※ネタバレあり
アメコミの傑作、バットマン・シリーズから映画化された「ダークナイト」。
アメコミにはなじみがないという方も多いと思います。そこで、文章でダークナイトを読めるように、最初から結末まであらすじを書きました。
完全にネタバレしていますので、未見の方はご注意ください。
Presented by WARNER BROS. PICTURES.
あらすじの後に「ダークナイト」について詳しく解説をしていきます。
解説だけ読みたい方、お付き合いいただける方はこちらのページへどうぞ。このページは最初から最後まであらすじのみです。(解説は本日中にアップします。もう少々お待ちください…)
なお、あらすじ中で解説できる部分はあらすじ中で解説しました。文章の都合上、時系列など、ストーリー・あらすじの流れはこちらで再構成しています。
【映画データ】
2008年・アメリカ
「ダークナイト」
監督 クリストファー・ノーラン
出演 クリスチャン・ベール,ヒース・レジャー,アーロン・エッカート,マギー・ギレンホール,モーガン・フリーマン,ゲイリー・オールドマン,マイケル・ケイン,キリアン・マーフィ,エリック・ロバーツ
PRESENTED BY WARNER BROS.PICTURES
★ダークナイト あらすじ
高層ビルの立ち並ぶ、ゴッサム・シティの街かどに集まってきたピエロのマスクの男たち。
白昼堂々、彼らは銀行を襲撃しようとしていた。
銀行の屋上から、正面ドアからと次々に侵入し、あっという間に銀行内を制圧する。
手際良く金庫が開けられ、警報が解除された。
しかし、その警報の通報先が警察ではないことに気がついた一味の男。相棒はあっさり仲間を射殺した。
皆がジョーカーというボスから指令をうけていたのだ。「用済みは殺せ」。
金庫を開けた仲間はその場で射殺、銀行内に突入させた脱出用のスクールバスに金を運んだ仲間もそれが終われば射殺。
あっという間に銀行内には死体が転がり、静寂が漂う。
たった一人残った男はゆっくりとピエロの仮面を脱いだ。
仮面の下にあったのは、同じくピエロの顔。その男の顔は白く塗られ、眼もとは黒く太く縁取られている。そして、広く裂けたように描かれた赤い口。三日月形に描かれたその口のせいか、彼は笑っているように見えた。
金を積み込ませたスクールバスで逃走しようとする男。その男こそが、ジョーカーだった。
そこに、さっき仲間が射殺したはずの銀行の支店長が声を上げる。
彼はジョーカーに銀行のカネがマフィアのカネであることを警告したのだ。
ジョーカーは笑って警告を聞き流し、彼の口に手りゅう弾を詰め込んでその場を立ち去るのだった。
ある立体駐車場の一角。今まさにドラッグの取引が行われようとしているところだった。
仲間を引き連れた売人と、ボロを被り、顔を隠した仲買人が、「前回の取引で受け取った麻薬の質が悪すぎる」と交渉している。
すると売人の目に車の陰に潜む黒い人影が映った。
「もしや、バットマンか? ! 」彼らが一瞬ひるんだすきに、黒ずくめのバットマンのかっこうをした男たちが飛びかかってきた。銃を連射し、売人たちが次々と射殺されていく。
そこに、改造したスポーツカーのような、真っ黒な車が突如として現われた。バットモービルだ。
唖然とする男たち。皆が凍りついたその瞬間、バットモービルがミサイルを発射し、駐車場の一隅が大爆発を起こした。
そして、その後に現われたのは、ひときわ上背のある体格のいい黒マントの男。彼こそがバットマンだった。
バットマンのふりをしていた男たちは逃げ出し、違法ドラッグの取引をしていた男たちはバットマンに叩きのめされていく。
車で逃げようとした男はいったん、バットマンを振り落として立体駐車場を抜け出そうとしたものの、数十メートル下まで男の車めがけて飛び降りたバットマンにより、捕えられた。
ホッケーの防具を付けた偽バットマンの男は「自分たちもバットマンを助けたかったんだ」と言い訳したが、バットマンは「助けなど要らない」そう言い残して去っていくのだった。
一方、ゴッサム・シティの市警本部。ジム・ゴードン警部補は部下のワーツ刑事とラミレス刑事とともにバットマンについて話しているところだった。
バットマンは市民から無法者として指弾されており、ゴッサム・シティの治安を乱すものとして逮捕を望む声が連日のようにニュースで報道されていたのだ。
その後、ゴードン警部補は地下の証拠の保管庫に降りていく。
鉄格子で仕切られたその室内でふと彼が横を向くと、そこにはバットマンの姿があった。
ゴードン警部補は驚きもせず、彼に証拠品である印付きの紙幣を見せる。
実はゴードン警部補はバットマンの理解者で、マフィアのマネーロンダリングの捜査協力をしているのだった。
ゴードン警部補によると、この特別にあつらえた印付き紙幣が見つかったのは5行目だという。
つまり、5行もの銀行がマネーロンダリングに関与している疑いがあったのだ。
さらに、ゴードン警部補は防犯ビデオにわざわざ顔を映し、こちらを見ているピエロの化粧をした男"ジョーカー"の映像を見せた。
そして、ゴードン警部補は新任検事が着任したことをバットマンに告げ、新任検事に働きかけて、彼をマネーロンダリングの捜査に協力させるという。
一方、ゴッサム・シティの地方検事局には、くだんの新任検事ハーヴェイ・デントが着任していた。
若く、正義への気概にあふれた彼は、ゴッサム・シティの治安を回復し、無秩序な世界を変えるためのエネルギーを持つ男だった。
現在、デントはマフィアの根絶に向けて精力的な捜査と立件・公判を重ねており、それを支えているのは地方検事補で、恋人でもあるレイチェル・ワイズだった。
