2012年06月23日

原発事故問題の根底を覆す決定的事実


昨日の朝日新聞には「米原発監視、現場が勝負」という見出しの記事が掲載されています。

「常駐検査官、抜き打ち検査、どこでも出入り」
「日本と違い書類に溺れず」
「情報を疑う力、必要」

内容は引用しません。その理由はこの質問から得られます。

「みなさんの中で、原子力発電所の所長や品質責任者の本音を聞いたことがある人はどれだけいますか」

手を挙げる人は皆無でしょう。申し訳ありませんが、誰もが原子力発電所の仕事に「無知」と言わざるを得ないのです。

これから記すことは、事故後1年3ヶ月間繰り広げられた原発論争の根底を覆す重大な事実です。

筆者の講演レジュメから
■ 研修の出発点と終着点   
1、 世の中おかしいです。正しく動いていません。申し上げるまでもないでしょう。
2、 みんな訳が分からなくなって困っています。日本人誰もがおかしさには気が付いているものの、どうしたらよいか分からないというのが実情でしょう。
3、 どうしたらよいか。その答えは「正しく動いているところから学ぶ」しかないのです。ディズニー社会と日本社会には大きな違いがあります。その違いを学ぶことにより企業も社会も正しく動いていくことでしょう。

福島第二原子力発電所.JPG

※2011年8月11日の東京新聞によると、福島第二原子力発電所も震災直後の3日間一部電源喪失していたそうです。増田尚宏所長は「人海戦術でかろうじて対応できた。人手が足りなければ無理だった。危機一髪だった」と話しています。

2007年5月に東京電力福島第二原子力発電所で「ディズニーランドに学ぶ安全管理」を行った際、私は以前から抱いていた疑問を所長以下幹部にぶつけてみました。

当日配布資料から
参議院会議録情報 第094回国会 エネルギー対策特別委員会 第7号
昭和五十六年五月二十九日(金曜日)

事故をめぐる解釈の問題であります。現在は、軽微な事故でも報告が義務づけられておりますが、軽微な事故とはどういうものなのか、また事故と故障の区分けは、どういうところで区分けをすべきなのか明らかでありません。その観点から、われわれはいままで環境への影響がどうなのか、さらには、そこに直接働くわけでありますから、作業の安全性についてはどうなのかという視点で物を考えてきたのが実態であります。そういう観点で見ますならば、今回の事故もその観点のみで見ていく場合には、十分配慮されたと確信をいたしておりますが、その判断の前提でありました設備の不信、設備が悪かったわけでございますから、設備に対する信頼が崩れていたわけでございまして、そういうことが今回の問題の大きな起因となっているというふうに思います。
 そこで問題なのは、軽微な事故をめぐります判断が、率直に申し上げまして、直接原子力発電所に働いている者と、国民の皆様方との間にやはり事故、故障に対する認識に対してのギャップがあったということは否めない事実として、われわれとしては認めていかなければいけないと考えております。そういう中で、軽微な事故でも報告をしていくという前提で、事故の公表範囲を明らかにするために、第三者の中立機関を早急に設置をすることを検討していただきたいと考えております。そのための協力については、電力労連といたしましても積極的に協力をしていきたいと考えております。
全国電力労働組合連合会政策局長     高松  実
<引用終了>

4月29日の日曜日に、テレビ朝日のサンデープロジェクトという番組がありました。東京電力の桝元取締役が出演された番組でした。
この番組で、当時のキャスターの田原総一郎氏はこういいました。
「他の発電所と比べ、東電は原子力発電所の事故が多い、98件もある」
フリップには「不正、不備」と明記されているのに、キャスターは事故と表現するのです。

筆者は、当時の高橋明男所長(6月に柏崎刈羽原子力発電所に移動され、中越沖地震にあわれました)や、増田尚宏ユニット所長(現在の福島第二原子力発電所の所長です)ら幹部に対し、「どこの発電所のホームページを見ても事故と故障の区別がされていない。『作業員が頭を配管にぶつけた』など、明らかに労働災害であるものまでもが公開されている。これが原子力発電所内からの情報を分かりにくくしているのでは」とたずねました。

この問いに対する答えは「何をいってもマスコミは悪く書く。(自己防衛上)もうあきらめている。」というものでした。

私は、講演前は原子力発電所の所長とは私服勤務で地元の住民とのコミュニケーションを取ったり、入り口や周辺の警備状況を確認したりしているものと思っていましたが現実は違いました。よく見かける電気配線工事の制服と同じです。この意味は、四国電力伊方原子力発電所での「体験」で明らかになりました。会社の「体質」が表顕されているのです。

