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回答(1件中 1~1件目)
この質問のテーマの背景は、複雑過ぎるので、正確に答えるのは、簡単ではありません。
ですから、申し訳ありませんが、表面的なことだけについて回答を差し上げたいと思います。
基本ですが、通常の金属材料では、せん断強さと引張強さの間には、理論的に次の関係式が成立します。
せん断強さ τB = 引張強さ σB /√3 ≒ 0.58 × σB
これは、ミーゼスの応力から導かれます。
それでは、なぜ、
許容せん断応力=許容引張応力×0.8
などというヘンチクリンな関係式が出てきたのか?
その根拠は、ASME Sec.III NC-3216.3 にあるようです。(私はこの原典に目を通したわけではありません。)
ところで、許容せん断応力 と せん断強さ とは、同じではありません。
後者は測定で求まる値ですが、前者は後者を元に、設計に私用するために人為的に決定される値です。
しかし、今は同義語としておきます。
上記原典中の”せん断強さ”とは、丸棒のねじりによって求めた値のことです。
延性材に究極状態までねじりトルクを負荷し続けると、添付図のような応力分布になります。
要するに、断面全体が、せん断強さτBの値のほぼ一様な応力になります。
このときのトルクT1は、次式のようになります。
T1=2π・τB・r0^3/3
(r0は丸棒の断面の半径)
一方で、トルクTから表面応力τeを求める際には、弾性の関係式を使用するのが普通です。
T=π・τe・r0^3/2
ここで、
T1=T
と置くことにより、
τe=4/3・τB
が得られます。
このτeが、ねじり試験から求められるせん断強さということになるのです。
さらに、
τB=σB/√3≒0.6σB
という関係式を代入すると、
τe=4・σB/(3√3)≒0.8σB
となって、「引張強さの0.8倍」がここから出てきます。
τe≒0.8σBという関係式は、脆性材の場合には成り立ちません。
また、中空パイプのねじりの場合にも成り立ちません。
断面が円形以外の棒のねじりの場合にも成り立ちません。
ねじり以外のせん断応力の発生メカニズムを利用してせん断強さを求めた場合にも成り立ちません。
要するに、いろいろと制約の多い関係式なのです。
何よりも、理論的に導かれるτB≒0.6σBよりも甘い条件なので、本当にこれで設計を進めてよいのかどうか、私自身は疑問に感じています。要するに、私はτe≒0.8σBという関係式は使いません。
なぜ甘い条件が導かれて来たかというと、ねじり応力というものは、断面で一様でないからです。要するに、中心から外周に向かって線形変化します。このように分布がある状態で限界値を測定すると、一様応力状態の場合よりも大きな値が得られてしまうのです。
他の例としては、曲げ試験(=断面内で応力が線形変化)で曲げ強さを求めると、引張試験の時(=一様引張応力状態)よりも高い限界値が得られることは、有名な話です。
(図と上記説明で、記号が一部対応していませんが、ご容赦を!)
投稿日時 - 2010-04-05 23:12:46