通常なら、バックアップデータから元のデータを復元することで一両日中にウェブサイトなどは復旧する。バックアップデータは、本番環境とは違うサーバー、あるいは外部記憶装置に定期的にとっておくことが基本だ。ところがファーストサーバでは事情が違った。
ファーストサーバにおけるセキュリティ対策では、3つのHDDに同じファイルをコピーしていた。1つは「本番系」。もう1つは本番系のHDDやシステムに不具合が生じた時、即座に切り替え、正常稼働を続けるための「待機系」。もう1つが、毎朝6時に本番系のデータを丸ごとコピーしておく「バックアップ系」だ。この3つが、すべて同じサーバー内に同居していた。
あろうことか、ファイルを削除してしまう更新プログラムのバグは、本番系、待機系に加え、同じサーバー内にあるバックアップ系のHDDまでをも消去するという代物だった。
■世間と違った「バックアップ」の概念
なぜ、外部にバックアップをとっておかなかったのか。ネット上では技術者を中心に、この点が指弾された。これについてファーストサーバの村竹室長は、こう話す。「おっしゃっているような一般的なバックアップというのは、我々のような低価格の料金で提供するのは難しい。サーバー内の別のディスクでとることを、我々はバックアップと考えています」
ファーストサーバの主力であり、複数の顧客企業でサーバーを共有するサービス「ビズ2」の料金体系は、月額1890円からと低価格が売り。データ容量が180ギガバイト(GB)と大きいプランでも月額5250円。そのツケが、業者側でのデータ完全消失だった。バックアップの構造は、共有サーバーより高価な、専用サーバーサービスでも同じだ。
こちらは、前述のようにデータ復旧ソフトによる作業で一部データが復旧したようだが、今後、復旧が進んでも「データの精度や量は相当部分的なものにとどまる」との見通し。引き渡しまで数カ月以上要すると見込んでおり、当てにできそうにない。
同種のトラブルとしては国内最大級に発展しそうな大規模データ消失。今となってはバックアップがない企業・団体は泣き寝入りするしかなく、損害賠償も多くを見込めそうにない。
■事実と異なるサービス説明
ファーストサーバは25日朝に公開した質疑応答集(FAQ)の中で、損害賠償についてこう明記した。「サービス利用契約約款に基づいて、お客様にサービスの対価としてお支払いいただいた総額を限度額として、損害賠償させていただきます」
約款には「利用者がバックアップを怠ったことで受けた損害についてファーストサーバは何ら責任を負わない」という免責条項がある。だが、今回は「当社に故意または重過失が存する場合」として適用せず、上記の「賠償制限規定」に基づいて個別対応するという方針だ。
内田・鮫島法律事務所の伊藤雅浩弁護士は、「ファーストサーバに限らず、レンタルサーバー事業者は二重三重の防御線を敷いているので、データ消失による補償を約款以上に求めることはなかなか難しい」と指摘する。
ただし、サービスの説明や宣伝に「優良誤認」があった場合はどうなのだろうか。ファーストサーバは取材で、事実と異なる説明があったことを認めた。
ファーストサーバ、レンタルサーバー
シリコンバレーにある米Google(グーグル)社の本社。同社はここで、社員のために世界各国の有名人を招待して定期的に講演会を開いている。ただ、今から4カ月前の2月13日は、普段と様相が違っていた。講…続き (6/15)
昨年(2011年)後半から低空飛行を続けていた白物家電市場だが、パナソニックをはじめ新たな鉱脈を見つける企業が出てくるなど、盛り返しつつある。家電量販店の売り場では存在感のなかった意外な1社の健闘ぶ…続き (6/14)
各種サービスの説明をご覧ください。
・サッカー、海外0円移籍でJリーグ苦境に
・テクノ菱和、工場用除湿機 消費エネ半減
・富士通もセ氏40度に耐えられるPCサーバー発売
・フタバ産業、150の生産ライン刷新 年10億円のコスト圧縮
・UMNファーマ、バイオ後発薬向け抗体医薬を受託生産…続き