YouTubeの視聴だけで処罰対象になりかねないとの意見も
違法ダウンロード刑事罰化や、DVDリッピングの違法化を盛り込んだ改正著作権法が2012年6月20日に成立した。3年ぶりの法改正となる。日本レコード協会(RIAJ)などが歓迎する声明を出す一方、インターネットに詳しい法律家などからは憂慮の声が上がっている。動画共有サイト「YouTube」の視聴さえ処罰対象になりかねないという意見もある。
違法ダウンロードの罰則化などは自由民主党、公明党が提出し、政府提出の改正法案の一部に盛り込む形で可決した。この法案の成立によって、2012年10月1日から、誰かが違法にアップロードした音楽、動画を、それと知ってダウンロードした場合、懲役2年以下または200万円以下の罰金となる。
暗号化によるアクセス制限を施した市販の映画DVDなどから内容を吸い出し、パソコンに保存するリッピングも違法として規制対象になる。ただし刑事罰はない。なお、こうした制限を施していない音楽CDのリッピングは規制の対象外だ。
日本レコード協会は歓迎
RIAJは歓迎
RIAJは、法改正により「インターネット上で蔓延する著作権侵害行為が減少し、健全なインターネット社会が実現することを期待する」との声明を出している。
同協会は2010年の調査として、43億6000万件の音楽、動画が、動画共有サイトやP2Pファイル共有ソフトなどを介し不正にダウンロードされているとの推計を挙げ、音楽創造のサイクルに重大な影響を及ぼしているとして、ほかの音楽関係団体とともに法改正の必要性を訴えてきた。
懸念を表明する法律家、消費者団体
MIAUなどは以前から反対していた
しかし今回の法改正について弊害を懸念する声も少なくない。ネット上の著作権問題に注目してきた弁護士などがブログなどで考察を明らかにしている。以前から刑事罰の導入に反対を表明していた東京弁護士会の小倉秀夫弁護士はブログで、改正法の詳しい解説を掲載している。
また東京弁護士会の落合洋司弁護士は、動画共有サイト「YouTube」や「ニコニコ動画」でただ動画を視聴しただけでも処罰対象になると判断される可能性はある、といった指摘をしている。一部にはYouTubeなどは対象外とする解説もあるが、根拠は文化庁の見解で、裁判所の最終的な判断と一致するとは限らないというものだ。
大阪弁護士会の壇俊光弁護士は「例えば、ホームページを見ていて興味深いので、参考資料として、名前をつけて保存しようとしても、そのページに許諾を経ていない動画が含まれていればアウトになる」との認識を示している。警察の恣意(しい)的な運用についても懸念があるとし、公正な理由があれば許諾なしで著作物を利用できる「フェアユース」の必要性も主張している。
このほかネット消費者団体であるインターネットユーザー協会(MIAU)も以前から違法ダウンロード刑事罰化に問題があるとの立場で、無知な未成年の摘発や、違法、合法の区別がつきにくいネットの現状、捜査権濫用の恐れなどを訴えてきた(関連記事)。
法律家もどこまでが処罰の対象、と完全な線引きはできない状況。利用者にとっては身を守るにしても見通しの利かない巨大なグレーゾーンが生じた形だ。
関連リンク
音楽団体の歓迎
法律家の懸念
ネット消費者団体の意見
(植木 皓=ニューズフロント)