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ファーストサーバ障害、深刻化する大規模「データ消失」
ヤフー子会社、クラウド時代の盲点を露呈(ネット事件簿)

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2012/6/26 13:27
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 通常なら、バックアップデータから元のデータを復元することで一両日中にウェブサイトなどは復旧する。バックアップデータは、本番環境とは違うサーバー、あるいは外部記憶装置に定期的にとっておくことが基本だ。ところがファーストサーバでは事情が違った。

ファーストサーバが25日未明に公開した「事故原因」。「本番環境」と「バックアップ環境」のサーバーが別に見えるイラストは「ミスで、修正作業中」(同社)
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ファーストサーバが25日未明に公開した「事故原因」。「本番環境」と「バックアップ環境」のサーバーが別に見えるイラストは「ミスで、修正作業中」(同社)

 ファーストサーバにおけるセキュリティ対策では、3つのHDDに同じファイルをコピーしていた。1つは「本番系」。もう1つは本番系のHDDやシステムに不具合が生じた時、即座に切り替え、正常稼働を続けるための「待機系」。もう1つが、毎朝6時に本番系のデータを丸ごとコピーしておく「バックアップ系」だ。この3つが、すべて同じサーバー内に同居していた。

 あろうことか、ファイルを削除してしまう更新プログラムのバグは、本番系、待機系に加え、同じサーバー内にあるバックアップ系のHDDまでをも消去するという代物だった。

■世間と違った「バックアップ」の概念

 なぜ、外部にバックアップをとっておかなかったのか。ネット上では技術者を中心に、この点が指弾された。これについてファーストサーバの村竹室長は、こう話す。「おっしゃっているような一般的なバックアップというのは、我々のような低価格の料金で提供するのは難しい。サーバー内の別のディスクでとることを、我々はバックアップと考えています」

 ファーストサーバの主力であり、複数の顧客企業でサーバーを共有するサービス「ビズ2」の料金体系は、月額1890円からと低価格が売り。データ容量が180ギガバイト(GB)と大きいプランでも月額5250円。そのツケが、業者側でのデータ完全消失だった。バックアップの構造は、共有サーバーより高価な、専用サーバーサービスでも同じだ。

 こちらは、前述のようにデータ復旧ソフトによる作業で一部データが復旧したようだが、今後、復旧が進んでも「データの精度や量は相当部分的なものにとどまる」との見通し。引き渡しまで数カ月以上要すると見込んでおり、当てにできそうにない。

 同種のトラブルとしては国内最大級に発展しそうな大規模データ消失。今となってはバックアップがない企業・団体は泣き寝入りするしかなく、損害賠償も多くを見込めそうにない。

■事実と異なるサービス説明

 ファーストサーバは25日朝に公開した質疑応答集(FAQ)の中で、損害賠償についてこう明記した。「サービス利用契約約款に基づいて、お客様にサービスの対価としてお支払いいただいた総額を限度額として、損害賠償させていただきます」

 約款には「利用者がバックアップを怠ったことで受けた損害についてファーストサーバは何ら責任を負わない」という免責条項がある。だが、今回は「当社に故意または重過失が存する場合」として適用せず、上記の「賠償制限規定」に基づいて個別対応するという方針だ。

 内田・鮫島法律事務所の伊藤雅浩弁護士は、「ファーストサーバに限らず、レンタルサーバー事業者は二重三重の防御線を敷いているので、データ消失による補償を約款以上に求めることはなかなか難しい」と指摘する。

 ただし、サービスの説明や宣伝に「優良誤認」があった場合はどうなのだろうか。ファーストサーバは取材で、事実と異なる説明があったことを認めた。

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