韓国の人気ドラマ「冬のソナタ」の関連事業をしていることをうたい文句に上場予定のない未公開株を売りつけて現金13万円をだまし取ったとして、警視庁組織犯罪対策4課は25日、芸能関連会社「サムファエンターテインメント」(東京都中央区)社長、武仲哲宏社長(53)ら2人を詐欺容疑で逮捕した。同課は、同社が全国の約460人から約10億円を集めたとみており、「韓流」人気につけ込んでだまし取った金の一部が暴力団に流れた可能性もあるとみて追及する。
同課によると、武仲容疑者は「細かいことは覚えていない」と供述しているという。逮捕容疑は武仲容疑者らは08年12月、会社役員の男性(当時52歳)に「韓国ドラマの関連事業をしている」と同社を紹介した上で、「必ず上場する優良企業です。上場すれば、4〜5倍の価値になるので株を買ってほしい」と持ち掛けるなどして、現金13万円をだましとったとしている。
関係者によると、サムファ社は04年7月に設立。全国のデパートなどで「冬のソナタ」のパネルなどを展示するイベントを開催したり、韓国文化に関する情報誌の発行などを行ってきた。06〜07年にかけて資本金を1000万円から1億4000万円まで増資しており、この時期から電話勧誘で未公開株への投資を募っていたとみられる。
サムファ社は出資者に「09年に上場する」などと記した事業計画書を配っていたが、現在まで上場していない。
◇「上場すると思った」60代女性
「当時はヨン様(ぺ・ヨンジュンさん)の人気がすごかったころ。てっきり上場するものだと思ってしまった」。サムファエンターテインメント社による未公開株事件。07〜09年に同社の株を約350万円分購入したという東京都内の60代女性は「とにかく忘れたい」とため息をついた。
女性宅にサムファ社の社員から勧誘の電話がかかってきたのは07年6月ごろ。社員は「来年秋の決算後に上場を予定している。上場すれば少なくとも2倍の価値になる」と持ち掛け、「冬のソナタ」のメーキングDVDや展示用のポスターなどを女性に送付。社員の言葉を信じた女性はその後、6回にわたって現金を振り込み、株券を入手した。
だが、上場はされず、09年5月に最後の勧誘を受けた際は、女性が出資を渋ると社員の態度が急変。「あんた、虫が良すぎるんだよ」と脅され、やむを得ず8万円分を買い足した。女性はその後、弁護士を通じて損害賠償を求めたが、同社は応じていないという。
サムファ社を巡っては、株の購入者が別の未公開株も売りつけられるという2次被害も続発。名簿が流出しているとみられ、今年2月には、同社株の購入者に架空のナマコ輸出事業への出資を持ち掛けたとして、別の会社役員ら17人が警視庁に詐欺容疑で逮捕された。女性宅にも投資の勧誘電話が今も絶えないといい、「体の調子がおかしくなってしまった。どうしたらいいのか分からない」とうつむいた。