'12/6/26
鞆架橋 住民の評価分かれる
「様々な住民ニーズを掘り起こした案」。25日、福山市鞆町の鞆港・埋め立て架橋計画の撤回を表明した広島県の湯崎英彦知事は、推進、反対両派の住民協議会の成果と強調した。一方で協議会に出席した住民の評価は分かれた。対案として出た山側トンネル整備には両派から慎重な意見が漏れた。
会談終了から約1時間後の午後5時。市役所で報道陣の取材に応じた鞆町内会連絡協議会の大浜憲司会長は語気を強めた。「県が住民ニーズを最も満たすというのは詭弁(きべん)だ。むしろ両派の溝は深まった」
推進派として今年1月まで協議会に約1年8カ月出席。住民の大半が計画実現を望んでいると訴える一方、山側トンネルについては「鞆の精神的支柱の神社がある山が、開発で踏みにじられる」などと懸念を示してきた。
その30分後。「景観が守られた安心感と、今後のまちづくりの不安が同居している」。やはり市役所で会見した反対派のNPO法人鞆まちづくり工房の松居秀子代表は、複雑な表情を浮かべた。
不安の背景にあるのは、事実上受け入れる形となった市が県への協力を否定し、どれほど鞆のまちづくりに力を注いでくれるかが未知数だからだ。
架橋とセットで進めてきた重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)選定の取り組みなどを市の責任で進めるよう要望。またトンネル案については「トンネルも自然破壊。本当に要るのか、今後は交通量などの客観的な調査が必要」と注文した。