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原子力規制の新組織 課題残る
6月20日 20時43分

原子力の安全規制を担う新たな組織を設置するための法律が、20日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立し、ことし9月までに「原子力規制委員会」が発足することになりました。
新たな組織は、東京電力福島第一原発の事故の教訓を生かして実効性のある規制を行うとともに政府からの独立性を高めることが求められていて、さまざまな課題が残されています。

実効性ある規制や防災

政府は、ことし4月、原発の運転再開を決めるための暫定的な安全基準を決定し、福井県にある大飯原発の2基について、安全性を確認したとして、今月16日、運転再開を決めています。
政府は、全国の残りの48基については、新たな組織で暫定的な安全基準や評価方法を早急に見直したうえで、安全性を確認することにしていますが、いずれの作業も具体的な見通しは立っていません。
また、原発事故を受けて、全国の原発の30キロ圏内にある130余りの自治体は、地域防災計画の見直しを進めていますが、その目安となる国の防災指針が具体的に示されていません。
このため、新たな組織は、住民を避難させるための判断基準やオフサイトセンターの設置場所といった自治体の地域防災計画につながる仕組みを早急に作らなければならないという課題が残されています。

人材交流と育成は

このほか、組織の在り方についても課題があります。
法案では、政府からの独立性を高めるため、公正取引委員会のような「三条委員会」の形で「原子力規制委員会」を設置することになっています。
「三条委員会」は、独立してその職権を行うことが保障されるため、原子力規制委員会の委員長や委員は、専門的な知識に基づいた中立公正な立場で規制の業務に当たることができるとしています。
さらに、原子力規制委員会の下に設置され実務を担う「原子力規制庁」に入る職員は、原則として出身省庁に戻らないとする「ノーリターンルール」が全職員に適用され、独立性を高めるとしています。
しかし、「ノーリターンルール」には、法律の施行後5年間は猶予期間として位置づけられる例外があるほか、新たな組織は環境省の外局として設置されることから、人事や予算の面まで、環境省からの影響を排除できるかについては不透明です。
さらに、防災指針の策定は原子力規制委員会が行いますが、平常時の防災対策を検討する組織として、内閣総理大臣を議長とする「原子力防災会議」が新たに内閣府に設置されます。
科学的な根拠に基づいて策定された指針が、実施の段階になって、自治体の要望などを受けた政治判断による影響を受けないかも課題です。

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