2012.6.25 05:04

どさくさ救急隊員、搬送患者の3万円盗む

 119番通報でかけつけた救急搬送現場で、患者を運ぶ前にまず真っ先に現金を盗んだとして、京都府警下鴨署は24日、窃盗の現行犯で大阪市旭区の消防士長、向井嘉浩(むかい・よしひろ)容疑者(51)を逮捕した。高齢男性を救急搬送する際、男性が病院に持っていこうとしたポーチの中の1万円札×3枚=3万円を抜き取り、ズボンのポケットに入れていたという。

 いったい、ナニしに来たのか分からない。救急車に乗り、人命救助のために現れた“正義の味方”は約15分後、容疑者としてパトカーに乗せられ、警察署に“搬送”されてしまった。

 下鴨署によると、向井容疑者は京都市消防局、左京消防署岩倉出張所の救急隊に所属。24日午前6時半ごろ、京都市左京区の無職男性(85)から「家の中で転んだ」という119番通報があり、救急車で現場に向かった。

 現場から男性を搬送する際、男性から「洗面所に置いてある薬手帳をポーチに入れて持ってきてください」と頼まれ、ポーチを開けたところ、そこには黒革2つ折りの財布があった。

 誘惑に負けたのか、生活に救急…いや、窮々としていたのか、向井容疑者は、財布の中の現金3万円を抜き取り、ズボンの右ポケットにねじ込んだ。しかし、急報で駆け付けた、近所に住む男性の長女がこの“決定的瞬間”を目撃。119番通報と連動で男性宅に来ていた下鴨署員に報告、その場で現行犯逮捕された。

 「ポケットに入っている手を出してみろ!!」と下鴨署員に突っ込まれた向井容疑者は、手を“グー”の状態で差し出した。「その手を開いてみろ!!」とさらに突っこまれると、素直に“パー”の状態にしたが、そこには握りつぶされた1万円札が3枚あったという。向井容疑者の消防士人生も“パー”になった瞬間だった。

 向井容疑者が逮捕されたことで、救急隊では男性の搬送ができなくなり、他の消防署から出動した救急車が“代行”したという。幸い、男性の容態に大事はなかった。

 京都市消防局は24日、サンケイスポーツの取材に「向井容疑者は1985年4月採用、勤続27年3カ月の大ベテラン。勤務態度は至って真面目だったと聞いています」とショックを受けた様子。同消防局の荒木俊晴総務部長(54)も「早急に事実関係を確認し、厳正な処分を行って参ります」などとコメントした。

(紙面から)