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東京電力の福島原子力発電所事故が依然予断を許さない状況だ。心配だ。とりわけ、一線で過酷な労働を強いられている、同社社員の健康が気がかりである。放射線暴露による影響がどの程度かはわからないが、過労死のリスクも気になる。 海外のメディアでは、彼らを絶賛するとともに、どうして軍隊がするような作業を一民間企業の社員がしているのか謎だというような論調もあるようだ。技術者でない軍隊でもできるような仕事があるのかどうか知らないが、なぜ被災企業であるはずの東電が、この非常事態の対応をなにもかも引き受けているのかはたしかに疑問である(記者会見まで!)。 一方、国はなにをしているかというと、今後の電力会社の経営形態を議論しているらしい。読売・毎日両紙によると、国営化、あるいは発電部門と送電部門の分離案などが浮上しているという。 目の前が火事なのに、その火を消す前に火事で死ぬであろう人の財産の相続問題を話し合っているような感じ。物には優先順位があるのではないか。事故が収束しないうちに、補償の範囲がわかるわけでもないし、「国民感情」に従う法解釈を記者の前で披露するのもいかがなものかと思う。 政治家や高級官僚は文系ばかりだから、この非常時に何の役にも立たないのは理解できるが、それにしてもせめて黙っていることくらいできないものか。自分の責任をうやむやにしたいからこそ、処分案ばかりを考えるのだろうが、これではとりつけ騒ぎをあおるようなものだ。 政府にもまして不愉快なのは、東電の記者会見における記者のヤクザのような態度である。こういうのを見ている一般人は一般人で、東電職員に嫌がらせをしたりすると聞く。こちらのほうは伝聞なので真実は分からないが、ネットにおける恐ろしい量の東電バッシングを見ればそうでもあろうとは思われる。 2011/04/05 ■ 鹿野道彦農林水産相は、事故のあった原子力発電所からの低レベルの放射性物質を含む汚染水放出について「『農水省に前もって具体的な報告がなかったことは大変遺憾なことだ』と不快感を示し、海江田万里経済産業相に東電を厳しく指導するよう求めたことを明らかにした」と伝えられている。 東電は、なにかするたびに複数の省庁にばらばらに了解を求めなければならないのか。やっかいなことである。非常時なのだから、政府の中で『回覧板』でもまわしてやればよいではないか、と思う。 汚染水の放出は、それをしなかった場合のリスクと比較するかぎり、妥当であると思われる。であれば何大臣であろうと、了承する以外にない。こうした場合、民間から見て政府の窓口が一本化されていたほうが、事は迅速に進むだろう。あとは政府内で情報をまわせば済む話だ。だが、それでは(俺の気が)すまない、というのが農水相の主張のように聞こえる。この非常時に・・・ 一方、韓国、ロシアは、事前情報がなかったことについて抗議をしてきている。これだけ注目を集めている事件なのだから、国際法上の必要のあるなしにかかわらず当然だ。単に礼儀だというだけでなく、ストラテジーとしても当然で、情報を隠しているかのような印象が国際社会に広まれば誰も日本のものを買ってくれなくなる。 税金から給与をもらっているはずの外務省はこの非常に何をしているのか、まさか『東電から直接聞いてくれ』と言い張るつもりでもあるまいに、と思っていたら、ODAの予算確保に全力をあげていたようだ↓ 高橋千秋外務副大臣は7日の記者会見で、政府・民主党が2011年度補正予算案の財源捻出のため、政府開発援助(ODA)予算の2割削減を検討していることについて「東日本大震災で130を超える国・地域から支援(の申し出)をいただいたのは、これまでのODAの成果の一つだ。ODAを通じた国際協力は引き続き着実にやるべきだ」と述べ、削減に否定的な考えを示した。
2011/04/06 ■ 東電が事故収束の工程表を発表した。ずいぶんと早いタイミングのように思う。事故の全貌が分からない段階での工程表の見積もりは難しかっただろうと思う。政府にせっつかれて急ごしらえしたのでないとよいが。こういうのはpregnantと同じで、あまり早く出すと後からリスクがついてきたりする。 工程表を見る限りとても短い期間での収束を計画しているように見える。しかし、どんな技術的プロジェクトでもそうだが、遅れる要因はいくらでもある一方、早くなる要因はあまりないので、あまりコミットしないほうがいいかと思う。できなければ叩かれるだけ損というものだし、現場の作業員の方に負担が行くことが心配だ。 一方政府はなにをしているかというと、やたらと会議とかポストとかをつくっているようだ。正直なにがなんだか分からない。どこに責任があるのか、なにを基準に意思決定が行われるのか、組織が複雑すぎて何もわからない。