東電 事故調査最終報告を公表6月20日 18時26分
東京電力は、みずから行っていた福島第一原子力発電所の事故調査の最終報告を公表し、「原子力災害への備えが甘く実践的な考えが十分でなかった」と総括しました。しかし、放射性物質の大量放出の原因や地震の影響など未解明の問題も多く、事故から1年以上たっても疑問が多く残されたままです。
東京電力の最終報告は、社員およそ600人からの聞き取りや現場の調査、それに解析データを基に、事故の対応や経緯などを検証しています。
事故の原因について、去年12月の中間報告から大きな変更はなく、「津波想定は結果的に甘さがあったと言わざるをえず、津波に対抗する備えが不十分であったことが今回の事故の根本的な原因」と結論づけています。
また事故の対応について、想定を超えたなかで現場は必死に対処したとして、基本的に妥当だったと評価し、政府の事故調査・検証委員会から不適切と批判された、非常用の冷却装置の操作について事前の準備に不十分な点があったことは認めたものの、「対応は現実的に困難だった」と弁明に終始しています。そのうえで結論として、「原子力災害への想定が甘く、対応では現場実態を想像できず実践的な考えが十分でなかった」と総括しています。
一方で政府の介入については、指示が現場の実態とかけ離れた形で直接・間接に行われ、「対応に当たる発電所長が板挟みになるばかりで、事故の収束の結果を改善するものではなかった」、「無用の混乱を助長させ、関係者は大いに反省すべきである」と批判しています。
そして今後については、原発の設備がほぼすべて機能を失う事態までを前提とした対応を検討するとして、メルトダウンを防ぐ対策の充実、緊急時の指揮命令、それに、住民への情報の出し方について具体的な提言をしています。
しかし、多くの住民を避難に追い込んだ大量の放射性物質がどこからどのように放出されたのか、いまだ明らかになっていないほか、本当に地震の影響はなかったのか、確定させる調査もできておらず、事故から1年以上がたっても疑問が多く残されたままです。
“分かることは最大限盛り込んだ”
調査委員会の委員長を務める東京電力の山崎雅男副社長は「今回の報告書には、設備などハード面の問題だけでなく、事故への対応方法など、ソフト面についても盛り込んだつもりだ。報告書で事故の全容が明らかになったとは思っていないが、現段階で分かることは、最大限、調べて盛り込んだ。原子炉がどのように壊れたかなど、今後、新しい事実が分かった場合には、その都度、公表していきたい」と話しています。
“事故の本質に迫れるかは非常に疑問”
東京電力が公表した最終報告について、原子炉工学が専門の法政大学の宮野廣客員教授は、「これまで行ってきた津波の評価や安全対策などについて、詳しく書かれている。しかし、結論として『想定以上の津波がきて安全対策がだめになった』としていて、今回の事故がなぜ防げなかったのかという視点から、過去の対策や規制のどこに問題があったのかを十分に分析していない」と批判しました。そのうえで、「この報告書だけで事故の本質に迫れるかは非常に疑問だ。『具体的に何を反省して何を変えていくのか』という教訓を導き出す必要があるが、事故の当事者の東京電力だけで行うのは難しいため、第三者の目で分析して、結論を出す必要がある」と指摘しています。
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