原発の重大事故に関しても、高橋所長は「重大事故など起こしたくても起こせない」と断言されていました。当日私は、シミュレーション施設で原発運転中に非常停止させる体験をしました。私の前に同体験をしたのは、鳩山邦夫元総務大臣だそうです。

この体験は、私にとっては面白くもなく、何の勉強にもならないものでした。その理由は、東京ディズニーランドのアトラクションキャストが「エマージェンシー・ストップ(非常停止)」のマッシュルーム型の赤いボタンを押す行為と同じだったからです。

そんなこともあり、私はそのときも「原子力発電所の安全性は保たれている」と判断しました。今から考えると、当時の幹部にも巨大津波の襲来など頭になかったものと勘案されます。東電の幹部やとりまきの役人が、原子力発電所の現場で働く人たちを「安全神話」という作り話で洗脳していたのでしょう。もちろん、私も洗脳されていた人間の一人ですが。

同年の11月に四国電力伊方原子力発電所での講演のため、ミカン畑が実に美しい愛媛県八幡浜市を訪れました。伊方原子力発電所はさらに西方の佐田岬半島に位置するため、講演前日に八幡浜市に宿をとりました。近くの料亭で伊方原子力発電所の品質保証責任者の林直義氏と会食しましたが、私の多くの「酒の席」体験でも、もっとも愉快な会食でした。

二人で三時間ほど話したと記憶していますが、そのほとんどが「技術論」でした。誰でも同じでしょう。車を自分が思うように操縦する話や、ゲーム機を操り、思うように物語を進めていく話などは他人に聞いてもらいたいに違いありません。「そうだ、そうだ」と確認し合うことで、お互いの満足感も高まるのものです。

その酒席では、「ジェットコースターを安全に動かす話」や「原発プラントを安全に維持管理する話」などに花が咲きました。

私は、「原発反対論者が『角砂糖5個分のプルトニウムで日本を全滅させられる』と宣伝しているが、どのようにして全日本人に配布(注射?)するのか、あまりにも無知滑稽ないいがかりである」と発言したところ、林氏は「プルトニウムの毒性はフグの毒性と同じです。その手の報道には本当に困っています」と教えてくださいました。

さらに私は、以下のような質問を試みました。
5月に「私の講演を聞いて下さった高橋氏が所長の柏崎刈羽原子力発電所が、4ヶ月前の中越沖地震で被災しました。あのとき、さもや外部変電施設火災の消火を放棄していたかのように報道されていました。NHKは上空から黒煙を挙げる火災現場の映像を流しつづけました。私なら付属施設の消火など放っておき、本体施設点検に全力を注がせますが」

林氏の答えは「私もそうだと思い、高橋所長に確認したところ、冷やす、閉じ込めるの原則にのっとり、全員を本体に集中させたそうです」という答えでした。

311により、配管が張り巡らされた原発内部の様子をうかがい知ることができました。あの複雑な建屋内の冷却施設などに損傷がないか点検し、指令センターに報告する作業が優先されるのは、「冷やす作業」の必要性上当たり前のことです。

東京ディズニーランドも同じです。地震によりアトラクションは緊急停止しますが、再開させるにはマニュアルに基づいた施設の点検が必要不可欠です。

中越沖地震後の原子力発電所において外の変電施設の消火活動などまったく論外なのです。

ウィキペディアより
今回の地震では放射性物質の漏れは健康に問題があるとされる量を遙かに下回っているとされる[18]が、たび重なる報道により、観光・漁業・農業などで「買い控え」がおきると言った二次的な風評被害が発生している。さらには2007年7月26日から8月まで秋田、静岡、千葉の3試合を日本で行う予定だった、セリエAのカターニアは、放射性物質の流出を理由に日本遠征を中止した。泉田裕彦新潟県知事は「日本全土が放射能に包まれているような報道が海外でなされ、サッカークラブの来日中止どころじゃない甚大な風評被害が生じている」と語っている[19]。地震後の優先順位は電源確保が最優先され変電機の火災(煙)に対する消火は地震発生時全体に比べ危険度は微々たるものであったが、媒体などで煙をあげる変電機の映像を繰り返し、正確さよりも事故の危険性を煽ることを中心とした報道がなされた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%88%88%E7%BE%BD%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80#.E9.A2.A8.E8.A9.95.E8.A2.AB.E5.AE.B3.E3.81.AE.E7.99.BA.E7.94.9F