ひとつわかったのは、「復興構想会議」というところで増税を議論しているということ。 2011/04/17 追記:件の復興構想会議だが、増税を議論しているのに、メンバーにマクロ経済の専門家がいない、とテレビで竹中元大臣が言っていた。まさかと思うが、メンバーの学位一覧がネットで見つからない。2011/05/1 ■ 復興大臣がやっと決まって現地入りしました。今日、その様子をテレビでやっていたので、書き起こしますね(ネットの動画でも実物が見られます。) ☆ 大臣、知事が出向かなかったことに腹をたて 被災地の自治体は戦場のような忙しさではないでしょうか。実際、自衛隊じゃないのですから、こんなことでいちいち腹を立てるような方が来られたら二次災害のようなものですね。復興担当の大臣に必要なのは、なにより被災住民に寄り添うウォームハートではないでしょうか。二重三重に気の毒な被災地です。今、赤ちゃんがいるので、寄付以外の貢献ができないのが苦しいです。(2011/07/04) ■ 福島産の牛肉から高い濃度の放射性セシウムが検出されたと報道がありました。原因は、汚染された稲わらをたべさせたからだということですが、これはショックです。「市場に出ているものは安全」という政府の言葉を信じていた人、特に小さい子供のいる世帯は裏切られた気分になったでしょう。ところで、これをうけて、横浜市では、給食の牛肉のメニューを自粛し、豚肉や鶏肉に変更したというニュースがありました。 ↓ 『市によると、対象は344小学校と96保育所。市教委は11日に各学校に通知しており、 福島産の牛を避けるべきかどうかは別として、どうして、安心安全の豪州産などをつかわずに、豚肉に変更するのか素朴に疑問です。牛肉と豚肉はともに蛋白源ではありますが、牛肉には亜鉛が豊富、豚肉にはビタミンB類が豊富というように、求める栄養素が微妙に違います。牛肉を豚肉に変更するよりは、汚染の心配のない外国産に替える方が合理的でしょう。全頭検査″なんか必要なくなるまで外国産を使ったらいいと思います。 政府もこんなときなのですから、TPPなり豪州とのFTAなど通じて、牛肉の関税を撤廃して安全な肉を豊富に提供できる体制を整えるべきでしょう。しかし、おそらく「こんなときだからこそ」できないのでしょうね。政治リスクが高すぎるというわけです。なにしろ都会と田舎では一票の重みがうんと違います。票のためには消費者の安全より生産者の生活です。 もっとも私は国産牛肉の危険性が直ちに影響がでるものだと思っているわけではありません。が、安心と安全は異なるものですし、発がんリスクには閾値がない以上、安全の判断もまた主観的なものです。全頭検査で安心が広がればいいですが、検査の「安全」の判定が無検出なのか、それともキロあたり500ベクレルなのか、あるいは生涯の累積線量で100ミリシーベルトなのかなどの疑問もあります。全頭検査は危険であるからこそするものというシグナルになる可能性もありますね。(11.7.15) ■ 維新の会のブレーン、大阪府市特別顧問である賀茂明氏が、関電が自爆テロを起こすといっていますね。原発事故後の東電福島の命がけの奮戦を見ますと、現場を守る人たちがそんなことを起こすようには思えませんが、同じ維新の会ブレーンで大阪府市特別顧問の高橋 洋一も同様の発言をしているところを見ると一部大阪市内ではコモンセンスなのかもしれませんね(12.5.15) 「真夏の「関電自爆テロ」だけが怖い」 大阪市特別顧問 高橋 洋一 ■ ところで同じ維新の会の大阪市長は、大飯原発を夏だけ稼動させればいいと発言しています。私は原発技術者じゃないのでよくわかりませんが、原子力プランとってそんなに簡単につけたり消したりできるものなんでしょうか。 いや、もちろんやろうと思えばできるのでしょうが、問題は「それで安全性があがるのか?」ということでしょう。福島の原発は、最初の地震によって設計通り停止しています。その後の電源喪失で爆発してしまいましたが、爆発したのは動いていた原発ではなく、止まっていた炉ということになりますね。今一番危ないといわれている、4号機なんか定期点検で止まっていました。 福島で幸いだったのは、直前まで動いていたから、吉田さんのようなすぐれた技術者がそこにいたことです。そう考えますと、解体を決意するつもりならともかく、時々動かすよりはちゃんと安定的に稼働させたほうがまだマシなのではないかと思う次第です(繰り返しますが、私は原発技術者ではないので、上記ただの感想です。専門知識のある方、学会などでお会いした時にはいろいろ教えてくださいね)(12.5.25)。 |
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