高世仁の「諸悪莫作」日記

2011-10-08 山登りで日本を変える

takase222011-10-08

今朝まで徹夜で編集だった。

オフィスで仮眠していたら、徳島県上勝町町長笠松さんから電話。

『日本で最も美しい村』連合の総会で北海道赤井川村にいるという。「いま、飯舘村の菅野さんと一緒におるのよ」。DVD『チェルノブイリの今』を観たら、とてもいい内容だったので、一番観てほしい菅野村長に差し上げたという。自分は、「もう一部買うけん」とのこと。ありがたい。

笠松さんのそばにいらした菅野村長と電話をかわってもらい、ご挨拶。来週、お会いすることになった。楽しみだ。

http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110930

さて、いま編集しているのは、明日放送の「情熱大陸」で、主人公は登山ガイドの山田淳さん(32)。

でも、この人、ただのガイドではない。

登山人口は急激に増え、「山ガール」という流行語までできた。山田さんは、山ブームを一過性のものに終わらせず、10年以内に「日本人の7割を登山人口にする」という壮大な構想を持っている。名づけて「山登りトレンド化計画」。

初心者に対して「山歩き」へのハードルを下げ、誰でもが山に親しめるインフラ、仕組みを作ることに邁進している。

日経BPのサイトに、斬新な発想で今後の日本をひっぱる若き事業者を選ぶ「チェンジメーカー2011」というコーナーがあるが、山田さんはここにノミネートされている。

山田さんと一緒にノミネートされているのは錚々たる顔ぶれだ。

ソフトバンク孫正義日本マクドナルド原田泳幸楽天三木谷浩史ユニクロ柳井正などなど。

http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/aa0c/108573/candidates/index.html

山田さんは、喘息で体が弱く、学校を休みがちな子どもだった。中学時代、ワンゲル部で自然との触れあいに感動し、山登りを本格的に開始。灘中・灘校・東大に進み、富士登山ガイドで資金を貯め、東大在学中に、23歳と9日という世界最年少で七大陸最高峰登頂を達成する。

世界中の山をまわって気がついたのは、日本がいかに素晴らしい自然と山にめぐまれているかということだった。ところが日本人自身がそれに気づいていない。ぜひ、たくさんの人に山の素晴らしさを感じてもらいたい、そういう仕事を将来したいものだと考えた。

その後も登山ガイドを続けていたが、自分1人のガイドではせいぜい1000人を山好きにさせることしかできない。社会に「うねり」を生み出すには「仕組み」を作らなければならない。そのために「3年間だけ、ビジネスを学ぼう!」と思い立ち、世界トップクラスのコンサルティング企業「マッキンゼー」に入社コンサルタントとして働くことにした。

仕事は面白く、予定していた3年は瞬く間に過ぎていた。

そんなとき、北海道トムラウシ山の遭難事件が起きる。一昨年7月、悪天候のなかツアーガイドを含む9名が死亡。夏山の遭難事故としては近年まれにみる惨事だった。

山田さんは、初心を思い返した。六本木でカッコよく働くために山の世界を離れたのではない。エリートビジネスマンをすっぱりやめ、去年2月に山の世界に戻り、「フィールドアンドマウンテン」という会社を作った。http://www.field-mt.com/

会社の理念は、安全登山の推進と登山人口の拡大。

手始めに、登山道具のオンライン宅配サービスをはじめた。

道具、装備の価格の高さが、初心者への「敷居」の高さになっていたこと、また、いいかげんな装備によって事故が起きていたことを解消し、たくさんの初心者を安全に山に向かわせるためだ。

山田さんの分析どおり、ここには巨大な需要があった。

去年、初年度で2000人の顧客をつかみ、今年は約1万人に急増したという。誰でも考え付きそうな事業だが、このレンタル業をビジネスベースで展開したのは山田さんがはじめてだった。

いま、富士山に登る人の3%がこのレンタルを利用しているという。

事業としては大当たりし、会社を急拡大させているが、彼の情熱は、ビジネスとは全く別のところにあった。

(つづく)