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ギンザケ暴落 生産量日本一を誇る宮城・女川 苦境の旬

水揚げ最盛期にもかかわらず、価格安が続くギンザケ漁=23日午前2時30分ごろ、宮城県女川町

 生産量日本一を誇る宮城県女川町のギンザケが、かつてない価格低迷に見舞われている。福島第1原発事故の風評被害などが影響しているとみられ、浜値は例年の半値近く。東日本大震災を乗り越え水揚げを再開した漁業者にとって、思い掛けない打撃が広がる。品質確保に万全の注意を払うが、「復興どころか廃業者も出かねない」と悲鳴も上がっている。

 女川魚市場によると、最近のギンザケの浜値は1キロ当たり平均240円。例年同期は420〜430円で取引されていたといい、半値近い。
 県漁協女川町支所運営委員長の阿部彰喜さん(62)は津波で養殖施設や船を流された。国などの補助を受けて昨年秋に養殖を再開し、5月上旬から水揚げしている。「ギンザケを始めて20年以上になるが、こんなに安いのは初めて。餌代にもならない」と嘆く。
 ギンザケは秋に稚魚をいけすに入れ、2キロ前後に育った翌年3〜8月に水揚げする。ことしの場合、稚魚の購入費や餌代、出荷時の輸送費などを計算すると、1キロ当たり500円前後で売れないと採算割れになる。
 県漁協女川町支所のギンザケ水揚げ量は2009年度で約5200トン、金額は約22億円に上る。水揚げ量、金額とも県内の3割を占める。
 養殖から加工、出荷まで手掛ける同町の「マルキン」の鈴木初専務(55)によると、ことしはシーズン前からチリ産などの輸入物が市場に多く出回っていた。
 そこに風評被害が追い打ちを掛けた。西日本の量販店などに宮城県産魚の扱いを断られ、販売先を確保するため価格を下げざるを得ないという悪循環が続く。毎日餌を与えないと品質が落ちるため、生産コストの削減も難しいという。
 女川町のギンザケが水揚げされる女川魚市場と石巻魚市場(石巻市)は放射性物質の検査を実施し、マルキンも自社で検査に取り組む。いずれも全て検出下限値を下回っている。鈴木専務は「稚魚は昨年11月に海に入れ、餌は輸入ミールを食べさせている。原発事故の影響は皆無で、これほど安全な魚はないのだが…」と唇をかむ。
 女川魚市場は7月、冷凍カツオの水揚げが始まる。魚市場の加藤実専務(62)は「女川の水産業はことしが再出発の年。安全でおいしい魚を食べてもらうことが一番の復興になると、消費者に知ってほしい」と訴える。


2012年06月24日日曜日


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