覚醒したゴールハンターは、どんな状況でも冷静さを失わなかった。後半開始40秒、前節の1点目と同じ藤本とのワンツーで、FW永井が抜け出す。「角度的にトラップしたら打てない。とにかく低くて速いのを打とう」。左足ダイレクトで合わせた電光石火の一撃は、GKの股を抜いた。これでリーグ再開後2戦3発。絶好調男がホーム瑞穂でも輝きを放った。
7月2日のロンドン五輪メンバー発表を目前に控え、同代表の関塚監督が視察に訪れた。デリケートになってもおかしくない時期の“御前試合”。クラブ幹部は永井が気負うことのないよう、来場を伝えていなかった。しかし永井は知っていた。「新聞で見ました。別に気にしないっすよ。誰が来ようが、来まいが、やることは同じ」。周囲の心配をよそに、あっけらかんと笑った。
五輪代表で期待されている前線からの守備も90分間きっちり見せた。「五輪も大切ですけどチームで結果を残すことが大事。残せばおのずとそれもついてくる」。心身ともに充実度は最高潮。発表まで残りの2試合も、チームと自分のために駆け抜ける。
(宮崎厚志)
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