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その5
「よぉ……良く来たな黒崎よ」

担任のゴリラがとてもじゃないが、教師とは 思えないくらい露骨に怪しい笑いを浮かべて 俺の前に立つ。

「まあ落ち着いて……授業始めましょ」

「ふん……貴様ごときでは俺の授業について くきゅ!」

あ………噛んだ。

「今噛みましたよね?」

「ついて来る事すら出来ぬわぁ!!」

言い直したゴリラだが、俺がツッコミをいれ たばかりに周りの生徒がプルプル震えながら 笑いを堪えていた。

「つまらんな………」

隣の席の圭一を見ると既に爆眠している。

ゴリラ担任はえらそうにザビエルの説明をし ている。

暇なので教科書のザビエルの頭にスキンヘッ ドをつけてやっていると、それに気付きゴリ ラがキレた。

チョークが吹き飛び、ザビエルと書きたいの にザビエルぁん……となってる。

ザビエル相手に何を感じている?

「黒崎〜!ザビエルについて説明してみ ろ!」

ついに俺に牙を向いたゴリラ。

「心配するな……俺はゲイだからといってお 前を軽蔑したりしないから……フィアンセか い?」

「ぶっ……」

「クク……笑うなよ馬鹿」

周りの男子達が笑いを堪えきれず声を漏ら し、ゴリラは黒板を見てプルプル震えていた。
「峻護〜……もういいだろ?さぼろうぜ」

ぐったりとしながら圭一の奴が話し掛けてく る。

いや……お前はずっと寝てなかった?

「だな……俺も何で真面目に受けてたのか謎 でしょうがな………」

圭一の意見に賛成し、立ち上がろうとした時 美花の方をチラリと見て固まった。

「…………………」

本から目を離して、無表情でジッとこちらを 見つめている美花。

まるで身体が動かなくなる。

果たして俺を見ているのかさえ不明である が、再び席につく。

そんな感じで、昼休みまできてしまった。

「珍しいね〜!シュンシュンにケイケイが教 室にいるなんて!」

千佳の奴がダルそうにしている俺と、タレパ ンダみたいに机に貼りついた圭一を見て嬉し そうに笑いかけてきた。

「飯食うぜ峻護!学食だ!」

突如元気になり圭一が叫ぶ。

「そうだな」

「あ!私も行く」

俺と千佳も立ち上がり、圭一について学食に 行こうとした時だった。

「……………」

いつの間にか俺の後ろに周りこんでいた美 花、あやうく心臓が止まりかけた。

「ど……どうしたの?」

「………一緒に……食べよ?」

ああ……これは夢かな?とか思った瞬間だった。
場所は屋上、今俺は自分のおかれた状況が未 だに理解出来ていない。

美花は真正面にちょこんと座り、無言で弁当 を広げている。

「Aポイント、ケイケイどうぞ」

「こちらAポイント、視界良好。どうぞ?」

隠れているつもりだろうか?千佳と圭一が何 故かグラサンをかけて、コソコソ隠れながら トランシーバーで会話している。

「ねえ……何で俺なんかを誘ったの?それに 何で俺の名前知ってたの?」

ご飯の前にいきなり核心をつく質問をする 俺、気になって仕方ない。

「馬鹿!ご飯食べてからでいいじゃん!何 やってんのよ!どうぞ」

「いや……どうぞいらないよ?どうぞ」

だんだんとヒートアップしている千佳達。

「………峻護……猫さん助けてた……それ に……凄く話しやすい」

「…………見てたのか」

まだ圭一と入学式にも行かずに学ランで遊ん でいた時、大雨が降り川を流されていた猫を 飛び込んで助けたのを思い出した。

まさか……そんなアホなシーンを見られてい たとは。

「ああ!風月のことだ!今峻護の家にいる、 どうぞ!」

「少し黙ってな!どうぞ!」

「……………」

思い出した圭一を一喝、落ち込んで喋らなくなった。

「……………」

「学生手帳、美花ちゃんが拾ってたのか」

雨の日学ランを投げ捨てて、川に飛び込んだ 時無くしたと思っていた手帳を美花が渡して きた。

だから、俺の名前知っていたのか。

「ご飯………食べよ?」

弁当のタマゴ焼きをとり、こちらに無言で差 し出してくる。

ん?………これはア〜ンて奴か?

「…………上手い」

顔が赤くなってるのは自分でも分かるが、口 の中に運んでもらい食べた。

ヤバい……今人生で一番幸せかもしれない。

「ふぉ〜!ふぉ〜!」

「Aポイント落ち着きなさい!どうぞ!」

何故か壊れている二人のスパイ。

「……………良かった」

猫のヌイグルミをギュッと抱き締めて、安心 した表情で美花が呟いた。

「…………食べて」

「う………うん」

それから俺達は幸せな昼食タイムを過ごし た。

つまらない日常の繰り返し、その時俺の中で それが終わりを告げた気がした。

そして始まった、あの三年間が………

美花と一緒に過ごした学園生活。

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