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【ハローお仕事】

根気強く観測取り組む 太陽地球環境研の研究者

コンピューターで太陽(たいよう)のデータを調(しら)べる増田智准教授(ますださとしじゅんきょうじゅ)=名古屋(なごや)市千種区(ちくさく)の名古屋大太陽地球環境研究所(ちきゅうかんきょうけんきゅうしょ)で

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 明日の朝は東海(とうかい)地方で金環(きんかん)日食が、それ以外(いがい)の地方でも部分(ぶぶん)日食が起(お)きます。珍(めずら)しい現象(げんしょう)を前に太陽(たいよう)について予習(よしゅう)しようと、こども記者(きしゃ)は名古屋(なごや)大の太陽地球環境研究所(ちきゅうかんきょうけんきゅうしょ)(名古屋市千種区(ちくさく))で研究者に話を聞きました。研究者たちの成果(せいか)から見えてきたのは、繰(く)り返(かえ)し起きる爆発(ばくはつ)で地球にも影響(えいきょう)を与(あた)えているダイナミックな太陽の姿(すがた)でした。

 この研究所(けんきゅうしょ)の目的(もくてき)は「太陽(たいよう)から地球(ちきゅう)への光やガスなどのエネルギーの流(なが)れを理解(りかい)すること」と説明(せつめい)するのは増田智准教授(ますださとしじゅんきょうじゅ)(46)。太陽の表面(ひょうめん)上空では100万度(ど)のガスがうずまき、1日に何回も太陽フレアという爆発(ばくはつ)が起(お)きています。その仕組(しく)みを突(つ)き止めようと増田さんは、世界各地(せかいかくち)の天文台や人工衛星(えいせい)から観測情報(かんそくじょうほう)を集(あつ)めて分析(ぶんせき)します。

 データが集まる部屋に案内(あんない)されると、いくつもの画面に太陽の映像(えいぞう)やグラフ、数字が映(うつ)し出され、この瞬間(しゅんかん)も爆発が起きている様子(ようす)が分かりました。「世界中の研究機関(きかん)のデータがネットワークですぐ手に入ります」。過去(かこ)の情報も入手でき、試(ため)しに記者(きしゃ)の1人が生まれた日を検索(けんさく)すると、増田さんは「おお、太陽が活発な日だったようですね」と解説(かいせつ)してくれました。

 続(つづ)いて、徳丸宗利(とくまるむねとし)教授(54)の研究室を見せてもらいました。太陽風(ふう)という、太陽から猛烈(もうれつ)な勢(いきお)いで吹(ふ)いてくるガスを研究する徳丸さんは、観測するための装置(そうち)を自分たちで作っています。部屋の棚(たな)には町工場(こうば)のように電子部品(ぶひん)や電線が並(なら)んでいました。

 「世界のどこにもない装置を使(つか)うので、どういうのが良(よ)いのか手探(てさぐ)りで作るんだよ」と徳丸さん。長野県(ながのけん)の木曽(きそ)地方など国内4カ所にある長さ100メートルものアンテナが落雷(らくらい)などで故障(こしょう)すると、修理作業(しゅうりさぎょう)に追(お)われることも。

 徳丸さんは太陽風を観測し、地球に届(とど)く前にその強さが分かる「宇宙(うちゅう)天気予報(よほう)」の研究に取(と)り組んでいます。記者が「そのエネルギーで発電できる?」と尋(たず)ねると、徳丸さんは「オーロラの光は太陽風が源(みなもと)なので、発電に使えるかもね」と言います。ただ、現在(げんざい)の技術(ぎじゅつ)では難(むずか)しいので増田さんは「君(きみ)たちの時代(じだい)に期待(きたい)していますよ」とも。