今日は、マフィアの幹部マローニの裁判がある日だ。
レイチェルは開廷ギリギリにやっと現われたハーヴェイ・デントを待ちうけていた。
デントは「今日の公判をどちらが担当するか決めよう」とコインをひょいと投げ上げて見せる。
「コインの裏表で私とのデートも決めたの?」というレイチェルに「いや、それは自分で引き寄せたんだ」というデント。
デントのコインは父親から受け継いだ幸運のコインなのだという。
公判が始まってみると、検察側証人だったはずの男が、マフィアのボスに昇格したマローニを目の前にして見事にデント検事を裏切った。
そればかりか、デントを射殺しようと拳銃を取り出したのだ。
デントはそれをかわして男を取り押さえたが、これで公判を維持してマローニに対する有罪判決を得ることはできなくなってしまった。
レイチェルは午後にデートに行こうとデントを誘うが、残念ながらデントにはゴードン警部補と面会の約束があった。
デントが検事室に戻ると、ゴードン警部補がやってきて、マフィアのマネーロンダリングについて話し出す。
ゴードンはバットマンについて「ならず者の自警市民」と批判してみせるが、ハーヴェイ・デントはジム・ゴードンの芝居には騙されなかった。
デントはゴードンとバットマンとの協力関係を察し、バットマンに肯定的な態度を取って見せる。
そして、デントは銀行への捜査令状は出すし、マネーロンダリングの捜査には積極的に協力するとジム・ゴードンに約束した。
一方で、デントはジム・ゴードンに警察内部の汚職を一掃するように努力すべきだと要求した。
マフィアから金をもらっている警察官の数があまりに多く、汚職の状況は深刻で、捜査に支障も出かねないというのだ。
ハーヴェイ・デントの要求にゴードン警部補は口をにごした。
ゴッサム・シティ中心地に自社ビルを構えるウェイン・エンタープライズ。
今日はラウ・ファンド社との合弁事業の是非を論じるべく、ラウ社長自らがウェイン・エンタープライズの社長・会長以下幹部の面々にプレゼンテーションをしていた。
プレゼンテーションが終わり、ルーシャス・フォックスはウェイン社社長としてラウ社長に礼を述べるが、ブルース・ウェイン会長は会議の末席で眠りこけている。
フォックス社長は「会長は徹夜で寝ていないのでしょう」と言い訳し、会計士のリースとともにエレベーターホールまでラウ社長を見送ったものの、リースにウェインの態度をなじられる始末だった。
リースにラウ社の財務内容の見直しを指示した後、フォックスはブルース・ウェイン会長にラウ社の年率8%の固定的な成長には裏帳簿があるはずだと報告する。
ウェイン会長はあっさり合弁事業計画の取消しを指示。
そしてフォックスにある図面を渡す。それはバットモービルの改良案だった。
ブルース・ウェインこそバットマンその人であり、ルーシャス・フォックスはその理解者だったのだ。
その夜、レイチェルは恋人のハーヴェイ・デントが予約した有名レストランでディナーを楽しんでいた。
そこに現れたのはブルース・ウェイン。
ボリショイ・バレエ団の美人のプリマ(主役を踊るバレリーナ)を同伴し、2人のテーブルに近づき、声をかけてくる。
席をあわせて4人で話をするうちにバットマンの話題に。
プリマはバットマンに批判的だが、ハーヴェイ・デントはバットマンの活躍について、悪がはびこるうちはバットマンが必要なんだ、と言いきった。
ブルース・ウェインはその議論を黙って聞いていたが、ハーヴェイ・デントに資金集めのパーティを開くことを約束した。
ブルース・ウェインの人脈と資金力をもって、ハーヴェイ・デントの地方検事への当選を確実にしてやるというのだ。
倉庫のような薄暗い場所にマフィアの面々が顔をそろえていた。
彼らは銀行に預けていた組織の資金を強奪にあったうえ、マネーロンダリングの捜査の手が及んできており、資金繰りに窮していたのだ。
目に見えない印のついた紙幣が発端で警察の捜査が無視できなくなってきたのだが、そういう特殊な紙幣を作るカネも技術も市警にはなく、紙幣がバットマンの差し金だということにマフィアは気づいていた。
彼らはバットマンに対する防衛策を話し合うために集まってきていたのだ。
その相談を中継で受けていたのはウェイン・エンタープライズに投資を持ちかけていたラウ社長だった。
テレビに映るラウ社長はマフィアに金を自分に預けるようにもちかけていた。彼が投資をして増やしてやるというのだ。
マフィアとラウ社長が相談に集中していたとき、1人の招かれざる客がやってきた。
白い顔に裂けたような赤い口。ジョーカーだった。
ジョーカーは彼を止めようとしたひとりのマフィアを殴り殺し、テーブルに着いた。
そして、中国人は必ず裏切るぞ、とマフィアを脅し、資金の半分と引換えにバットマンを殺してやると持ちかけるのだった。
マフィアの男が「ジョーカー殺害に懸賞金を賭けている」と言いながら、ジョーカーをけん制しようとするとジョーカーは紫色のコートの下にびっしりとぶら下がった手りゅう弾を見せびらかした。
そして、「気が変わったら電話してくれ」と番号を書いた紙を残し、後ずさりしながら部屋を出ていくのだった。
ある日の深夜。とあるビルの屋上に集まったデント検事とゴードン警部補、そしてバットマン。
彼らはラウ社長が香港に逃亡してしまったことの対策を話し合っていた。
デントもゴードンも地方検事局か市警本部かどちらかから情報漏れがあったはずだと主張して対立していたのだ。
結局、ラウ社長が香港に逃げた以上、中国政府は引き渡すはずがないという点では、意見が一致した。
