「焼氷(やきこおり)」ってどんな食べ物――。大阪・新世界(大阪市浪速区)の2人の商店主が、地元の幻のメニューを自分たちなりに復活させた。手がかりは、約100年前の写真につく簡単な説明文だけ。味も形もわからないが、「だからこそ夢がある」。7月上旬にはお客さんに出すつもりだ。
「焼氷は一種特別の製作に係(かか)り頗(すこぶ)る珍味なるものにして評判殊(こと)に宜(よろ)し」
新世界が街開きした1912年、初代通天閣とともに誕生した遊園地ルナパークにあった喫茶店「白雨(はくう)亭」の写真にある説明文だ。店内には「焼氷 一五銭」と書かれた看板も見える。ルナパークの入場料が5銭。それなりに高価だ。
写真を見つけたのは、「上杉酒店」を経営する上杉和功(かずのり)さん(49)。13年に発行された『大阪新名所 新世界写真帖』にあった。ちょうど、ご近所の喫茶・洋食店「DEN・EN(でん・えん)」の店主の和田賢史(たかし)さん(52)から「100周年に向けて特別メニューを考えてるんや」と声をかけられた。「焼氷っていうのがあるねんけど」と上杉さん。レシピも実物の写真も見つからないなか、2人の挑戦が始まった。
「砂糖を焼いて溶かし、かき氷にかけたのかな」「焼きアイスみたいに表面を焼いたのかも」。考えれば考えるほど、わからなくなった。