全裸女性の顔にポリ袋…DV被告に「君はいい男」連呼 元検事正の仰天弁護

産経新聞6月24日(日)21時2分

【法廷から】

 交際相手の女性を暴行、けがをさせたなどとして、傷害などの罪に問われた男性被告(36)の初公判が18日、東京地裁で開かれた。全裸にした女性の顔にポリ袋をかぶせ、顔や腹をけり上げるという異様な犯行に及んだ被告。その供述に注目が集まったが、法廷の「主役」を奪ったのは独特の質問と主張を展開する元検察幹部の弁護人だった。(時吉達也)

 起訴状と検察側の冒頭陳述によると、被告は4月上旬、東京・新橋の飲食店で、交際相手のホステスの女性(19)と交友関係をめぐって口論になり、女性にけられたとして激高。「人前で俺に恥をかかすんじゃねえぞ」と女性の顔を何度もひざげりした。

 さらに、被告の自宅マンションへ移動すると、女性の服をひきちぎり、全裸にした上で両手を粘着テープで緊縛。頭にもポリ袋をかぶせて縛り、約2時間にわたり暴行を続けたとされる。女性は全治2週間のけがを負った。

 18日の初公判に、被告はスーツ姿で出廷。執拗な犯行を想像するのが難しいほど、外見は温和で真面目そうな印象を与える。

 被告の弁護を担当したのは、札幌地検検事正や最高検の総務部長など、過去に検察の要職を歴任したベテラン弁護士(76)。被告が罪状認否で起訴内容を全面的に認め、量刑が争点となったことから、弁護側は被告が反省を深めていることを強調し、再犯を防止する環境が整っていることを訴えるとみられた。しかし、弁護側の証人として出廷した被告の母親に対する尋問では、一風変わったやり取りが交わされた。

 弁護人「お子さんは一見して、真面目そうだよね。今後、どうします?」

 証人「ショックだったが、2度とこんなことをしないと信じてあげたいです」

 弁護人「真面目そうだよねえ」

 冒頭から被告に対する自分の印象を繰り返す弁護人。被告が2度結婚し、計5人の子供をもうけたが家庭内暴力などを原因に離婚している点を確認すると、「誰かいい女性を紹介してあげたらどうですか」と促した。尋問は、早々に締めくくられる。

 弁護人「小菅(拘置所)で4回面会したんだけどね、真面目でいい男なんだよね。何でこんなことしたんだろうね。やる気になりゃきちんとやるのかな。お母さん、しっかりやってね!」

 被告の社会復帰後の対応などについて全く言及しないまま、弁護側の証人尋問は終了。一方、母親は続く検察側の質問で、今回の犯行について「(女性の)やり方がひどかった。人前で男の人に手をあげるなんて。そういう時代なんでしょうけど…(被告が)かっとなったんでしょうね」と、被害者側の責任を強調していた。

 弁護人は被告人質問でも、変わらないスタンスで被告と向き合った。

 弁護人「私は4度小菅に君に会いに行ったけど、どんな表現をしていましたか? …どんな表現ってわかりづらいかな、反省の言葉とかさ」

 被告「…申し訳なかったと」

 弁護人「悪いことをした、とね。いい青年だったと思ったんだよ。もう2度としない、誓える?」

 被告「はい」

 弁護人「母親と裁判官の前で、誓える?」

 被告「誓います」

 弁護人「終わります」

 質問は3問。母親の証人尋問以上に“簡潔”だった。被告の具体的な反省の態度は浮かび上がらなかったが、弁護人は「いい青年」の言及に満足した様子で席に戻った。

 しかし、続く検察官、裁判官の被告人質問で、弁護人の表情がみるみる曇っていく。被告は消え入るような声で返答を繰り返し、はっきりと発言するよう数回注意を受けていた。弁護人は補充の質問があるとして再び立ち上がり、被告をにらみつけた。

 「ずいぶん声が小さいんだな。もっと迫力持って生きなきゃダメだよ! みんなに迷惑かけて。お母さんも来ているじゃない。拘置所ではもっと大声出していて、これならいいなと思ったんだよ! いかにも貧弱な声で(更生の)決心がつくのか!」

 にわかに声を荒らげる弁護人に、戸惑いを隠せない様子の被告。弁護人は言葉に力を込め、続けた。

 「頼むぞ。せっかく僕が弁護士についているんだから!」

 検察側は論告で、「被告には配偶者や交際相手に対する暴行癖があり、再犯の恐れが高い」として懲役2年を求刑。これに対し、弁護人はゆっくりと言葉を選びながら、最終弁論を行う。文章を読み上げないのも珍しい。

 「私もつい大声を上げたが、拘置所でみると深く反省しています。再犯の恐れはないと思います」

 被害者との示談が成立していない点については「私が支援する」。事件を繰り返さないことを「私からも誓う」。法廷での反省や具体的な再発防止策に触れなくても、元検察幹部の“お墨付き”が何よりの保証となるようだった。

 判決は29日に言い渡される。「熱血弁護人」の思いは届いたのだろうか。閉廷を前に、最終陳述として言いたいことがあるかどうかを裁判官に問われた被告。反省の弁を述べる最後の機会だったが、やはりか細い声で呟いた。

 「ありません」

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