Pantha's Labyrinth
食物に含まれるカルシウムとリン、シュウ酸
 
 甲殻類の堅い外殻は、多糖類であるキチン質、たんぱく質の複合体からなる有機物の基質に無機結晶の炭酸カルシウムが沈着したものです。陸生の強い甲殻類は、この外殻で体を支え、乾燥から身を守っています。甲殻類にはできる限り、カルシウムを与える必要があります。
 甲殻類の餌にする食物の多くにはカルシウムが含まれていますが、同時にリンやシュウ(蓚)酸が含まれるものも多く、リン、シュウ酸は、カルシウムと結合しカルシウムの吸収を妨げると言われています。
 以下は食物に含まれるカルシウム、リン及びシュウ酸の量です。生き物の好みもありますが、総量でリン、シュウ酸よりもカルシウムを多く取れるように考え、かつ「カルシウム補助餌」により十分摂取させる必要があります。
  • 成分は作物の栽培状況によりかなり変異するものであり、このデータがすべてではありません。
  • リンは、リン含量÷カルシウム含量が2〜3以上のものが、カルシウムの吸収を妨げると言われています。
  • シュウ酸は、シュウ酸含量÷カルシウム含量が2以上のものが、カルシウムの吸収を妨げると言われています。
  • シュウ酸は、水溶性のため茹でるとかなり少なくなりますが、生き物には、普通「生」で与えると思いますので、「生」のデータを掲載しています。

Good:カルシウム・リン比が、2:1以上でシュウ酸の低いもの。
薄緑色:リン、シュウ酸よりもカルシウムが多いもの。大差ないもの。
黄色:薄緑色、桃色以外のもの。
桃色:カルシウムよりも、リン又はシュウ酸が2倍以上のもの。(こればかり与えると問題を起こす可能性が高いもの。)

