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法源　～不文法について　２/２　　行政法序説　７/７　行政法研究　７)　　　行政　９

エラボレイト　２

(＊参考文献の「プロゼミ」は、「はじめて学ぶプロゼミ行政法　石川敏行　実務教育出版　改訂版」を指します。これをフレームワークとして、その他の資料で肉付けする手法を採用しました。)

法源のうち、不文法について、前回と同様見てゆきたいと思います。
成文法との解説とあわせて、もう一度、「定義」を見てみましょう。以下。

●成文法・不文法(法律学小事典　第４版　７０４)

憲法・法律のように文書の形で制定された法規範を成文法、慣習法のように文書の形をとらないものを不文法という。
判例法は判決文そのものが法ではなくそこに含まれる法原則が拘束力をもつ規範であり、またその原則を収録したリステイトメントは制定されたものでないから、不文法に分類される。
条理法の一般原則、自然法などを不文法と呼ぶ場合もあるが、それらが拘束力がある法源かどうか問題がある

前回は「慣習法」について説明しました。
今回は、「判例法」「条理法」と見てゆきます。

１　判例法

判例とは「後の裁判の先例となる裁判所の法律的な判断(プロゼミ　３７)」を意味します。

ⅰ)判例は、「行政法の成文法源を具体化」します。
ⅱ)そしてその意味を明らかにします。
ⅲ)また慣習法の存在・内容をも明確にします。

この３つによって判例法も不文法源の一種として効力を持つといえます。とくに、最高裁判所の判例は、変更の要件が厳格であります。

条文を見てみましょう。以下。

裁判所法：第十条 （大法廷及び小法廷の審判） 　事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによる。但し、左の場合においては、小法廷では裁判をすることができない。 
一 　当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。（意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。） 
二 　前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。 
三 　憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。

広義には過去に下された裁判をい・・＜いますが＞、狭義にはそれらに含まれる原則のうち、現在拘束力をもつものをい・・＜います＞。
判例が変更された場合における変更前の判決は前者の意味では判例であるが、後者の意味ではそうで・・＜はりません＞。

刑事訴訟法４０５条にいう判例や、裁判所法１０条３号の「前に最高裁判所のした裁判」は後者の意味であ・・＜ります＞。

最高裁判所は判例統一の役割をもち、刑事事件における下級裁判所の判決が最高裁判所の判例を違反したときは上告理由となり(刑事訴訟法４０５－２，３)最高裁判所が判例変更するときには大法廷を開かなければな・・＜りません＞。(裁１０③)
判例の中から形成された法は判例法と呼ばれ不文法源として英米では原則的な法形式をな・・＜します＞。
日本の現行法では成文法は上位の成文法に違反すると認定されない限りは不文法である判例法に優先・・＜しますが＞、確立した判例は新たな立法によって変更されない限りはときに成文法に代わる効力を持＜ちます＞。

譲渡担保、共謀共同正犯など、判例法が制定法を変更した事例もあり、根抵当権など、判例法によって確立した後に立法化された例もあ・・＜ります＞。

(法律学小事典　判例　９９９　＜　＞はわたくしが追記)

２　条理法

法源のうち、不文法のなかで最後、それは「条理」です。
条理とは「ものごとの道理・筋道」のことです。ある事件でそもそも法源が欠けていたら、どうなるでしょう。法の欠如を理由に裁判拒否することができないのは当然。この場合に裁判官は自分が立法者あるいは社会の一般人としてかくあるべしと考えるルールに基づいて判決をする。このルールが「条理」です。
他の法源が存在しない場合に条理は裁判官の判断の「最後のよりどころ」となる。その意味で補充的な法源なのです。(プロゼミ　３７)

「条理」、この出典先は孟子、万章編＜まで遡ることができます＞。

裁判事務心得(明治８)３条に、「民事ノ裁判二成文ノ法律ナキモノハ習慣二依リ習慣ナキモノハ条理ヲ推考シテ裁判スベシ」とあ・・＜ります＞。
この規定が現在なお有効か否かは明確ではないですが、同様の場合につきイタリア民法１条２項が「裁判官が仮に立法者であったら制定するであろうような準則」に従って裁判せよと規定しているのと同趣旨と解され、さらにラテン語のnaturalis ratio(自然の道理),ドイツ語のnatur der sache(事物の本性)の意味とも解されてい・・＜ます＞。

(条理　６２８　法律学小事典　判例　９９９　＜　＞はわたくしが追記)

３　まとめ

不文法には、慣習法・判例法・条理法とある。自然発生した慣習法、そして意思表示の必要な事実たる慣習。判例法は時に成文法の代わりを担うときもあれば法制定に寄与することもあります。条理は法源の最後の砦です。

このようにして、法源のうち不文法は成文法の強力な助っ人として必要不可欠な存在にあるのです。

参考：
●刑事訴訟法第405条　高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
1．憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
2．最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
3．最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

●裁判所法第10条　事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによる。但し、左の場合においては、小法廷では裁判をすることができない。
1．当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。（意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。）
2．前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。
3．憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。