 増田さんは「太陽の見た目の大きさは、手を伸(の)ばした先の5円玉の穴(あな)と同じくらい」と教えてくれました。太陽は月と比(くら)べ400倍(ばい)大きいですが、地球からの距離(きょり)も400倍あるので、見た目はほぼ同じ大きさ。「地球上で金環(きんかん)日食が見られるのは偶然(ぐうぜん)で、人間にとってラッキーなことなんですよ」と言います。徳丸さんは「専用眼鏡(せんようめがね)を使ったり、鏡(かがみ)で壁(かべ)に反射(はんしゃ)させたりして観察(かんさつ)して。太陽は絶対(ぜったい)、直接(ちょくせつ)見ないでね」と呼(よ)び掛(か)けました。

増田准教授(ますだじゅんきょうじゅ)(右)と徳丸(とくまる)教授(右から2人目)から太陽風(たいようふう)を観測(かんそく)するための機械(きかい)の説明(せつめい)を聞くこども記者(きしゃ)たち

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◆取材に行って

 鈴木君(すずきくん)は「太陽(たいよう)の大きさは地球(ちきゅう)の109倍(ばい)です。重(おも)さは太陽風(ふう)で1秒(びょう)間に100万トンも失(うしな)いますが、ものすごく大きく、そして重いな」とスケールにびっくり。「日本の1年間の発電量(はつでんりょう)の100万倍ものエネルギーがあるそうです」と太陽フレアに興味(きょうみ)を持(も)ったのは稲垣(いながき)さん。佐藤(さとう)さんも「太陽が、100万度(ど)もの温度(おんど)のガスを生みだすしくみは、いまだに解明(かいめい)できていないそうです」と不思議(ふしぎ)がりました。

 松村(まつむら)君は「太陽が活発すぎると、X(エックス)線などで宇宙飛行士(うちゅうひこうし)が被(ひ)ばくしたり、人工衛星(えいせい)の故障(こしょう)、通信障害(つうしんしょうがい)などが起(お)こります」と宇宙天気予報(よほう)の必要性(ひつようせい)を実感(じっかん)。折戸(おりと)さんは「成果(せいか)を英語(えいご)で発表(はっぴょう)すると知りました。勉強(べんきょう)ができないとなれないし、英語もできないといけなくて大変(たいへん)だなあ」。伊藤(いとう)君は「コストを減(へ)らすだけでなく、何回も試行錯誤(しこうさくご)してより良(よ)いものができるそうです」と機械(きかい)を自作する理由(りゆう)に納得(なっとく)していました。

◆夢みるみんなへ 太陽地球環境研・徳丸さんと増田さんから

 昔(むかし)から星を見るのが好(す)きな天文少年でした。太陽(たいよう)の研究(けんきゅう)は、科学技術(ぎじゅつ)が発達(はったつ)するたびに、絶(た)えず新しい姿(すがた)が見え、新しい知識(ちしき)も疑問(ぎもん)も出てくるので飽(あ)きません。(増田准教授(ますだじゅんきょうじゅ))

 研究とは、前例(ぜんれい)のないことを調(しら)べるので、人に聞けば解決(かいけつ)するとは限(かぎ)りません。自発的(てき)に興味(きょうみ)のあることを調べて深(ふか)める力を身(み)に付(つ)けましょう。実験(じっけん)には失敗(しっぱい)がつきもので、根気(こんき)強さも必要(ひつよう)です。挑戦(ちょうせん)する気持(きも)ちを忘(わす)れないでください。 (徳丸(とくまる)教授)

◆今週の記者たち

名古屋(なごや)市御器所(ごきそ)小6年 伊藤(いとう) 平(たいら)

静岡県浜松(しずおかけんはままつ)市蒲(かば)小6年 稲垣(いながき) 麻衣(まい)

愛知(あいち)県東郷(とうごう)町高嶺(たかね)小6年 松村(まつむら) 昂弥(こうや)

三重(みえ)県朝日(あさひ)町朝日小5年 折戸(おりと) 花帆(はなほ)

愛知県瀬戸(せと)市深川(ふかがわ)小5年 佐藤(さとう) ちひろ

愛知県西尾(にしお)市白浜(しらはま)小5年 鈴木(すずき) 啓史(けいし)

 

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