名称 カルシウム量(mg/100g) リン量(mg/100g) シュウ酸量(mg/100g) 備考
植物質・野菜
Good
カブ(葉)
250 42 67(*3) リン、シュウ酸とも少なく、カルシウムが多い。
カブ(根) 24 28 (*2) 地上部に比べカルシウム量は少ない。
Good
小松菜(葉)
170 45 51(*3) リン、シュウ酸とも少なく、カルシウムが多い。
Good
ダイコン(葉)
260 52 45(*3) リン、シュウ酸とも少なく、カルシウムが多い。
ダイコン(根) 24 18 (*2) 地上部に比べカルシウム量は少ない。
Good
チンゲンサイ(葉)
100 27 95(*3) リン、シュウ酸とも少なく、カルシウムが多い。
Good
京菜(葉)
210 64 リン、シュウ酸とも少なく、カルシウムが多い。
白菜(葉) 43 33 カルシウム量は少ない。
カリフラワー(葉) 24 64 279(*3)
(*4)
リン多く、カルシウムの吸収を阻害する。
シュウ酸については、まったく違った報告がありはっきりしない。
ブロッコリー(花) 38 89 310(*3) リン多く、カルシウムの吸収を阻害する。
キャベツ(葉) 43 27 470(*3)
(*4)
シュウ酸については、まったく違った報告がありはっきりしない。
Good
ケール(葉)
220 45 少とされる リン少なく、カルシウムが多いので理想的。ただし、自家栽培以外では入手は難しい。
ホウレンソウ(葉)
49 47 773(*3) シュウ酸が多く、カルシウムの吸収を阻害する。
Good
ニンジン(葉)
92 52
ニンジン(根) 28 25 (*4) 地上部に比べカルシウム量は少ない。
レタス(葉) 19 22 5〜20(*5) カルシウム量は少ない。
サラダ菜(葉) 56 49 (*2)
Good
サニーレタス(葉)
66 31
キュウリ(実) 26 36 (*2) カルシウム量は少ない。
かぼちゃ(実) 20 42 0〜22(*4) リン多く、カルシウムの吸収を阻害する。
サツマイモ(根) 40 46 103(*2) シュウ酸が多く、カルシウムの吸収を阻害する。
じゃがいも(根) 40 42(*2) カルシウム量は少ない。
Good
モロヘイヤ(葉)
260 110 163(*3) リン、シュウ酸とも少なく、カルシウムが多い。
ただし、茎と種子に毒あり注意。
植物質・くだもの
メロン(実) 13 カルシウム量は少ない。
水分と糖分がほとんど。
りんご(実) 10 0〜15(*5) カルシウム量は少ない。
水分と糖分がほとんど。
ナシ(実) 11 5〜15(*4,*5) カルシウム量は少ない。
水分と糖分がほとんど。
パイナップル(実) 10
Good
パパイヤ(完熟実)
20 11
マンゴー(実) 15 12
植物質・その他
枝豆(生) 58 170 360 リン、シュウ酸とも多く、カルシウムの吸収を阻害する。
ごはん(精白米) 34
Good
サボテン
(ウチワサボテン)(*3)
195 78 リン、シュウ酸とも少なく、カルシウムが多い。
Good
サボテン
(USDA)(*6)
164 16 サボテンは、日本では食品になっていないので、USDAのデータを記載。
植物質・海藻
Good
わかめ(素干、水戻し)
130 47 カルシウムが多く優れている。
添加物に注意。
なお、湯通し塩蔵したわかめはカルシウムが極端に少なくなる。
Good
ひじき(ほしひじき)
1400 100 カルシウムが多く優れている。
添加物に注意。
Good
あおのり(素干)
720 380
Good
まこんぶ(素干)
710 200 カルシウムが多く優れている。
添加物に注意。
動物質
Good
煮干(かたくちいわし)
2200 1500 普通の煮干。
添加物に注意。
煮干(いかなご) 740 1200 リン多く、カルシウムの吸収を阻害する。
添加物に注意。
しらす干し 520 860 リン多く、カルシウムの吸収を阻害する。
添加物に注意。
Good
さくらえび(素干し)
2000 1200 添加物に注意。
Good
干しえび
7100 990 添加物に注意。
あさり(生) 66 85
加工品類
魚肉ソーセージ 100 200 リン多く、カルシウムの吸収を阻害する。
添加物に注意。
脂質がかなり多く、かまぼこの約7倍。
蒸しかまぼこ 25 60 「蒸しかまぼこ」とは、普通の板付きのかまぼこのこと。
リン多く、カルシウムの吸収を阻害する。
添加物に注意。
かに風味かまぼこ 120 77 「かにかま」のこと。
添加物に注意。
プロセスチーズ 630 730 添加物に注意。
ナチュラルチーズ/エダム 660 470
ナチュラルチーズ/カテージ 55 130 リンが多く、カルシウムの吸収を阻害する。
ナチュラルチーズ/ゴーダ 680 490
ナチュラルチーズ/パルメザン 1300 850
菓子類
アーモンド(フライ) 210 480 リンが多く、カルシウムの吸収を阻害する。
添加物注意。
ピーナッツ(いり)
50 390 リンが極度に多く、カルシウムの吸収を阻害する。
添加物多し。
ポップコーン
290 リンが極度に多く、カルシウムの吸収を阻害する。
添加物多し。
ポテトチップス
17 100 リンが極度多く、カルシウムの吸収を阻害する。
添加物多し。
Good
ハードビスケット
330 96 乳幼児用としてカルシウム、ビタミン等添加。

*1 一般の食物のカルシウム、リンについては、出典;五訂増補 日本食品標準成分表、食品成分データベース
*2 出典;中村経子:栄養と食糧(1974)
*3 出典;宮田氏(松山東雲学園)
*4 出典;K.Hermann,1972、農業技術大系
*5 出典;草間正夫・他:栄養学雑誌(1963)
*6 出典;アメリカ合衆国農務省(USDA)食品成分データベース


 
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