NASAが海底施設で行った極限環境での訓練を初めて取材しました。
NASA(アメリカ航空宇宙局)が、火星や小惑星などへの有人探査に向けて行った極限の環境での訓練が、22日に終了しました。
日本の新人宇宙飛行士も参加したその舞台は、海の底。
訓練の様子を、日本メディアとして初めて取材しました。
アメリカ・フロリダ州の沖合、水深15メートルの海底にある研究施設「アクエリアス」は、世界でただ1つ、宇宙飛行士が宇宙滞在訓練を無重力空間に似た海底で行う施設。
航空自衛隊出身の宇宙飛行士・油井 亀美也(きみや)さん(42)は、2011年7月、ISS(国際宇宙ステーション)の搭乗員に認定され、今回、アクエリアスで小惑星の探査を想定した訓練に参加した。
宇宙飛行士の油井 亀美也さんは「プライベートな時間とか、そういうのはないんですけども、その生活も、今まで(自衛隊で)共同生活をしてきたのとあまり変わらないので、そういう面では予想の範ちゅうで。寝るのも、すごく狭い部屋で6人で一緒に寝てますし、そういう面では楽しいという感じですかね、そういう共同生活が」と話した。
油井さんら6人は、この閉ざされた空間で12日間を過ごす。
肉体的・心理的にもストレスのかかる、宇宙に近い環境で、チームワークやリーダーシップなどを向上させるのが狙い。
さらに、海の中には、小惑星に到達した際の作業を想定したさまざまな「仕掛け」がある。
海底には、やぐらのようなものが組まれていて、さらに、凹凸のついた坂がある。
これらを使って、将来、小惑星に行った時のための訓練を行っている。
無重力空間に似た海中で行われる「船外活動」は、最長5時間にも及ぶ。
体を効率よく動かすための訓練や、小惑星の岩石採取のシミュレーションなどを行う。
油井さんは「こういうミッションに参加すると、いろんなところに、遠くに行ってみたいなというふうに思います。わたしの小さいころからの夢は、やはり、小学校の卒業文集にも『火星に行きたい』と書いていたくらいなので。遠くに行きたいんですよね、知らないところに」と話した。
「アクエリアス」開発者は「この訓練で得るべきもの、のみ込みの早さを見ていると、自衛隊でのパイロットとしての経験が生きている」と話した。
22日、訓練は無事終了した。
油井さんは「大きなミッション、訓練をやり遂げたという充実感でいっぱいです。これからは、ちょっとゆっくりしたいところでもあるんですけれども、また次の訓練が始まりますので、そこで頑張っていきたいというふうに思います」と話した。
これまでに、若田光一さんや古川 聡さんら、宇宙に飛び立った先輩たちも経験してきた海底での訓練。
知識や技術に加え、精神的な強さも身につけながら、油井さんの宇宙への準備は続く。