バットマンはラウ社長を拉致してゴッサム・シティに連れ戻すことを引き受け、その場から消えるのだった。
翌日、フォックス社長は「合弁事業申し出の拒否をラウ社長に直接伝えに香港に行け」とブルース・ウェイン会長から言い渡される。
電話でもいいのでは? というフォックスにウェインは含みを持たせ、フォックスは暗黙のうちにウェインの指示の趣旨を了解するのだった。
そして、ルーシャス・フォックスはブルース・ウェインに新しいバットスーツを見せる。
軽量化した分、ナイフや銃弾には弱いが、動きやすいという。
翌日、ハーヴェイ・デントとレイチェル・ワイズがボリショイ・バレエ団の公演にやってくると、何と公演は中止になっており、『億万長者がボリショイ・バレエ団を引き連れてボートでバカンスに』との見出しの新聞が代わりに貼ってある。
その通り、ブルース・ウェインがバットマンとして仕事をする間、執事のアルフレッド・ペニーワースに用意させたアリバイは洋上ボートのバカンスだった。
ブルースはクルーズを楽しみながら航行し、途中で水上に着水した飛行機で香港へ。
あらかじめルーシャス・フォックスはラウ・ファンド社に赴き、ラウ社長と面会して社屋のデータを取ってきた。
このデータを使えばバットマンがスムーズに侵入することができるのだ。
その夜、バットマンはラウ・ファンド社に侵入。さらに、社屋の一部を爆破し、ラウを拉致。
そこに飛来した飛行機から出されたロープに捕まり、バットマンはラウ社長を抱えたまま、社屋の爆破口から脱出に成功した。
ゴッサム・シティの市警本部前。
ラウ社長は”ゴードン警部補まで配達”と書かれたメモを付けられて放置されていた。
ラウ社長を尋問している様子をみていたハーヴェイ・デントは、組織犯罪関連で立件できると踏む。
RICO法の適用があれば、組織犯罪として芋づる式にマフィアを検挙できるというのだ。
ジム・ゴードン警部補は安全のため、刑務所ではなく、市警本部に留置することをハーヴェイ・デントに主張した。
デントは刑務所より市警本部が安全といえるかどうか、懐疑的だったが、結局は留置所にいれることになった。
ラウ社長逮捕のニュースはゴッサム・シティのマフィアたちを慄然とさせた。
彼がカネの流通経路をしゃべれば、たださえガタがきているマフィアの資金網が壊滅的被害をこうむりかねない。
もはや、バットマンをこれ以上のさばらせておくわけにはいかない。
マフィアの中枢部はジョーカーを雇ってバットマンと決着をつけるということで意見が一致していた。
ハーヴェイ・デントはマフィアを一斉検挙した。
549人を捕え、サリロ判事の許可を得て一気に裁判にかけたのだ。
ゴッサム・シティの市長は「乱暴すぎる」とハーヴェイ・デントに注意するが、デントは意に介さない。
549人を一気に裁けば、「18か月は平和になる」し、「ボスは大金を積んで保釈されるだろうが、幹部クラスはカネがないから司法取引に応じて口を割るはずだ」というのだ。
市長は「確かに君は市民から支持され、再選が確実になるだろうが、報復を恐れるべきだ」と忠告する。
デントに背を向け、窓際に立った市長は驚愕した。
突然上から死体が降ってきたのだ。死体はロープで吊るされ、ピエロの化粧をし、バットマンの服を着ていた。
ブルースはゴッサム・シティ市内に構える秘密の隠れ家でアルフレッドにハーヴェイ・デントの資金集めパーティを開くことを伝える。
と、そこにテレビからジョーカーのメッセージが流れてきた。ひどく揺れる画面だが、そこにはやはりジョーカーが映っている。
そして、バットマンのかっこうをした男。"ブライアン"とジョーカーに呼ばれているその男はどうやら、バットマンの真似をしていた一般市民のようだ。
ジョーカーは「バットマンがマスクを取って正体を見せるまで毎日市民一人を殺してやる」、と宣言し、男を殺すのだった。
ハーヴェイ・デントとレイチェル・ワイズはブルース・ウェインが主催するハーヴェイ・デントの資金集めパーティにやってきていた。
ゴッサム・シティのセレブが集まる華やかなムードのパーティだ。
ゴッサム・シティ中心部にある高層階のペントハウス。
ガラス張りの会場ではシャンパンや料理が振舞われ、お洒落に着飾った男女が談笑している。
ハーヴェイ・デントはパーティのムードに少し気後れしている様子。
ブルースの姿が見えないとデントが思ったそのとき、ものすごいルーター音とともに、ガラスの向こうにヘリが見えた。
今夜のパーティのホスト、ブルース・ウェインは何とヘリでご登場だ。両脇に美女を従え、堂々とした足取りでパーティ会場に姿を見せる。
そして、彼はレイチェル・ワイズが自分の幼なじみの女性であると紹介した後、ハーヴェイ・デントを「ゴッサム・シティの希望の星」である新任地方検事として招待客に紹介するのだった。
テラスにいるブルース・ウェインのもとにレイチェル・ワイズがやってくる。
ブルースはレイチェルに、デントは「マスクをつけずに一網打尽にできる」「素顔のヒーロー」だと言うのだった。
一方、ジム・ゴードン警部補はブライアンの死体を捜査していた。
そこで、部下のラミレス刑事から報告が入る。ジョーカーが死体に残したカードから3人のDNAが検出されたというのだ。
1人はサリロ判事、もう1人は市警本部長のローブ、残る1人はデント検事だった。
「これはジョーカーの殺害予告に違いない」。すぐさまゴードン警部補は3人の保護命令を出した。
サリロ判事は自宅にいた。警護に駆け付けた刑事から他の場所への避難を要請され、避難先の住所が書いてあるという封筒を手渡された。
中を開けると"UP!"という文字が。途端に爆発、車は炎上してしまう。
