野田首相「心から、心から、心から」臨時代議士会で絶叫

民主党の臨時代議士会であいさつする野田首相

　消費税増税を柱とした一体改革関連法案が２６日に採決されることが２５日、衆院社会保障と税の一体改革特別委員会で決定した。“採決本番”を前に野田佳彦首相（５５）は、民主党の臨時代議士会で反対派へ最後の説得を行ったが、法案反対の意思を表明している小沢一郎元代表（７０）は欠席した。

　採決を前に、最後の党内議論の場となったこの日の民主党の臨時代議士会。増税賛成派の拍手と、反対派の怒号が交じり合った喧騒（けんそう）の中、野田首相が登壇した。

　「法案採決のまさに直前になりますが、一致結束して、みんなで力を合わせてこの法案通過に向けてご支援を、ご賛同を賜りますように…」と造反組に土壇場での翻意を迫る首相。そして最後に「心から、心から、心から」と絶叫し、「お願い申し上げます」と頭を下げた。約８分半の滑らかながら抑揚の大きな“野田節”に、会場は再び拍手と怒号に包まれた。

　代議士会は、民主党分裂回避への最後の機会。しかし、野田首相の求める「一致結束」は難しい状況だ。この日、増税反対派の“ドン”小沢氏は、会に顔を見せることすらなかった。今や焦点は造反者や離党者の規模、そして“小沢新党”結成の有無へと移ってきている。

　小沢氏はこの日夜、少なくとも３６人が出席したグループの会合で「国民生活が第一の視点に立ち、日頃の主張を具体的行動に表さないといけない。明日は極めて重要な日になる」と述べ、離党と新党結成について「２６日の本会議後にきちんと自分の考えを言いたい」と語った。

　２６日の採決では、民主党の衆院議員７０人近くが反対や欠席などの「造反」を検討。小沢グループからは５０～６０人程度、そのうち４０人ほどの離党者が出る見通しだ。「反対」を表明している鳩山由紀夫元首相のグループからも数人、それ以外にも数人が反対票を投じるとみられる。自民、公明両党は賛成する方向で、法案の可決は確実の情勢だ。

　野田首相は、この日の特別委で「（採決では）党議拘束がかかる」と反対派をけん制。分裂回避を優先して処分を軽くすれば造反者が増えかねず、逆に処分を重くして離党者が５４人を超えると「少数与党」となるため、執行部は対応に苦慮している。民主党の輿石東幹事長は臨時代議士会の後、造反後の処分について「物事が起こる前に処分がどうとか言うことはない」と明言を避けた。党内の雰囲気については「楽観を許される状況じゃない」と述べたが、結束のための腹案を問われると「ない」と即答した。

　政権与党の大混乱。土壇場で“野田節”が功を奏するのか、“壊し屋”が本領を発揮するのか。少数与党転落の分かれ目となる「５４人」ラインをにらんで、政局が大きなヤマ場を迎える。

　◆離党５４人が分岐点　消費税増税関連法案は２６日午後の採決で、民・自・公などの賛成で可決、参院に送付される見通し。しかし、小沢元代表のグループが離党し、「小沢新党」が誕生した場合、今後の政局は流動的となる。

　衆院定数は４８０（欠員１）。衆院で５４人以上の離党者が出れば、民主党と国民新党を合わせた与党の議席数は２３８となり、野田政権は過半数割れの少数与党となる。その場合、内閣不信任案が提出されると与党単独で否決できず、政権運営に行き詰まることも予想される。

（2012年6月26日06時02分スポーツ報知）