「相続」の問題について、弁護士・長谷川 裕雅さんの解説です。
親や配偶者など、人が死亡したのと同時に、自動的に始まる「相続」の問題。
突然直面することも多い相続では、特に遺言がない場合、もめやすいといわれています。
相続で、もめないためにはどうしたらいいのか、「磯野家の相続」の著者で、弁護士・長谷川 裕雅さんの解説です。
(『相続でもめる』と言うと、『資産家』というイメージがあるが?)
はい。資産家の方は、遺言などを含め、相続の準備を万端にしている方も多いのですが、むしろ、資産をお持ちでない方が遺言などもなく、準備もしていないので、思わぬトラブルになるケースが多いです。
もめる原因は、大きく分けて3つあります。
「分けられない財産」、それから「親にしてもらったこと、してあげたこと」、最後に「予期せぬ人物の登場」です。
これは、どこの家庭にもあるような事柄なんです。
(この『分けられない財産』というのはどういうことか?)
分けられない財産には、不動産はもちろん、絵画や宝飾品などもあります。
遺産が現金ばかりであれば、相続する人たちに対して分配しやすいのですが、不動産などは、少なくとも、そのままでは分けようがありません。
これが、もめる原因になるんです。
「分けられない財産」で、もめやすい具体的な事例を見ていく。
(子どものいない夫婦で、夫が亡くなった場合、住んでいたマンションなど夫の財産は、全て妻のものになるのか?)
正解は×なんです。
夫婦に子どもがいない場合はですね、夫が死亡した場合、相続するのは、妻と夫の両親になります。
遺言がない場合、相続分は妻が3分の2、夫の両親が3分の1で、妻が全て相続するわけではありません。
(そうすると、夫の両親が亡くなっていれば、全て妻が相続するのか?)
ところが、この場合は、夫のきょうだいにも相続する権利があるんです。
相続分は、妻が4分の3、夫のきょうだいが、あわせて4分の1です。
(現金がない場合、そのきょうだいに支払うために、住んでいる家を売らなければいけないというケースも出てくるのか?)
そうなると理不尽になってしまうので、子どもがいない夫婦の場合は、全財産を配偶者に残すという内容の遺言をお互いに残しておくことをお勧めします。
もちろん、これで全部解決とはいかないんですけれども、それでも遺言があるのとないのとでは、大きな差があるんですね。
(続いて、相続する不動産の価格は、周辺地域の相場で決まるのか?)
正解は×なんです。
普通は相場で決まりますけれども、遺産分割においては、当事者間が納得さえすれば、不動産の価格の決め方は、どのような方法であっても構いません。
不動産の価格を決める方法として、「実勢価格」、「相続税評価額」、「固定資産税評価額」など、いくつか方法があります。
(これらは、それぞれで、かなり開きが出るのか?)
決め方によっては、かなりの差が開くこともあります。
実際のケースとして、静岡の一軒家をめぐる家族間の争いで、片方は、相続税評価額である3,500万円を、もう片方が、実勢価格である5,500万円を主張したケースもあります。
(こうやって、もめないための対処法はあるか?)
同居する家族が家を売らなくて済むように、できれば、相続分にあたる現金を準備しておくほうが望ましいです。
生命保険などを利用しても構いません。