その2
誰が話し掛けても全員撃沈していったので、 黙って見ているという形式に変わっていた。
「可愛いよな~」
「ギュ~ってしたいよな」
どうやら外から見ているだけで幸せなよう だ。
すると、一人の男子が美花に近付いていき肩 を組んだ。
「美花ちゃん可愛いよね~何読んでるの?」
そんなにカッコよくない男子がニコリと笑い なれなれしく肩を組んだまま話し掛けてい る。
美花は無表情だが押し退けようと軽く動いた のが見えた。
嫌がっているのだろう、まあそうだろうな。
「ちょっと美花ちゃんに触らないでよ!」
「美花さん逃げて!」
周りの女子達もそれに気付いてキャーキャー 叫ぶが聞こえていないのだろうか?
「おい、止めといてやれ」
「ああ?」
俺がそう言うと男子が顔をあげて、不機嫌そ うに見てくる。
目が合い、無言で生徒を睨みつける。
しばらく睨んでいると、チッと舌打ちして 去って行った。
「カッコいいねー!峻護!」
「うるさい」
圭一の奴が茶化してくるが、周りの奴等は何 かジッとこちらを見ていた。
「峻護、次の時間ダルいからさぼろうぜ」
圭一が立ち上がり、俺の後ろを通過して行っ た。
「ああ………」
顔をあげて立ち上がり圭一について行こうと した時、美花が無表情で目の前にいた。
小柄で人形みたいな美少女に目が釘付けにな る。
「………ありが……とう」
そう口にして席に戻って行き、再び読書を始 めた美花。
「……………」
生まれて初めてあんなにまっすぐな瞳で、人 に見られた気がした。
俺が動けなくなっているのと同時に、周りの 生徒達も驚きの表情でこちらを見ていた。
そのはずである、今まで美花が話し掛ける男 子など見た事がなかったからだ。
「お~い!何してんだよ?さっさと行かない と授業始まってしまうぞ!」
状況を分かっていない圭一が、堂々とさぼろ うぜ宣言している。
「あ、ああ」
俺もいきなりの事で動揺してしまい、何とか 圭一の声に反応してついて行く。
「なあ圭一、美花ちゃんだっけ?可愛い声し てるな」
「はぁ?お前美花ちゃんの声なんて誰も聞い た事ねえぞ?寝ぼけてんの?」
俺がそう言うと顔を近付けてきて、何故かキ レている圭一。
駄目だ、日本語通じないと思った俺は黙って 歩き出した。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。