さらに、ゴードン警部補は自らローブ市警本部長のもとに出向き、避難を要請した。
しかし、市警本部長がそのときに飲んでいた酒に毒が。
ゴードン警部補の目の前でローブ市警本部長は毒殺されてしまった。
標的のうち2人が殺され、残る一人はハーヴェイ・デントのみ。
ゴードン警部補の連絡を受けたブルースはデントをペントハウスの奥にある安全な部屋に避難させる。
その間に、パーティ会場に姿を見せたのは何とジョーカーその人だった。
招待客が怯えて遠巻きに見守る中、客の間を動き回り、銃を突き付けてデントの居場所を聞き出そうとし始めた。
そのうち、ジョーカーは白髪の男性に目をとめた。
父親に似ていると言いながらナイフで彼を脅しているとき、レイチェルが名乗り出た。
彼女がハーヴェイ・デントの恋人であることに気がついたジョーカーはレイチェルの顔を掴み、ナイフを押しあてながら引きまわす。
そこにバットマンが現われ、ジョーカーと一騎打ちとなる。
しかし、ジョーカーはガラス張りの壁を銃撃して破り、レイチェルを外に放り投げてしまった。
高層ビルの最上階から一気に落下するレイチェル。
彼女を追いかけて飛び降りたバットマンはすんでのところで彼女を守った。
レイチェルはハーヴェイ・デントの安否をたずね、「ありがとう」というのだった。
ウェイン・エンタープライズでは会計士のリースがルーシャス・フォックス社長に会計について報告に来ていた。
ラウ・ファンド社との取引を調べる過程で、ウェイン・エンタープライズの不明朗な会計支出が判明したというのだ。
それはルーシャス・フォックスが多額の資金をつぎ込んで、バットモービルの製作をしているという事実だった。
リースは年間1千万ドルを口止め料として要求したが、「皆のために戦うヒーローから金をむしり取るのか」、とルーシャス・フォックスはリースの要求をきっぱり拒絶した。
ゴッサム・シティ市内のアパートの一室にジム・ゴードン警部補が入ってきた。
中では2人の男が死んでいる。ジョーカーの仕業だった。机に乗っている酒瓶の下には新聞記事が置いてある。
ゴードン警部補が酒瓶を取り上げると、その下にある新聞記事の写真が目に飛び込んできた。
ゴッサム・シティの市長だ。
市長の顔は白く塗られ、ジョーカーの化粧をされている。
ジョーカーの次の標的はゴッサム・シティの市長だった。
今日はローブ市警本部長の葬式の日。ゴッサム・シティ警察を挙げての葬式になる。
儀仗兵がつき、ローブ市警本部長の棺が市内のメインストリートをゆっくりと進んだ。
そして、式典では弔辞をゴッサム・シティ市長が読むことになっていた。
ブルースはあらかじめ、アルフレッドに指示して市長を狙撃可能な位置を割り出し、4か所に絞らせていた。
そのうち、もっとも確率の高いのは精神病者の住人メルヴィン・ホワイトが住んでいるアパートの一室だという。
その部屋にブルース・ウェインがバイクで急行すると、中には下着姿にされた男たちが柱に縛り付けられていた。
彼らによると制服も拳銃も奪われたというのだ。
一方、葬式の式典は順調に進行していた。市長がステージに立って弔辞を読み終えたところだ。
儀仗兵に号令がかかり、儀仗兵が1度目の弔砲を撃つ。2度目の弔砲が撃たれようとしたそのとき、儀仗兵の全ての筒先が壇上の市長に向けられ、発砲された。
儀仗兵はジョーカーとその仲間だったのだ。
しかし、市長は無事だった。
一瞬早くゴードンが市長をかばって押し倒していたのだ。被弾したのか、倒れて動かないのはジム・ゴードンだった。
儀仗兵の1度目の弔砲が撃たれたちょうどそのとき、ブルース・ウェインは部屋の隅に置いてあった望遠鏡で式典をのぞこうとしていた。
しかし、その望遠鏡には仕掛けがあったのだ。
ブルースが望遠鏡に触ったとたん、仕掛けられた糸に引っ張られた窓のシェードが急に上がった。
そのとき、儀仗兵の2度目の弔砲が市長に向けて発射される。その発砲音にまぎれて警備に当たっていた警察官がブルースを狙撃。
ブルースは素早く伏せたが、危うく撃たれるところだった。ブルースを狙撃した警察官はジョーカーの仲間か、買収されていたのだ。
その夜、ダンスクラブで女と遊ぶマフィアのボス・マローニのところにバットマンがやってきた。
マローニの部下を叩きのめして彼を非常階段に連れ出し、2階から地上へと突き落とす。
マローニは痛さにわめくが、それでもマローニは、バットマンに「ジョーカーのことを売る奴など誰もいないし、ジョーカーのことは何もしゃべらない」というのだった。
一方、ハーヴェイ・デントも追い詰められていた。
ゴードンが殺されたいま、レイチェルも危ない。
市警本部で仕事中のレイチェルに電話すると、レイチェルは「ブルースのペントハウスが一番安全だからそこに避難する」という。
ブルースが踏み込んだ部屋の住人メルヴィン・ホワイトは儀仗兵の1人になりすましていた。
ジョーカーの仲間に違いないと踏んだハーヴェイ・デントは銃を突きつけて尋問するが、ホワイトはにやにや笑うだけで何も話そうとしない。
コインの裏表で撃つかどうか決めてやるとデントが言い、危うく撃つかと思われたとき、バットマンが現われた。
バットマンはデントを制止し、「ハーヴェイ・デントにはゴッサム・シティの"希望"でいてほしい」と言う。
そして、バットマンは、明日記者会見を開くようにデントに頼み、「ゴッサム・シティは君に託す」とデントに告げるのだった。
バットマンはこれ以上の市民の犠牲を防ぐため、ジョーカーの要求通り、マスクを脱ぐ決意をしたのだ。
その日、ペントハウスに戻ったブルースは避難していたレイチェルと会う。