このNHKの報道により、風評被害が広がり柏崎市や新潟県の損害は2000億円とも3000億円とも言われているのです。
柏崎市はNHK対しに風評被害拡大にともなう損害賠償訴訟を行うべきなのです。

さらに、林氏は「制御棒が抜け落ちたことが問題になったことがありますが、制御棒が全部抜けるとどうなるか分かりますか」
私が「いや、分かりません」と答えると、林氏は「私たちは東海村の原子力研究所でその実験をさせられるのです。全ての制御棒が抜けるとドップラー効果により核分裂の連鎖反応が低下し、原子炉内の温度は逆に下がっていくのです。」と教えてくださいました。

次の日、時間があったので近くの港の魚市場を見学にでかけました。ところが、です。行き帰り二回も道に迷い、二回町の人に道をたずねましたが、なんとも親切な応対に感銘を受けました。

そのことを、迎えの四国電力の社員に話したところ、「私ども四国電力の社員は、かならず年に一度、地元の一軒一軒の家を回り、コミュニケーションを取っています。そのことが影響しているとすればうれしい限りです。」と話してくださいました。

伊方原子力発電所の社員の気風は違いました。東京電力同様に制服を着用していましたが、東京電力以上のモチベーションの高さを感じました。前日の林氏の「原発運転は楽しい」という言葉が思い起こされました。

頂いた所長の名刺には、四国電力株式会社 取締役 原子力本部 伊方発電所長 柿木一高と明記されています。福島第二原子力発電所の所長は、東京電力株式会社 福島第二原子力発電所長 高橋明男 となっています。

四国電力の所長は「取締役」、つまり、会社経営の役員ですが、東電の所長は社員ということになります。会社の思想や組織体系が両社では全く違う、私は今もそう思っています。東京電力であるから今回のような事故が起きた、そう断言しても良いとさえ思います。

ある幹部が重要なことを話してくださいました。
「全国の原子力発電所には、国の役人が常駐しています。その人たちは、私たちをまるで監視しているかのように、箸の上げ下ろしまで見ているのです。若い社員は『何か、私たちは悪いことをしているみたいでいやになる』と言っています。モチベーションの低下が本当に心配です。」

私はこのこと、今回問題になった「現場から逃げ去った無能で悪質な原子力安全保安院の役人たち」が、現場である原子力発電所で働く人々のやる気を失わせている」という事実を世界に向けて発信していきたいと思います。冒頭のアメリカの原子力発電所の内部調査と正反対のことをしているのですから、そのことを世界中に知らせる必要がある、私にはその責任があると考えます。

現場に常駐している原子力安全保安院制度について説明します。

経済産業省発行の「原発2007」より
原子力防災対策については、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体において防災計画を定めるなどの措置が講じられてきました。1997年6月には、災害対策基本法の枠組みの中で、関係者の役割分担の明確化などを内容とする防災基本計画原子力災害対策編が策定されました。
<中略>
1999年9月のJCOウラン加工施設における事故への対応において、初動段階で事故の状況の迅速かつ正確な把握の遅れなどの問題が明らかとなりました。このため1999年12月に@迅速な初期動作と、国、都道府県及び市町村の連携強化、A原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化、B原子力防災における事業者の役割の明確化などを規定した「原子力災害対策特別措置法(原災法)」が成立し、原子力防災対策の根本的な強化を図ることになりました。
<中略>
現地に駐在している原子力防災専門官が原子力近傍に設置されている緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)において警戒態勢の立ち上げを行うなど、原子力災害対策のための業務を実施します。
<中略>
 原災法においては、平時より原子力防災専門官が現地に駐在し、事業者や地方公共団体と連携した活動を行うとともに、原子力緊急事態が発生した際には、あらかじめ指定されたオフサイトセンターに原子力災害合同対策協議会を組織することとされています。
<終了>

彼らは、「バケツで臨界」という世界最低の恥ずかしい原子力事故を起こした施設の管理もできていなかったのです。張本人なのです。しかしながら、その後彼らは、マスコミや世論の間違った「扇動」で、さらに自分たちの「支配力」を強化することに成功したのです。

