「ダウン直前まで途切れることなく入ってきた注文を考えると、かなりの損害になる。万単位の顧客データもゼロスタートになり、正直途方に暮れています。言いたいことは、『元に戻してほしい』ですかね。言ってもしょうがないですが。大事なお客様とのつながりが断たれてしまい、信用を失ったことが何よりショックです」
さらに深刻な事態が、「サイボウズ」というグループウェアの利用企業に想定される。
■事業継続が困難な企業も?
ファーストサーバは月々の利用料金だけで手軽にサイボウズを利用できる「サイボウズ Office9 for ASP」のパートナー企業。加えて、顧客企業が購入したパッケージ版のサイボウズを運用するサーバーとしても数百社に貸していた。このうち、メール、スケジュール、顧客管理、営業記録など、約400社のサイボウズのデータを丸ごと消失させてしまった。
ネット上の掲示板には「顧客データもサイボウズに入れてたから、電話来ても誰が誰だかわかんないし何も答えられないし、サーバが落ちててって言い訳もできないし、会社自体が記憶喪失になったみたい」「たぶん明日は段ボールから顧客との契約書原本取り出して、電話取りながらあいうえお順に並べる作業から一日が始まります」といった書き込みがなされている。
真偽は不明だが「困っていらっしゃるお客様から、20日から25日まで累計200件ほどの問い合わせがあった」(サイボウズ広報)。ファーストサーバは「サイボウズのASPを利用していた149社のほとんどが、恐らくバックアップをとっていないと思われる。実際にどれだけのお客様が自力でデータを復旧できない状況にあるのか、実態は把握できていない」とする。
顧客情報は企業にとって事業の根幹ともいうべき資産。そのバックアップを自社で管理していなかったのは「自己責任」という声もある。ただ、クラウドサービスは企業情報システムに投資できない、あるいはIT(情報技術)に疎い事業者が手軽に活用できるサービスとして普及した。
前出のネット通販事業者は「こちらにも甘さがあったと思います」としながら、「『稼働率100%』とうたわれていたので信用していた」と話す。サイボウズについても、ファーストサーバのASPサービスの説明資料で、「データのバックアップ」「リストア(復元)」について、「お客様作業不要」と明記している。一概に、被害企業を責めることはできない。
では、「稼働率100%」「バックアップ不要」のサービスがなぜ……。皮肉にも、障害の原因となった作業は、セキュリティーを高めるためのものだった。
■取材で分かった障害の真相
ファーストサーバによると今回、脆弱性対策のために更新プログラムを作り、いつものようにプログラムを走らせた。ところが、その更新プログラム自体に大きなバグ(不具合)があった。「ファイル削除コマンド」を停止させる記述漏れと、メンテナンスの対象となるサーバー群を指定する記述漏れがあったというのだ。
そのバグに気づかないまま、本番環境のサーバーで更新プログラムを起動。だが更新プログラムは、対象外のサーバーでファイル削除コマンドを実行し、次々とデータを消去していった。この範囲が、顧客件数5万件のうち約5700件に及んだ。不幸はここで終わらない。
ファーストサーバ、レンタルサーバー
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