「バットマンのマスクを脱いだら僕と結婚する、そうかつて君は言っていたけど、本気だったか?」とたずねるブルースに、レイチェルは「そうよ」と応えた。
2人は熱いキスを交わす。
しかし、レイチェルはこうも告げる。「正体を明かせば結婚なんて夢よ」。
しかし、ブルースの決意は固かった。彼は、「正体を明かすのはゴッサム・シティー市民へのせめてもの償いだ」と思っていたのだ。
翌朝の記者会見。ハーヴェイ・デントは集まったたくさんの記者と市民を前にバットマンの正体を明かすことを宣言した。
その時にそなえて、ブルース・ウェインも記者会見場の端に姿を見せていた。デントを見つめるブルース。
デントは躊躇していた。
「本当にバットマンの正体を明かすべきか、もう一度考えるべきだ」と記者会見で主張したのだ。
しかし、これ以上のジョーカーの殺人には耐えられないと批判され、バットマンがマスクを脱ぐべきとの声が上がり、バットマンの正体を明かさずにはいられない雰囲気が漂っていた。
仕方なく、デントは説得をあきらめ、バットマンの正体を明らかにすることにする。
「バットマンは私だ。」
たちまちデントの立つ壇上には警官が群がった。警官たちはハーヴェイ・デントに手錠をはめ、連行していく。ブルースは黙ってその様子を見ていた。
アルフレッドのもとを訪れたレイチェルはブルースがデントが逮捕されたときに黙ってそれを見ていたことを非難する。
しかし、アルフレッドは「全て市民を守るためでした」といってブルースをかばうのだった。
「彼の理解者なのね」。
そういって、レイチェルはため息をつき、白い封筒に入った一通の手紙をアルフレッドに渡した。
「そのときがきたらブルースに渡して」。
アルフレッドが"そのとき"とはいつのことなのか尋ねると、「内容を見ればわかるわ」という答え。
「さよなら」。レイチェルはそういって出て行った。
バットマンとして逮捕されたハーヴェイ・デントはジョーカーをおびき寄せるため、護送されることになった。
レイチェルは彼を止めようとするが、デントの決意は固い。
「真実を話すかどうかはコインで決める」。
相変わらずのハーヴェイ・デントに、レイチェルは「自分の命をコインに任せないで」という。
デントは護送車に乗る間際、レイチェルにコインをトスして渡した。
デントを乗せた護送車が車列を組んでメインストリートを走行していると、前方に消防車が赤々と燃えているのが目に入った。
思わぬ障害物だが、これを避けるには地下道に入るしかない。
そうなると、航空支援が受けられないが、他に道はなく、止むを得ずに、車列は地下へ入った。
そこに大型トレーラーが突っ込んでくる。ジョーカーの仕業だった。
ジョーカーはトレーラーの荷台に仲間とともに乗っている。そして、護送車や護衛するパトカーを次々に襲撃し始めた。
そこにバットマンが現われ、ジョーカーのトレーラーに体当たりを試みた。
バットモービルはクラッシュし、完全にダウン。
バットモービルは機密を守るため自爆したものの、バットマンはバットポッド(バットモービルの左前後二輪と車体の一部を利用したバイク)で脱出した。
護送車は地上道路に抜け、ヘリの支援を受けるが、ジョーカーはロープを張ってヘリを引っかけ、墜落させることに成功する。
一般車両の間をバットポッドで疾走しながらバットマンはジョーカーを追った。
街の道路だけでなく、ショッピングモールの中を走り抜け、一般車両をクラッシュ・爆破させながらもバットマンはジョーカーを必死に追う。
ついにジョーカーのトレーラーに追いつき、トレーラーを転覆させることに成功した。
中から降りてきたジョーカーはその場に仁王立ちになる。バットポッドに乗り、エンジンをふかせて対峙するバットマン。
一直線の道路で2人はにらみ合った。
そして一瞬の間を置いたのち、バットポッドが疾走。ジョーカー目指して突っ込んでいく。
笑い声をあげるジョーカー。バットポッドはすんでのところでジョーカーをそれ、後ろに回りこんで転倒した。
バットポッドから落ち、気絶したかのように見えたバットマン。ジョーカーの仲間が駆け寄るが、ジョーカーはそれを跳ね飛ばしてバットマンに馬乗りになり、ナイフをかざす。
そのとき、さっきの仲間がジョーカーの背後を取った。銃を突きつけ、警告するその声はゴードン警部補その人だった。
ジム・ゴードンは生きていた。彼は殺されたふりをして、ジョーカーを追っていたのだ。
ジョーカーを見事、逮捕したゴードンはその手柄によって、市警本部長に昇格。ジョーカーを市警本部の留置場に放り込み、彼は家族に安否を報告するため、一時帰宅した。
一方、市警本部の留置場でジョーカーは警官たちの憎悪の視線を浴びていた。
何人もの同僚の警官がジョーカーに殺されているので、警官たちのジョーカーに対する憎悪は人並み以上のものがあったのだ。
警官たちはゴードンに「ジョーカーに手を出すな」と警告されていた。
そこで、ゴードンが帰宅した後、ジョーカーと同じく警官を殺して留置されていた男をジョーカーの同房に放り込んだ。
家族に無事を知らせるゴードン。
息子に「バッドマンは命の恩人?」と聞かれ、「逆だよ、僕が助けたんだ」とゴードンは答えるのだった。
そこに一本の電話。またもや緊急事態だった。
なんと、ハーヴェイ・デントとレイチェル・ワイズが帰宅していないという。
ゴードンはさっそく、ジョーカーの取調べに入った。しかし、ゴードンがジョーカーを問いただしても、一向にしゃべろうとしない。
やむなくゴードンはバットマンに尋問を交代した。
バットマンはジョーカーの頭を殴り、ジョーカーにデントの居場所を吐かせようとするが、やはり何もしゃべらない。
