知事は、原子力や地震などの専門家が原発の安全性を集中審議する場を設けて、安管協の機能を強化する方針を示した。

 安管協は県が志賀原発の再稼働に対して同意を求められる際に、安全性について協議す る役割を担う。福島第1原発では、起きないとされてきた重大事故が実際に発生した。安管協に求められる役割は事故前より重くなっており、専門的見地から安全性を検証できる委員会の設置は妥当な判断だろう。的確な人選を行い、平常時も異常時も迅速に機能を発揮できる体制を築く必要がある。

 安管協は県と志賀町が北陸電力と結んだ安全協定に基づいて設けられた。竹中博康副知 事が会長に就き、学識経験者や県議、周辺市町の首長、農協、漁協の関係者らで構成されているが、今後、安全性の検討を深めていくには、専門家同士で徹底的に議論する場が必要だろう。安全協定に基づいて県が志賀原発を立ち入り調査する際に専門家が同行すれば、調査の実効性も上がる。

 石川県がモデルとしているのは、13基の商業原発がある福井県の原子力安全専門委員 会である。原子力や電気、地震などの専門家12人で構成され、国が大飯原発再稼働の地元同意を求めた際は専門的見地から検証を進め、県やおおい町の判断を支えた。先進地の福井県でも、かつては法的権限のない県には電力会社から原発トラブルなどの情報が十分に入らなかったという。そうした経緯を経て、安全性を独自に評価する体制をつくった福井県の取り組みは参考になる。

 志賀原発ではトラブルがあった際に、石川県や志賀町に対する北電の連絡が遅れたこと がある。危険性の高い臨界事故さえ隠されていた。国のような権限も専門性もない県が住民の安全を確保するには、専門家の助言が必要だろう。専門性と識見の高い委員を集めて、国や北電に対する発言力を高めてもらいたい。

◎等伯の顕彰事業 地域づくりへ取り組み重ね
 七尾生まれの画聖・長谷川等伯を顕彰し、魅力を発信する各種事業が七尾市を中心に展 開されている中、新たな取り組みが相次いでいる。観光面ではJR七尾線のラッピング列車「国宝長谷川等伯号」のデザインが決まり、この夏にお目見えする。文化面では七尾市文化協会の加盟各団体が等伯にちなんだ記念事業を計画するなどしている。

 2010年の等伯没後400年を契機に、「等伯ふるさと調査」をはじめ、幅広い分野 で等伯をテーマにした事業が実施されている。これらを通じて、等伯の業績や足跡に触れる機会が増え、地元の関心がより高まってきたといえる。等伯は、ふるさとの能登や石川の魅力を広く発信できる地域資源でもある。今後も官民でアイデアを出し合い、等伯の偉業を次世代に継承し、地域振興につなげる取り組みを重ねてもらいたい。

 JR七尾線のラッピング列車は3両1編成で、等伯と長男久蔵による国宝3作品を各車 両に描く。七尾市観光協会は同列車の運行で、県七尾美術館で開かれる「長谷川等伯展」などへの誘客を進める方針である。のと鉄道でも地元ゆかりのアニメのキャラクターを描いたラッピング列車が注目を集めている。今回は「国宝列車」の話題性で美術、鉄道ファンなどの関心を集め、等伯の生誕地を広くアピールする機会になる。列車運行と各種イベントを連動するなどの仕掛けが求められる。

 等伯にちなんだ事業は文化、教育など多方面に広がっている。新たに七尾市文化協会は 2年後の協会合併10周年に向け、加盟団体が等伯を顕彰する記念事業を実施する方針で、103団体がそれぞれ行事を企画する。華道や茶道など多彩な行事に多くの関係者が携わることで、等伯に対する関心や理解も自然と深まっていくだろう。

 若い世代に向けては、小、中、高校生を対象にした感想文・絵画コンクールが実施され ており、ことしも7月から作品を募集する。日本の美術史に大きな影響を与えた等伯の作品や足跡を知ることは、若者たちに刺激を与え、ふるさとに誇りを持つきっかけにもなる。