情報社会と法規制 
 B−CASカード書き換えで逮捕!

●BLACKカードが6万4800円
 B−CASカード書き換え問題で逮捕者が出ました。詳細は次のとおりです。
B−CASカード海賊版を初摘発 販売容疑の男を逮捕
2012年6月19日13時15分朝日新聞
 有料デジタル放送を無料で視聴できる不正な「B―CASカード」を販売したとして、京都府警は19日、職業不詳の小林一幸(かずゆき)容疑者(43)=東京都西東京市ひばりが丘北=を不正競争防止法違反容疑で逮捕し、発表した。容疑を認めているという。海賊版B―CASカードの摘発は全国初という。
 府警サイバー犯罪対策課によると、小林容疑者は不正なB―CASカードを「BLACK(黒い)―CASカード」と称してネットオークションに出品し、5月19日に6万4800円で名古屋市の男性(66)に販売した疑い。このほか4〜5月に1枚6万〜8万円台で5人に販売した疑いもあり、府警はこの購入者らの自宅を家宅捜索。不正カードで視聴したとする電磁的記録不正作出・同供用容疑で調べる。
 正規のカードは、情報通信業ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(東京)が発行。通常はデジタル対応テレビに付属販売され、有料番組を契約すればカードを通じて映像のガードが解除される仕組み。最近、海賊版が出回って総務省が調査に乗り出し、WOWOWなど有料放送の事業者も法的措置を検討していた。
不正B−CAS:逮捕の京大職員、ネットで改変方法公開
毎日新聞 2012年06月20日 02時46分
 デジタル放送を視聴するための「B−CASカード」の不正なデータ改変事件で、京都府警サイバー犯罪対策課などは19日、有料放送を無料で見られるようにデータを書き換えたなどとして、新たに京都府宇治市五ケ庄平野、京都大防災研究所技術職員、多田光宏容疑者(30)を電磁的記録不正作出・同供用容疑で逮捕した。多田容疑者はネット上で「平成の龍馬」と名乗り、自らのホームページで一時、改変方法を公開していた。
 府警はほかに、データを改変したうえで、改変後のプログラムをファイル共有ソフトで提供したとして、東京都大田区羽田旭町、自称無職、浅野智和容疑者(36)を不正競争防止法違反容疑で逮捕した。
 多田容疑者の逮捕容疑は、有料放送を無料で見る目的で、自宅パソコンでB−CASカードに記録されたデータを改変し、6月19日、自宅の衛星放送受信可能なチューナー内蔵レコーダーに挿入した、とされる。
 浅野容疑者も同様に今年5月、データを改変し、同月22日ごろ、改変プログラムを自宅パソコンからファイル共有ソフトを使って不特定多数の人に提供した、とされる。【堀智行、花澤茂人】

●この手があったとは
 今回の逮捕のように、ソフトの提供が不正競争防止法違反として摘発の対象となるということは予想されていました(⇒B−CAS存亡の危機?)。意外だったのは、データの書き換えが電磁的記録不正作出・同供用容疑で摘発の対象となったということです。
 電磁的記録不正作出及び供用罪について、刑法は次のように定めています。
第百六十一条の二  人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
 前項の罪の未遂は、罰する。
 これを今回の事件に適用すると、「人の事務処理を誤らせる目的」つまり「契約者であると誤認させ、有料放送を提供させる目的」で、「その事務処理の用に供する権利に関する電磁的記録を不正に作った」つまり「契約者であるというデータを不正に作った」といえるということです。
 ただ、同罪における「電磁的記録」は銀行の預金残高記録や自動改札定期券の残高記録など何らかの財産的価値のある情報と考えられていたので、単なる会員資格の情報も含まれるというのは予想外でした。もっとも、当局が逮捕に踏み切ったというのは有罪にできるという確信があってのことなのでしょう。

●これでB−CASシステムは存続できる?
 今回の逮捕で、総務省とビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、ひと安心といったところでしょう。ウィニーのように無罪となる可能性は皆無とはいえない(⇒ウィニー開発者の無罪確定へ=ほう助罪の成立認めず―検察側の上告棄却・最高裁)にしても、「B−CASカードを書き換えたら逮捕される」となれば、普通の一般市民なら書き換えを躊躇するでしょうから。
 ということは、B―CASシステムの全面見直しも必要ないということになるのでしょうか。
 BLACKカードの販売は論外としても、改変方法の情報公開やソフトの提供については、営利目的ではなく、B―CASシステムの見直しを促すという意図があったと取れなくもないでしょう。しかし、そのために有料放送事業者に損害を与えてよいというのはちょっと話が違うように思えます。 
 ただ、これで一件落着「B―CASシステムは安泰」となるのは少し残念に思えます。
 

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