<マイナンバー>住民票持たない子の保護者、「切り捨て」危惧
社会保障や税など官民両分野で多目的に利用する「個人識別番号(マイナンバー)」を国民全員に割り当てる法案を巡り、住民票を持たない子を持つ親らから「住民サービスが受けられなくなるのではないか」と心配する声が上がっている。マイナンバーは、住民票コードを基に発行される仕組みだからだ。市民として生活していながら法律上は「見えない存在」になり、さらに不利益を被る可能性がある。【臺宏士】
■事実婚で出生届不受理
5月16日、東京・永田町の衆院第1議員会館で市民グループが主催する「共通番号法と人権を考える5・16院内集会」が開かれた。集会で、東京都世田谷区の介護福祉士、菅原和之さん(47)は「私の次女(7)は小学2年生になるが、戸籍も住民票もない。出生届にある『嫡出でない子』という表記は差別性が強く、記載を拒否したら受理されずに住民票も作成してもらえなかった」と訴えた。菅原さん夫婦は「事実婚」で、婚姻届を出していない。子供の出生届が受理されていないため戸籍がないのだ。
居住の公的証明である住民登録制度は、日常生活で行政サービスを受ける際に欠かせない仕組みだ。ところが「戸籍がないと日本人かどうかわからず、戸籍がない人は住民票に記載されない」(総務省住民制度課)のが原則になっている。菅原さんは06年、不受理の取り消しと住民票作成の義務付けを求めて世田谷区を相手に東京地裁に提訴した。1審は勝訴したが2審の東京高裁で逆転敗訴。09年に最高裁で敗訴が確定した。だが最高裁は、戸籍がなくても区長の職権で住民票を記載しなければならない要件について「看過し難い不利益が生ずる可能性があるような場合はあり得る」と言及。住民票を基に作成される選挙人名簿への未登録を「看過し難い不利益」として例示した。このため、菅原さんは昨年、住民票の作成などを求めて再び提訴。同地裁は4月、訴えを認めなかった(控訴中)。
菅原さんは「最高裁は『手続き的に煩わしい点があり得るとはいえ(区は住民票を持つ場合と)同様の行政上のサービスを提供している。不利益が現に生じているような事情はうかがわれない』と言うが、負担は非常に重い。マイナンバーの導入によってさらに不利益が大きくなるのではないかと心配だ」と話す。
主催団体「反住基ネット連絡会」メンバーの宮崎俊郎さん(51)も、高校3年の次女(18)と中学2年の次男(14)の2人が菅原さんと同様に戸籍、住民票がなかった。これまで毎年、住んでいる横浜市に対し住民票の作成を求めてきたがかなわなかった。昨年、菅原さんの最高裁判決を受けて、住民票を作成するよう市に申し入れた。判決は戸籍がない人の住民票記載を禁止していないからだ。しかし、願いはかなわなかった。「子供が大きな不利益を被る可能性を訴えたが、市は最高裁判決を全く無視する態度だった」。宮崎さんは今年5月、市のルール通りに出生届を出した。これによって子供の戸籍ができたため、市は住民票を作った。
予防接種を受けられたり、学齢簿への記載もされたりするなど子供が小さかった時は、宮崎さんも住民票がないことの不利益は感じなかった。だが、子供が成長するにつれて、海外旅行のためのパスポート申請や自動車運転免許、選挙権がないといったさまざまな制約が現実化してきた。宮崎さんは「必要に迫られてやむを得ず住民票を作った結果、子供にマイナンバーが付けられるのは複雑な気持ち。忸怩(じくじ)たる思いはあるが、親の主義主張でいつまでも子供に負担をかけるわけにはいかない」と話した。
■行政サービス不利益も
戸籍法49条2項は、出生届の記載事項として「子の男女の別及び嫡出子又(また)は嫡出でない子の別」を定めている。法務省は10年3月に「その他」欄に「母の氏を称する」「母の戸籍に入籍する」などを記載すれば受理することにした。4月の東京地裁判決も「憲法上の疑義があるという見方にも理由がないわけではない」と述べた。出生届に基づく戸籍の続き柄欄には嫡出子(婚内子)は「長男、長女」などと表記。これに対し、嫡出子でない子(婚外子)は「男、女」と性別が記載されていたが、法務省は04年からいずれも「長男、長女」に統一した。出生届は1カ月後に法務局に移管され、27年間保存された後に廃棄されるため実務上の意義は事実上、失われている。
菅原さん、宮崎さん2人の子供のように住民票のない子はどのくらいいるか。
総務省住民制度課によると、生まれた時から海外に住む日本人や長期間海外に住む人は、戸籍があっても住民票はなかったりするケースもあるというが、公式な統計はないという。ただ、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子とすることを定めた民法772条のいわゆる「300日問題」に絡む無戸籍の子については08年から、母親が日本人であったり将来、戸籍を持つ可能性があるなど一定の条件を満たせば、住民票に市町村の判断で記載できることにした。こうして住民票に記載された子供の数は09年度389人、10年度523人、11年度580人。この条件を満たさない人もかなりの数に上るとみられる。戸籍制度に親が反対である結果、無戸籍になっている子供は想定していない。
マイナンバー導入の看板の一つが「行政の効率化・スリム化に資する効果」だが、最高裁が示した「看過し難い不利益が生じる可能性がある場合」に該当しないとして、住民票のない人はマイナンバーを持てず切り捨てられたままになるのか。同課は「住民票に記載された住民票コードからマイナンバーを作ることを決めた内閣官房で考えること」と言う。内閣官房社会保障改革担当室は「個別の行政手続きごとに、住民票のない方々をどう扱うのかについて考えていくことになる。ただ、番号が不要な従来のやり方は残らざるを得ない」と説明する。
無戸籍の子供の問題に詳しい井戸正枝衆院議員(民主)は「戸籍がないから住民票ができないという流れをまず変えなければならない。生まれた限りはどんな子供でも住民票に記載されるべきだ。何らかの例外措置を取る必要がある。住民票がないから福祉の外に置かれる状況は回避しなければならない」と話す。
◇税務署、名寄せ作業から「番号で効率化」
マイナンバーは2015年1月の導入時には93件の行政事務で使われる予定だ。具体的にどう利用されるのか。
国税庁企画課によると国税関係では57種類の法定調書の作成に必要になるという。例えば、確定申告書には番号を記入し提出するほか、事業主は従業員の告知を受け源泉徴収票に記載したうえで税務署に提出することになる。税務署はこうした情報をこれまで氏名と住所で名寄せしてきた。同庁は「住所や氏名は変わるため手間がかかったが、番号で効率的にできる」と話す。
社会保障関係ではどうか。厚生労働省情報政策担当参事官室によると、所得制限のある児童扶養手当を申請するケースでは、扶養者と児童の2人の番号を記入することになる。役所側は、扶養者の番号で所得情報を役所間で確認。また、労災保険や障害年金、健康保険など類似の制度で手当の支給を受ける場合、番号で給付を調整するという。番号がないためにアルバイトを拒否されたり、行政からの支援が制限されたりする恐れがある。
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