過労死する前にできることを準備しよう。画像は、SPA!編集部の日常的な風景です。
若者の労働に対する衝撃の発表が相次いでいる。厚生労働省の発表によると、平成23年度の
精神障害の労災請求件数は1272件で、前年度比91件増、3年連続で過去最高となったという。過労死など、脳・心臓疾患に関する請求も898件で、前年度比96件増、2年連続の増加となった。また、
自殺者数も30651人と高い水準で、なかでも就職活動の失敗などの理由で、
学生の自殺が1000人を突破し、問題視されている。
雇用・労働関係の不安はこれからも続きそうだ。現在働いている方だけでなく、これから働く若者にとっても不安が多い。
前述の、厚生労働省の発表した資料のなかでも気になったのは、
精神障害での労災補償件数で、情報通信産業が7番目(38件)となっていたこと。ブラック企業といえば、IT関係を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。意外にも思えるが、これはあくまで請求件数であり、泣き寝入りをした人の分は入っていない。ちなみに、トップは
医療・福祉の医療業が94件で1位、社会保険・社会福祉・介護事業が76件で2位だ。激務ということも言えるが、制度に詳しいということもいえそうだ。
この実態について、電話による労働相談を受け付けている日本労働組合総連合会の相談員・田島恵一さんはこう分析している。
「
情報通信産業は、若い従事者が多いため知識がなく、さらに『労働裁量制』や『フレックス』という聞き慣れない言葉のため『残業代はつかない』という経営者の言葉を真に受けるケースが多いようです」
◆ 心と体がこわれる前にいざというときに頼りになるのは証拠
ひどい場合、最終的に行き着くのは地裁の労働審判となるが、弁護士費用はかかり職場復帰は難しくなる。経営者としても、訴訟を起こされて負ければ、同じ条件の従業員全員に支払い義務などが出るため、穏便に済ませたい。証拠をもとに穏便に上手くやる方法などをプロに個別に相談した方が利口かもしれない。
そこで重要となってくるのが、
「証拠」だ。ブラック企業にありがちなトラブルや誤解とその対策方法と、いざというときのために役立つ証拠をとるためのアプリを紹介する。
◆ 勤務実態・契約内容をしっかりと記録
毎日残業だらけ……。求人票や契約の内容は天国だったにも関わらず、実態は地獄だった場合は?
「契約行為自体は重視されますが、実態の証明で解決へ。早朝の強制研修など評価に関わる研修は仕事であり、残業代対象です。年俸制やフレックス制に関しても、残業代の支払い義務があります。また、勤務時間を管理せずに大量の業務を課して、『業務が終わらないのは処理能力の不足』として残業代を認めない場合でも、業務量から『黙示の指示があった』と労働者は主張できます」(田島さん、以下同)
実態を証明するための記録が大事だ。そんなときのお役立ちアプリはこちら。
・『JotNot scanner』(iPhone)
iPhoneがスキャナー代わりに。名刺やレシートなどもきれいに保存できる。
また、勤怠実態を記録するにはこんなアプリも。
・『GPS Punch!』(iPhone・Android)
自己勤怠管理。簡単に、その日いた場所と行動を時系列でまとめられる。
・『絶対定時少女』(iPhone・Android)
ツンデレ女子高生が、飴と鞭を使い分けあなたの勤務時間を管理。
◆ 紙面で労働条件を出してもらえないなら言質をとる!
パートの場合は有給はなし? マネージャーが紙面で労働条件をくれないときはどうしたら……。
「それは違法です。そんなときは、ボイスレコーダーで発言をしっかり押さえておきましょう。また『辞めるなら賠償だ! 残業は罰金だ!』というような鬼畜経営者に会ってしまった場合、契約書があったとしても、労働基準法16条に違反します。この場合誓約書は無効です」(同)
わざわざICレコーダーを用意しなくても、アプリでしっかりおさえておこう。
・『IRig Recorder FREE』(iPhone)
日時と位置情報付きで音声データを保存できる。
・『ステルス・レコーダー』(Android)
画面を暗くしたままで長時間録音できる。
◆ 基本的な労働知識を身に付ける
従業員扱いなのに、契約は個人請け負いで涙目……。従業員じゃなければいろいろと我慢しないといけないの?
「労働実態が従業員(雇用)なら、契約は無効で、従業員としての処遇の義務があります。『事故が起きればバイトでも責任を取らなければいけないのに、有給は取らせてもらえない』ということも違法です。バイトの場合でも従業員と同じ権利があります」(同)
労働環境からの自己防衛には、お勉強をすることも必要だ。
『知っ得知識』(iPhone)
知っているようで知らないことも案外多いはず。
『IT社労士過去問』(Android)
社労士資格の過去問を学習できる。1年分のみ無料で利用できる。
◆ 自分の会社はブラックなのか知る
労働基準法以前に、そもそも今の自分の状況はどうなんだ……という方は、まずはアプリで診断を。
『社畜診断アプリ』(iPhone)
イラストと写真にクスっときてしまいそう。5分程度で診断。
『ブラック企業診断アプリ』(Android)
転職アドバイザーやキャリアコンサルタントが考えた7つの質問に答えるだけ。
『ワークルールチェッカー』(連合のWeb診断)
法令を基準に労働条件を簡単チェック
「もうだめかもしれない」と追いつめられる前にまずは証拠、記録を残すことが大事だ。そして、いざとなったらまずは連合など、プロに相談するのがいいだろう。 <取材・文・撮影/日刊SPA!取材班>
◆日本労働組合連合会
http://www.jtuc-rengo.or.jp/
連合相談ダイヤル:0120-154-052(フリーダイヤル・全国共通)