さて、実に愉快な記録をお見せしましょう。それは、2007年の中越沖地震後にあの「原子力安全保安院」が出した中間報告書です。

<引用開始>
C電源の確保
冷やす機能を確保する上で、燃料から発生する熱を除去する系統を作動させるために必要な電源確保が重要である。このため、停電や送電系統の故障により外部電源が確保できなくなった場合を想定して、非常用のディーゼル発電機(DG)が各号機に複数備えられている。
今回は、大規模な地震であったにもかかわらず、地震直後に4系列ある外部電源(送電系統)のうち3系列(後に一時的に2系列)が確保されていたため、非常用DGを用いるには至らなかった。
しかしながら、非常用DG の健全性は速やかに確認しておくことが必要であるため、地震後のパトロール及びその後行われた点検において、非常用DGに損傷がないことを確認するとともに、月1回の定例試験(7月25日に地震後初めて実施)により、当該DGの作動確認試験を行い健全性が確認された。
したがって、今回の地震により仮に外部電源が喪失していたとしても、非常用DGによる電源が確保されていたものと判断される。
以上のことから、「電源の確保」はできていたと評価する。
http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/800/16/090213.pdf

この報告書によると制御棒投入は地震発生2秒後に行われています。東京ディズニーランドのジェットコースタータイプのアトラクションのタワーと呼ばれる運転モニターキャストは、いつでも停止できるように常にエマジェンシー・ストップボタンに手を置いていいます。同様に、いつでも手動停止できる役割の原子力発電所中央制御室の所員が手動停止ボタンを押し停止させたのか、地震の高い加速度を感知したコンピュータが自動停止させたのかは記述がありませんが、いずれにしても「最大相対変化(最大の揺れ)」以前に制御棒が投入されている点は高く評価されているのです。つまり、現場は正しい仕事をして、正しい結果を出したということです。

最大の揺れの前に原発に対し「止めろ」という指示が出せたこと、火災を放っておいて冷温停止に集中したこと、東京電力は経営陣には大きな問題がありますが、現場の運転者は立派な人たちである、私はこのことを世界中の人々に知ってもらいたいと考えます。

このことは、あることを教えてくれています。それは、現場には無知な役人は必要ないということです。

菅直人前首相が言うように、役人は本当にバカなのです。私は東京ディズニーランド勤務時代に、何回も横浜の旧運輸省にチケットやカレンダーを届けました。「このチケットで視察に来てください」と伝えていますから賄賂性はありませんが、彼らがチケットを私物化しているとすれば、収賄になります。私が在任中は一度も視察に来たことがありません。私物化している可能性が極めて高いと思います。

さて、ここまで二つの原子力発電所で体験したこと、「本当にあった」話を中心に記してきました。

私が一番言いたいことは、福島第二原子力発電所の当時の高橋所長を唸らせた私のこの一言です。

「安全管理上、最も大切なことは、護送船団に入らないこと、国や関係組織からの通達は無視すること、だからディズニーランドは成功し続けているのです。」

産業界には、役人を寄生させない健全な組織でなくては事故や不祥事は防ぐことはできないという「勝利の方程式」が存在するのです。

今後も追求をしないとさらに現場から逃げた役人はさらに逃げ続けます。絶対に、「私たちも無責任であったことを反省します。ぜひ処分してください」などとは考えません。

東京電力を責め立てても感情が高ぶるだけでメリットはありません。全国民にとっと本当の敵は役人組織である、実利を得るためにはこの国に寄生する国家公務員を激減させることしかない、私はそう考えドリーム党の政策づくりを進めたいと思います。

長くなりました。ここまでお読みくださいまして本当にありがとうございます。最後に私も行った東京ディズニーランドのアトラクション、ジャングルクルーズのスピールのほんの一部をお楽しみください。

あっ、みなさん見てください。(ゴリラにキャンプを襲われた)探検隊がサイに追いつめられています。
(ポールに上っている5人の探検隊員のうち)一番下の人には・・・勇気があった。
まんなかの三人には・・・知恵があった。
一番上の(白人の)隊長さん・・・・勇気も知恵もなかった。
あったのは逃げ足の速さだけ。
ジャングルで生き延びるのに大切なこと、それは逃げ足の速さなんですね。

(そしてジャングルクルーズの終着点へ)
みなさん、これからみなさんをこのジャングルで最も危険で、最も恐ろしいところにご案内します・・・・・それはみなさんが住む文明社会です。

posted by M.NAKAMURA at 15:49| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする