東京電力:「実質国有化」決定へ…株主総会
東京電力など電力9社が27日、一斉に株主総会を開いた。福島第1原発事故を起こした東電の総会は午前10時から東京都内の国立代々木競技場第1体育館で開かれ、経営側は政府から公的資金で1兆円の資本注入を受ける実質国有化や経営陣刷新の議案を提案した。一方、大阪市内で開いた関西電力の総会では、経営側が7月からの大飯原発3、4号機の再稼働への理解などを求めた。福島原発事故や大飯再稼働を受け、多くの電力の総会で「脱原発」を求める株主提案が出され、激しい議論が展開された。
今年の総会には各電力の大株主の地方自治体が「物言う株主」として登場。東電の総会には筆頭株主の東京都の猪瀬直樹副知事が出席し、一方的な値上げ要請を批判した上で「破綻企業並みに身を削るべきだ」と一層のリストラを要求した。また、関電の総会には筆頭株主の大阪市の橋下徹市長が乗り込み、「速やかに全原発を廃止する」と定款に盛り込むように求めた。
定款変更には出席株主(委任状も含む)の議決権の3分の2以上の賛成が必要。東京都や大阪市の株主提案に東電と関電の経営側はそれぞれ反対を表明。金融機関など他の主要株主が経営側を支持しており、否決される見込みだ。
東電の株主総会では議長を務める勝俣恒久会長が冒頭、福島第1原発事故や2期連続の巨額の赤字決算などについて陳謝。その上で「(福島第1原発事故の)賠償や電力の安定供給を達成するには、財務の抜本的な改善が不可欠だ」と述べ、同社が実質国有化されることに理解を求めた。これに関連し、東電は政府の原子力損害賠償支援機構を引受先として1兆円の優先株を発行するための定款変更を提案。総会で可決されれば、東電は7月25日に公的資金投入を受けて、実質国有化される見通しだ。また、新会長に弁護士の下河辺和彦氏、後任社長には東電生え抜きの広瀬直己常務を選任するトップ人事案も提案した。
脱原発を目指す株主提案に、浜岡原発の周辺自治体で株主の静岡県牧之原市が賛成の意向を示す中部電力や、九州電力の総会でも、原発をめぐり、経営側と株主の激論が交わされた。【和田憲二、立山清也】
◇株主提案◇
株主が会社の経営に関与するため、株主総会で議案を提出すること。総会の6カ月以上前から継続して1%以上の議決権などを持つ株主が提案できる。2000年代に入り、投資ファンドなどが「物言う株主」として登場し、増配につながる経営改革プランや役員選任案などを提案し注目された。電力各社は公営事業を継承した経緯から、自治体が大株主の例が多い。東電の場合、東京都が約2.7%の株式を保有する筆頭株主。大阪市は関電株の筆頭株主で約8.9%を持つ。