情け容赦なく人を貪り、国を貪り、膨張を続ける多国籍企業や資本家は、盛んに儲けて金を殖やす知識はあるが、巨体ゆえ、総身に知恵が回らない。
金儲けのからくりに使う知能はあっても、人や自然を蝕んだ結果、自分たちがどうなるか、そこに想像力が働かない。
映画『バイオハザード』のアンブレラ社は、多国籍企業のモンサントを彷彿とさせる。
政治を動かし、法律を変えさせ、伝統的な品種改良ではない遺伝子組み換え作物で各国を席巻しながら、人間をコントロールし支配する。作物が疲弊し、土地が疲弊し、疲弊した飲食物によって人間の細胞が疲弊するスピードは、人間がゾンビに入れ替わっていく速さを彷彿させる。
身体や経済の健康を疲弊させられた人間は、やむを得ず、多国籍企業の意図で使われるゾンビになってしまうこともある。単に目先の欲だけで、進んで手先になる者もいるが、そう言えば、TPPを推進する日経連米倉会長のご尊顔は、もしやと思わせる風貌だ。
しかし、モンサントに限らず、多国籍企業や資本家が、TPPのようなものに紛れ、あるいは現在の日本であれば災害復興の名目で入り込み、金儲けのために人と自然を貪ろうとすることは、実は不合理だ。
こういうことを続けていると、資本家にとって、そのうち搾り取る相手がいなくなるからだ。
資本家の金儲けのからくりによって、医療も教育も法律も、社会の仕組みが変えられる。大衆が潤うことはない。大衆は、生かさず殺さず搾り取られるように、貧しいままでいるよう囲い込まれ、そこにユニクロがあてがわれる。
しかし、世界的に、社会がこれほどまでに疲弊している現状では、これ以上、健康的にも経済的にも大衆が疲弊しては、搾り取るものも搾れない。
ヘンゼルとグレーテルをお菓子の家で誘い込んだ老婆にしても、子供たちを太らせてから食らおうとしたではないか。『マトリックス』でも、用済みになるまでは、人間にいい夢を見させている。
搾り取りたければ、資本家は、まず、大衆を豊かに潤わせるべきだ。
そこそこ小市民的な豊かさと健康が生涯保てるよう、大衆の間に金が循環し続けるようにしていれば、大衆は暮らしに満足して、資本家の意図に気づいて声を上げる者が出現しにくくなる。
多国籍企業や資本家にとって、そういったコントロールは手慣れた作業のはずだ。自分たちの手の内からはみ出させないように金を循環させればいいのだから、その範囲をちょっと広げるくらい、たいした手間ではない。
そうしないと、搾り取る相手が死滅する前に、もっとやっかいなことが起こる。
市民革命や一揆がどうして起こったか、歴史を振り返れば、その理由がわかるだろう。
このまま何をしてもしなくても、ただ搾り取られて死なされるのだ。この状態のままどうしたって死ぬのなら、ならばいっそのこと、というのが大衆の心理である。
苦しさが窮まると、打開のエネルギーに変わる。窮乏すれば、持っているところから取ろうとする。いずれにしても、標的は資本家だ。
痛くも痒くもない企業デモでは済まない。役員や社員の家庭といったところから徐々に直接の襲撃が始まり、そのうねりが巨体を倒す力になる。歴史のさまざまなシーンを現代に置き換えれば、そういうことだ。
富んでいけないわけではない。富の理由に、人は反目する。
アンブレラ社にしてみても、そういうやり方で手にした権力と富を独占するから、結局、人間を食い尽くしたゾンビに見つかって食われるか、生き残った人間に潰されるか、部下の反乱で頭に一発撃ち込まれるか、話はそんなところにしか帰結しない。
そもそも、あそこまで人間の数が少なくて、自分たちの分の安全な飲食物や衣類や諸々を、どうやって調達しているのだろう。その疑問も、さしずめ、TPPを強硬に推しているユニクロとローソンが腰巾着となっているから不便はないのだと考えれば、筋は通る。
しかし、それにしても、労働者は必要だ。が、先に述べた理由によって、いずれ労働者は反乱する。
やはり、帰結するところは同じなのである。
現在の世界の状況を鑑みればいい。
他者を助けることで自分が潤う方法は、歓迎され尊敬されても、他者を貪ることで自分だけが勝つというようなやり方は、もう誰も認めはしないのだ。口にしなくても、多くの人が感づいている。感情論ではない。そういうやり方では、破綻にしか行き着かないからだ。
多くの人が、企業が、救いようのない破綻を避けて、なんとか生き延びようと模索している。そうなると、結論は一つだ。
皆で一緒に生き延びよう、皆で一緒に生き残ろうとしなければ、誰もが生きていくことができない。そのような根本的な危機感が、今、世界の人々全体の価値観を変化させようとしている。そうなると、選択肢は一つだ。
現在、そしてこれから、人間が普通に生き延びていこうとするとき、最も合理的な判断で導き出される当然の結論、自明の理。
それを選択する知恵が、人間にはある。
2012年02月04日
ここが資本家の命取りだ
posted by 金の龍星新社 at 15:01| 生活
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