田舎暮らしでの不安


1、仕事
 定年後、悠悠自適に生活している人は別として、田舎に住むにしても、一般の人は何らかの仕事をしなければなりません。ペンション経営や農業、陶芸・染色などを生業としている方もいますが、資金や技術・経験がいるので、一般的とは言えません。誰でも出来て資金も殆どいらず、かつ、対象のマーケットが大きな業界でないと、顧客獲得もままなりません。
 
 そこでお薦めなのが登山やハイキングです。昨今の登山ブームはご存知の通りだと思いますが、現在の全国の登山人口は1,000万人にも上ると言われています。登山と「田舎」とは切っても切れない関係です。これだけ田舎の仕事として適しているものは他にないでしょう。一般的には農業を思い浮かべる人が多いと思いますが、農業は休みが取れないのです。半日くらいは何とか休めますが、丸一日の休みとなると、栽培物に影響が出てくるのです。登山は資金も施設・事務所もいらず、経験も大していりません休みもたっぷり取れ、なんと週休5日でも年収数百万以上取れるのです。

 自分がすみたい地域に登山対象の山や、ハイキングに適した場所がないと思っても、探せばありますし、自分の住む地域に限定する必要もありません。山岳ガイド(軽登山やハイキング程度の)は、都会・田舎関係なく、どこででもやれる仕事なのです。 

2、住居            

 私が不思議に思うのは、なぜ田舎暮しというとすぐ土地や家の購入となるのかが分からないのです。それらをすぐ購入できるのはある程度の年齢の人です。どう考えても田舎は老人よりは若い人に適しているのです。年を取れば病院や介護等がすぐ必要となってきます。そういう施設や人員が整っているのは都会の方です。若い時から田舎に住んでいれば、病気にかかりにくく、年を取ってもかくしゃくとした身体でいられます。

 田舎の借家の家賃は都会と比べるとかなりの安さです。私の住む借家は入居時には敷金・礼金等は一切いらず、月々25,000円です。家の造りは平屋の四畳半2kですが、廊下や広い押し入れがあるので、6畳ほどの広さを感じます。車道が玄関まで通じてないのがやや難ですが。
 田舎のそう言う借家の物件は、不動産屋がないので分かりにくいのですが、役場等に問い合わせて、家主を紹介してもらうことが出来ます。その時役場の人に尋ねられるかも知れませんが、嘘でもその地域に永住する意思を示して下さい。そうすればかなり真剣に相談にのってくれます。

3、子供の教育施設
 幼稚園のある地域は限られていますが、保育園や小中学校は大半の田舎でもありますし、そこそこ近くに高校がある場合もあります。塾もある地域は多いのですが、折角の田舎暮しですので、子供を塾に通わせるのはあまりお勧め致しません。因みに私は高知の山村・吾川村に住んでいるのですが(高知は森林率日本一の山国)、徒歩5分圏内に幼稚園、保育園、小中学校があり、高校も自転車通学できる距離にあります。都会のように人数が多すぎて何ヶ月も何年も保育園の入園を待たされることもありません。

4、買い物 
 私が田舎の地を選ぶ際に最優先したのが、各種商業施設へのアクセスです。ここが一般の田舎暮し愛好者とは違う点で、やはりほしいものがあれば、すぐに買いに行きたいと思うのが人情でしょう。私も若い時は都会の大阪で暮していましたから、そこの便利さは捨てられません。大体、食料品の買出しの場合は、車で片道1時間半以内という距離が、ストレスなく行ける距離ではないでしょうか。因みに私の場合、片道15分で食料品の大型店やコンビニ、30分で大型の書店や家電店・ホームセンター等がありますが、衣料店やアウトドアショップ、シネコンとなると1時間半はかかります。

5、ご近所づきあい             
 田舎暮しに憧れている人の中で、近所づきあいはせずに暮していこうと思っている人がいるとしたら、それは間違いであり、そんなことは田舎では許されません。田舎では必ず地区会に入り、行事などがあれば、仕事が入っていない限り、極力参加しなければなりません。行事とは草刈、道つくり、どぶさらえ、祭り、葬式の手伝い、総会などなどです。普通大体平均して2ヶ月に1回くらいあります。多い地域では月1回ほどです。ただ、何もかもをその地域に合わせなければならないとなると、苦痛になりますから、どうしても出来ないことはできない、とはっきり言った方がいいでしょう。そういう行事に参加することで、顔も知ってもらえますし、何かわからないことがあれば、尋ねやすくなります。
 
 私は地域のつきあいで失敗したことがあります。私は最初引越してきた時は、地元企業団体に就職していたのですが、そこを辞め、街の高知市周辺で自営で働くようになると、当然住居も高知市近辺になりますから、地区会を脱会したのですが、その仕事を終え、こちらに戻ってきた時、地区会に再入会することを忘れていたのです。帰ってきて、9ヶ月経ったある日、私の組(地区会の班)の組長が訪ねてきて、地区会にも入らんもんは村から出て行けと言われたのです。別に迷惑になるようなこともしていないにも拘らず、ひどい言われようでした。再入会しても私への組長の差別は続いています。田舎にはこういう封建的な人種がいますから、そこは気をつけて下さい。ただ、地区会長や他の近所の人は普通の人らですので、村八分にされることはありませんが。

6、パソコン関連の環境
 インターネットを毎日のように使用する人は、NTTやヤフー等の大手プロバイダーに問い合わせ、希望する居住地がブロードバンドに対応しているか否かを確認する必要があります。対応していなければ、ダイヤルアップ接続となり、通信速度は100分の1以下となり、ネット動画も楽しめなくなります。ネット接続時はどうしても時間を気にすることになりますが、ネット中毒者はこれを気に中毒から脱することができ、ある意味健全になります。ネットは数日に一回くらいで十分でしょう。

 これからパソコンを始めようと思っている人で、パソコン教室に通いたいと思っている人も心配無用です。大概全国の市町村の教育委員会では年一回から数回ほど、無料でパソコン教室を開いているのです。田舎では自分の居住地ではなくても受講できる場合がありますから、近隣の町村を含めると年に何回も講座を受けることができます。尚、私は地元の教室に行った際、そこの講師にこの今使用している、ホームページ作成ソフトをコピーして貰いました。田舎だからこそ初対面でも頼めるのです。

7、演劇やコンサートをしたい
 田舎には設備の整ったホールや施設はありませんが、逆にその催しの趣旨を理解してくれると、いろんな協力を得られるものです。ホールは公民館でも学校の体育館でもいいのです。地域の協力があれば、練習場を無料で借りることも出来ますし、観客の動員力にもなります。そして「村のスター」になれるのです。村のスターになれば地元の新聞やテレビにも取り上げてもらえる可能性が高くなります。そしてそれが新たなチャンスとなり、活動範囲も広がり、更なる飛躍となるのです。それを足がかりとして全国に羽ばたくことも夢ではありません。都会ではちょっとやそっとのことではスターにはなれません。

 今私は地元の村ではないのですが、近隣の町の児童施設に毎週出向き、声楽家とともに童謡詩人金子みすヾの童謡コンサートの練習を指導しています。この企画は声楽家の方から持ちかけられたのですが、私は台本、演出、振付を任され、コンサートを開くそこの施設の子供たちに踊りや芝居を指導しています。そこにはグランドピアノを置いてある広い講堂があるのです。施設からは全面的バックアップを受けています。マスコミ取材も受けやすくなります。

 田舎での演劇やコンサートは都会で開催するよりも、ずっと成功する確率が高いのです。



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