逆に、ジョーカーは、レイチェルの名前を出してバットマンを挑発した。
バットマンはドアを椅子でふさぎ、マジックミラーの向こう側で見ているゴードンたちが入ってこられないようにした後、激しい暴行をジョーカーに加える。
ジョーカーはついに、ハーヴェイ・デントとレイチェル・ワイズを誘拐したことを認め、彼らを別々の場所に監禁したと白状した。
ジョーカーはバットマンにそれぞれの監禁場所の住所を教え、どちらかを救いに行けば、時間的に間に合わずにもう1人は爆死すると告げる。
デントかレイチェルか、「どちらかしか救えない」。「どちらかを選べ」、とジョーカーはバットマンに要求するのだった。
デントとレイチェルが監禁された部屋にはそれぞれ電話が置いてあり、2人はそれで話すことができた。
デントはレイチェルに「大丈夫だ、助かるよ」というが、レイチェルは「生き残るのはどちらかで、それを選ぶのはお友達だ」と言われたことをデントに伝えるのだった。
ジョーカーはゴードンとバットマンが救出に向かった後、警備に着いた刑事をうまく挑発し、刑事が襲ってきたところを逆に人質に取ってしまう。
そして、警官に電話をさせろと要求。
ジョーカーが電話をかけると留置場が爆発した。
さっきジョーカーと同房にさせられていた警官殺しの男の腹にジョーカーが爆弾を仕込んだのだ。
ジョーカーはラウ社長を連れて市警本部を脱出し、パトカーでまんまと逃げだしたのだった。
バットマンが来た場所、それはデントの居場所だった。
バットマンはハーヴェイ・デントの救出を選択したのだ。
バットマンがデントを救出した瞬間に2人の背後で大爆発が起きた。レイチェルは爆死し、ハーヴェイ・デントは顔半分が焼けただれる重傷を負ってしまったのだった。
翌朝、アルフレッドはブルースの朝食の支度をしていた。
そして取り出したのは、レイチェルから預かった手紙。
彼女が死んでしまった今、この手紙を渡す方がいいだろうと考えたのだ。手紙を開け、中を見てみるアルフレッド。
綴られていたのは"レイチェルがハーヴェイ・デントを愛していること"、"彼と結婚することを決めたこと"、そして"ブルースがバットマンを捨てる日が来ることが考えられないこと"。
そして、仮に、ブルースがバットマンをやめるときがきたなら、そのときはあなたのそばに”親しい友として一緒にいることを約束する”と書かれていた。
アルフレッドはその手紙をさりげなくジュースと皿の間に挟み、トレイにのせてブルース・ウェインのもとに運んで行った。
ブルースはまだバットスーツを着たまま。
心ここにあらずといった様子でガラス張りの部屋から見える高層ビル街を眺めている。
アルフレッドはすぐ立ち去ろうとしたが、ブルースは彼を呼びとめ、「狂気や死が蔓延したのは自分のせいではないか」と嘆いた。
アルフレッドは、「悪党の顔につばを吐いたのだから、彼らが狂気に走るのは当然のことであり、混乱の後に平和は来るものです」、とブルースを諭す。
一方、ブルースは「必要なのは真のヒーローであり、それはデントだ」、といい、さらに「デントには絶対に言えないが、レイチェルは僕を選んだんだ」というのだった。
アルフレッドはその言葉を聞き、そっと手紙に手を伸ばした。
ブルースは「それは何だ?」と聞くが、アルフレッドはうまくごまかしてレイチェルの手紙を持ち去ってしまった。
ジム・ゴードン市警本部長は病院に入院しているハーヴェイ・デントのところに見舞いにやってきた。
デントの顔の左半分は見るも無残な状態だ。
皮膚がなくなり、顔の筋肉組織や歯が露出していて、眼窩が異様に大きく見える。
ゴードンは薬も飲まず、皮膚移植も拒否しているデントに、治療を受けるように勧めるが、デントは苛立ってゴードンを責めた。
ゴードンが市警察にいる内通者を放っているから、今度の誘拐事件が起き、レイチェルは殺されたというのである。
ゴードンの部下にジョーカーもしくはマフィアに情報を流している者がいるとデントは非難した。
そして、ゴードンは、ワーツ刑事がデントを連れ去ったことを認め、「後悔している」とデントに言った。
しかし、デントは「いや、まだ足りない、これからだ」と言い放つ。
そして、デントが内部調査部にいた時代に、ゴードンたちが何とデントを呼んでいたのか言えと迫ると、ゴードンたちはハーヴェイ・デントのことを"ハーヴェイ・トゥーフェイス Harvey two face"とよんでいたことを告白する。
ハーヴェイ・デントはそれを聞いて口元を歪め、「それが本当なのに、何故隠す必要があるのか」、とゴードンに言ってのけるのだった。
意気消沈したゴードンが病室の外に出ると、そこにはマフィアのボス・マローニが待っていた。
彼に「ピエロを箱から出したのは誰なのか」と非難するゴードン。マローニはジョーカーの行方をゴードンに教えるのだった。
ゴードンは素早く戦術部隊を派遣し、「ジョーカーは殺してもかまわないが、ラウ社長は生け捕りにしろ」と指示を下した。
ジョーカーは約束通りの金をマフィアからせしめていた。倉庫に高く積み上げられたドル紙幣の山。
彼はその周りにガソリンをまく。そして、火をつけた。あっという間に何千万ドルが灰になっていく。マフィアの資金もたちまち灰の山だ。
ジョーカーは金など要らないと吐き捨て、逆にマフィアたちを「カネの亡者だ」といってこき下ろす。
そして、ウェイン社の会計士リースがテレビに出演し、ウェイン社とバットマンの関わりを暴露しようとしているところに割り込んだ。
バットマンの正体を暴いても、「つまらないから気が変わった」と言いだしたのだ。
そして、今度は会計士のリースを殺せと生放送をした。60分以内にリースを殺さないと市内の病院のいずれかを爆破するという。
