• 20090615

    石川直樹連続トークセッションvol.2 その5

 
3月20日にジュンク堂新宿店で行われた、石川直樹連続トークセッションvol.2。
ここでは全5回にわたってその模様を掲載していきます。

 
石川直樹連続トークセッションと言いつつ、肝心の石川さんがゲストの服部さんを残して、トークセッションの途中で北海道へ…。
トークセッションvol.2は急遽、服部さんのトークショーへと変りそのまま続行!ということになりました。
今回も服部さんのトークショーの模様をお送り致します。
服部さんのお相手を務めるのは、前回に続きリトルモアの編集部員・田中です。
 
 

第5回 サバイバル登山のはなし(下)

 
 

田中:毛針の写真もありますよね?毛針がなにか分らない方もいらっしゃると思うのですが、渓流釣りには大きく分けて、「餌釣り」と「毛針釣り」があるんですよね?
 

(撮影・丸山剛)
 
服部:「餌釣り」は昆虫なり、ミミズなりを餌として使うんですが、毛針釣りは羽とか獣の毛とかで作ったニセの餌を使うんです。もし岩魚が川に一匹いて「毛針」と「餌」を流したら、岩魚は餌を食べます。それは間違いないです。毛針は偽だというのは、連中はよーく見れば判るんです。それで釣られたら、それは騙されたお前がいけないんだ、ということで僕は少しだけ罪悪感が少なくて済んだような気になるんです。なので僕は毛針釣りしかしていません。
(写真の右端の毛針を指して)これはカマドウマの形の毛針なんですけど、カマドウマって知ってますか?
 
田中:いわゆる便所コオロギですか?
 
服部:そうそうそう。あれがですね、岩魚にもおそらく好き嫌いがあるんだと思うんですけど、良く釣れるんですよ。カマドウマは山に結構いまして、焚火してると光に誘われてボンボン飛んでくるんです。僕もかつては餌釣をしていたことがあって、その飛んで来たカマドウマを捕まえて、それで岩魚を釣ると良く釣れました。それで開発したのが、このカマドウマの毛針なんです。
 

パネルにした写真を使って、服部さんのトークショーは続きます。
正面に見えているパネルは、立山連峰の剱岳(つるぎだけ)という名の山の写真です。
日本にこんな場所があるなんて! 日本中の登山家の、憧れの場所なんだそうです。

 
田中:サバイバル登山中の服部さんの寝床の話も聞いてみていいですか?これがその写真ですよね?
 

 
服部:あー、コレ。あのですね、これはテントではなくて、タープと言います。いわゆる天幕ってやつですね。
それで下に敷いてあるのは熊の毛皮です。昔はコケを敷いたり、草を敷いたりしてたんですけど。
ちなみに、たしか2006年だったと思うんですけど、サバイバル登山をしている最中にマットを拾ったことがありまして。落ちてたマット拾ったんだから使ってもいいだろう、ということで敷いてその上で寝たら、すごく柔らかくて驚きました。以来その拾ったマットを使っていたのですが、今はやめて、熊の毛皮を敷いてます。
ただ、どっちが良いかといったら、人間の作ったウレタンのマットのほうが気持ちがいいです。精神的には熊の毛皮のほうが気持ちが良いですけどね。
 
田中:これはフリークライミングしている写真ですか?
 

 
服部:そうです。フリークライミングっていうのは自分の手と足だけで岩壁を登って行くというものなんですけど。
あのですね、僕はK2を登った時は酸素ボンベを使って登ったんですけど、わざわざ酸素の薄いところいくのに、酸素を吸って登っていくっていうのはどういうことなのかあっていう矛盾を感じたんです。そういう時にフリークライミングを再認識したんです。登るっていうのは、自分の手足で登ることなんだって。
それで、それを例えば北アルプスや南アルプスでやっていったらどうなのかなあ?という思いが、僕の今の登山スタイルに繋がっていくわけです。
 
田中:なるほど。服部さん、今日は面白いお話をありがとうございました。
最後に、この石川直樹連続トークセッションは、できたらみんなにも富士山に登って欲しいっていう思いを込めて開催しているんですけど、これから山に登られるとか、富士山に登ってみようかなって思ってる方に向けて一言、服部さんからいただけますか?
 
服部:えーっとですね。僕のお勧めとしては、富士山は山開きしてるときには登んないほうがいいです。山開きの前後、6月と9月が雪がなくて、静かで、登りやすいと思います。その時期に沢山の水と、なにか食べ物をもって、ゆっくり登ってもらったら、おそらく石川君が見せたかった富士山の一つや二つが見れるんじゃないかと思います。山開きしているときの、何万人も登山客がいる時に登ると、人しか見れないかもしれません。静かで、本当の富士山が体験出来る時に登ってもらって、それで山登りにはまってもらったら良いと思います。
 

こちらは富士山の山腹から見下ろした写真です。
きっとこれも、石川さんが見せたかった光景の一つなのでしょうか?
(写真は写真集『Mt.Fuji』より)

 
 
服部さん、本当にありがとうございました。
服部さんは弊社より4月22日に刊行された、季刊「真夜中 No.5 Early Summer」に、エッセイを寄稿して下さっています。
こちらも是非チェックしてみて下さい。
 


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