たちまちテレビ局の前は大混乱になった。
リースを殺そうとする市民が殺到したのだ。実際に、リースは市民に銃撃され、命からがら、テレビ局を車で脱出した。
ブルースはランボルギーニに乗って市内を疾走し、リースのもとにむかう。
ゴードンは市内の病院から患者を連れ出し避難させるように手配をし始めた。
一方、ジョーカーはハーヴェイ・デントのところへ向かっていた。看護師を装って、デントのところへ入り込み、病室で寝ている彼に話しかける。
ジョーカーに怒りをあらわにするハーヴェイ・デントに、「小さな無秩序で世の中は混乱する」と言い、自分は「混乱の使者」だと名乗った。
そして、銃を取り出すと、自分の額にあて、デントの手を引き金にかけさせる。2人の間には緊迫した雰囲気が漂い始めた。
ブルースはリースの車に体当たりしてきた市民の車を自分の車を割り込ませて守り、リースを保護することに成功した。
一方、ハーヴェイ・デントの病室から出てきたジョーカーは病院を丸ごと爆破。
病院から避難しようとしていた患者の乗っている50人乗りのバスに乗り込み、そのバスで逃走した。
ふたたび、テレビにジョーカーの声明が発表された。
ジョーカーは、「市民にゲームに参加しろ」、「それが嫌ならゴッサム・シティから出て行け」と呼びかけた。
たちまち、市内は避難しようとする人々で大混乱し、ゴッサム・シティから出て行くフェリーは満杯になった。
同様に、ゴッサム・シティの市警本部でも、囚人を護送することを決定し、およそ3万人の市民を乗せた船”リバティー号”と同規模の囚人を乗せた”スピリット号”がゴッサム・シティから出航した。
そのころ、ウェイン・エンタープライズで仕事をしていたルーシャス・フォックスに緊急警報装置の作動を知らせるアラームが鳴ったことが知らされた。
フォックスが発信元の地下に降りて行くと、そこにはバットマンの姿が。
しかし、バットマンがいたことよりも、フォックスは壁一面の液晶パネル、そして、そこから聞こえてくる音に驚愕した。
なんと、この巨大装置はゴッサム・シティ市民の携帯電話および全ての通信機器の内容を傍受しているのだ。
バットマンはこの装置をルーシャス・フォックスの手に委ね、これを使ってジョーカーの居場所を探ってほしいと依頼する。
そして最後に、ルーシャス・フォックスの名前を入力すれば装置は破壊されるというのだ。
フォックスは装置が道義に反するというが、ジョーカーを探すためだけに使うのならと引き受けるのだった。
そのころ、市民を乗せた”リバティー号”と囚人を乗せた”スピリット号”では共に停電が起きていた。
乗組員が船底に降りて調べたところ、100個の樽に入れられた大量の爆薬と起爆装置が発見されて大騒ぎになった。
そこに船内スピーカーからジョーカーの声が流れてくる。
それによると、”スピリット号”で見つかった起爆装置は”リバティー号”の起爆装置だという。
反対に”リバティー号”には”スピリット号”の起爆装置が積んである。
午前12時までにどちらかの起爆装置が押されない限り、2隻とも爆破される。
起爆装置を押せば、片方は爆破されるが、起爆装置を押した船は助かる。早い者勝ちだ。
“スピリット号”が先手を打ってボタンを押すか、それとも”リバティー号”に押されて爆破されるか、それとも12時まで待って2隻とも爆破されるか。
”スピリット号”では囚人と起爆装置を持つ刑務所長とのにらみ合いが始まった。
一方、一般市民の乗る”リバティー号”では議論の末、投票が行われることになった。
起爆装置を押して囚人たちの乗る”スピリット号”を爆破するかどうか、投票するのだ。
結果は賛成396対反対140。圧倒的にボタンを押すことを選択する者が多かった。
バットマンは”リバティー号”と”スピリット号”から聞こえたジョーカーの声を傍受したルーシャス・フォックスから連絡を受け、ジョーカーがプルイット・ビルで指揮をしていることを突き止めた。
ゴードンに連絡し、SWATをビル周辺に配置し、突入のタイミングをうかがう。
ガラス張りのビルを双眼鏡で見ると、ピエロのマスクを被った人影が何人も見える。
バットマンは先に偵察をしたのちのSWAT突入を主張したが、ゴードンは「早く解決しないと船が爆破されてしまう」と言って、即時の突入を主張して譲らない。
ゴードンにより、SWATに突入命令が下されるのに先んじて、バットマンは単独でビルに侵入した。
ビルのガラス壁面に立っていたピエロを押し倒し、マスクを剥ぐと、ジョーカーの仲間ではなく、病院からバスごと誘拐された患者の1人だった。
バットマンはすぐにゴードンに連絡し、ピエロは人質であること、白衣を着て医者のかっこうをしている者がジョーカーの仲間であることを告げる。
再び、バットマンはルーシャス・フォックスのサポートを受けながら、ジョーカーの居場所を突き止め、突入した。
しかし、ジョーカーは犬を放って襲わせ、バットマンを弱らせる。
ジョーカーはついにバットマンをビルの先端まで追い詰め、もう少しで突き落とせるところまできた。
と、そこで、ジョーカーは手を緩め、時計を気にする。
もう少しで12時なのだ。
「花火を見よう」というジョーカー。
どちらの船が先に火柱を上げるか、それが気になって仕方ないのだ。
一方、バットマンは「花火は上がらない」とジョーカーに言い返す。
“リバティー号”。投票では圧倒的にボタンを押すことに賛成する者が多かったが、誰も実際に起爆装置を起動させようとはしない。
皆顔を下に向け、視線をそらしている。
そんな中で一人の白人男性が立ち上がった。
「私が押そう」。
船長が起爆装置を差し出すと彼はボタンに指をかけた。
一方の”スピリット号”でも緊張が頂点に達していた。
2m近くはあろうかという黒人の大男が刑務所長に歩み寄り、「起爆装置を渡せ、そうしなければ、ここにいる囚人たちに殺されるぞ」と迫る。
そして、「囚人たちに脅迫されて渡したと言えばいい」、そう言って所長から起爆装置を受け取った。
「10分前にすべきだったことをしてやる」。
次の瞬間、その囚人は起爆装置を窓の外に放り投げた。そのまま海に起爆装置が沈んでいく。
再び”リバティー号”。
ボタンを押しかけた男は起爆装置を箱の中に戻した。そして、「やはりできない」といって汗をぬぐった。
12時がすぎる。爆発は起きなかった。
いつ、爆発が起きるか、と船の様子を眺めていたジョーカー。予想外の結末に笑いが止まらない。
そのすきにジョーカーを突き落とすバットマン。
ジョーカーはなおも笑いながら地上へ落ちて行く。
しかし、バットマンはロープでジョーカーを捕え、引き揚げた。
逆さづりにされながら、「モラルを捨てない頑固な奴だ」とジョーカーは悪態をつく。
「希望があるから戦いつづけるんだ」とバットマンが言うと、ジョーカーは「デントのことを知らないのか?」とバットマンをあざけった。
「ゴッサム・シティーの"希望の星"をおれたち悪党に落としてやったのさ!」
バットマンとジョーカーが死闘を繰り広げ、2隻の船が爆破装置を巡って争っているころ、ハーヴェイ・デントは何をしていたのか。
ハーヴェイ・デントはあのジョーカーとの病室での対面の後、病院を抜け出し行方不明になっていた。
デントの目的は一つ。
レイチェル・ワイズの死に関係がある者に復讐することだ。
まずは自分を誘拐したワーツ刑事のもとに行き、酒場で飲んでいるワーツを銃を突きつけて脅迫し、もう1人の「レイチェルを誘拐した刑事を言え」と迫った。
そして、命乞いをするワーツに「表か裏か」。あのコインをはね上げて、結果、ワーツを射殺した。
ワーツはもう1人の裏切り者の名前を知らなかった。
そこで、次はマローニのところへ向かう。彼は、ジョーカーを雇い、ワーツ刑事を始めとする警察の内通者に金を払っていたマフィアのボスだ。
マローニの車に乗り込み、裏切り者の刑事の名を聞き出すと、再びコインを投げる。
今度は”表”だ。次はマローニのドライバーの分だと投げたコインは”裏”。ドライバーはすかさず射殺され、車はクラッシュした。
その次は、マローニから聞き出した裏切り者のところへ。それは、レイチェルを誘拐した刑事、ラミレス。
彼女を脅迫して、ジム・ゴードンの家族に連絡させ、妻と子供を家の外へ呼び出させた。
そして、デントはゴードンの家族を廃墟となったビルへ連れ出した。
ジョーカーの話を聞いたバットマンはSWATにジョーカーを引き渡し、一足早くデントのもとに向かったジム・ゴードンのもとに急行した。
廃墟ビルの2階でデントはゴードンの家族を人質に立てこもっていた。
警官隊がデントを遠巻きに包囲する中、ゴードンはハーヴェイ・デントを説得しようと試みるが、デントは「ゴードンの部下にレイチェルを殺された」、と怒りをあらわにする。
「最愛の1人だけ殺してやる」と叫ぶデント。
外にパトカーが止まり、包囲されていることを知ったデントはもう終わりだと言い、ゴードンの息子を殺そうとする。
そこにバットマンが割り込み、「ジョーカーはハーヴェイ・デントのような男でも悪に染まると証明したかったのだ」といってデントを説得しようとする。
ところが、デントにはもう、誰の言葉も届かない。
デントはコインを投げ上げ、”裏”が出たとバットマンを撃ち、被弾したバットマンはその場に倒れた。
そしてデントは自分の分だと言ってコインを投げる。
今度は”表”だった。次はゴードンの息子の番だ。デントはコインを投げる前に、「息子に「大丈夫だ」とウソをつけ」、とゴードンに要求する。
ゴードンが言われた通りに息子に「大丈夫だ」というと、デントはゴードンの息子を射殺しようとした。
バットマンは素早くデントを押し倒し、デントもろとも階下に墜落した。起き上がったのはバットマン。
ハーヴェイ・デントは死んだ。
ゴードンの息子は無事だった。
問題はデントの犯行を市民に向けて、発表するかだ。
バットマンは「隠せ」という。
しかし、デントは5人殺しており、そのうちの2人も警察官がいる以上、隠し通せないとゴードンはいうのだった。
それを聞いたバットマンはある決意を固めた。
「ならば、自分がその殺人者になろう」。
バットマンはゴッサム・シティのため、デントの罪を被るというのだ。
新任検事ハーヴェイ・デントはゴッサム・シティの"希望"とされていた。
ハーヴェイ・デントは"光の騎士"。いまさら、ゴッサム・シティの市民を絶望させるわけにはいかない。
バットマンは即座にその場を離れた。ジム・ゴードンは茫然として彼を見送る。その後を大勢の警察官が追い、警察犬が猛然と走り始めた。
バットマンはこれからもお尋ね者だ。警察も犬もバットマンを追い続けるだろう。バットマンはこれからも逃げ続けねばならない。
危機が迫るときにバットマンを呼ぶバットシグナルも壊された。ゴッサム・シティが表立ってバットマンを呼ぶことはできない。
それでも、バットマンは街の守護者。
彼こそが"ダークナイト THE DARK KNIGHT"なのだ。
長々とありがとうございました。あらすじは以上ですが、あらすじ中で解説できなかった『ダークナイト』を解説してみたいと思います。
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