交流戦優勝を決めた巨人が、さらなる王国作りへ乗り出している。今回のVの原動力となったのは、ノーヒットノーランを含む4勝1敗の杉内俊哉(31)だったが、原辰徳監督(53)は「第2の杉内」をテーマに、水面下での補強戦略を進めているという。キーワードは「キレのある左腕」。ターゲットはロッテ・成瀬善久(26)だ——。
今年の交流戦ではセ・リーグ初の優勝を飾った原巨人だが、その程度で満足してはいられない。開幕前に白石オーナーが「今年は無敵巨人元年。10連覇を目指す」と表明したように、黄金時代の復活を見据えた長期的補強計画が進行中だ。とりわけこの交流戦で手も足も出ず、2連敗を喫した〝天敵〟でもある成瀬の獲得が最優先課題の一つとなる。誰よりも、ほかならぬ原監督が成瀬の力を評価している。交流戦で5月26日、6月10日と点こそ取ったものの、いずれも勝負が決まった9回二死からと事実上の完敗。2度目の対決となった東京ドームでは、5番・阿部以外右打者を並べながら最後に1点を取り返すのがやっと。「いい投球をされた。相手投手が上回った」と、潔く力負けを認めて〝脱帽談話〟を口にするしかなかった。球団関係者が原監督の胸中をこう代弁する。
「現代の野球でエースになれるのは、キレのある変化球を持ち、なおかつ緩急とコーナーワークを使える左投手だと原監督は考えています。だからこそ杉内をソフトバンクからFAで獲得し、背番号18まで与えて、見事に巨人で成功させた。とはいえ、杉内も31歳。年齢的に見れば、2〜3年後までエースでいられるかは分からない。その点、成瀬はまだ26歳で、国内FA権を取得する2年後も28歳。そのときに獲得することを考えて、いまから調査を進めておこうということ。メジャーも含めて、興味のある球団は多いようですから」
2年後のFAだけでなく、条件さえ整えば今オフのトレードでも動きかねないほど、原監督は成瀬にほれ込んでいるという。
確かに、巨人は杉内で貯金する一方、150キロ超の球速が売り物の右腕・澤村は4勝7敗とひとりで借金生活に転落。昨季の開幕投手・東野も今季はまだ1試合登板しただけだ。二軍の若手を見ても、剛速球を誇る7年目の辻内はいまだ一軍で登板機会がなく、変化球投手の2年目・宮国、3年目・星野が初勝利をマークしている。「未来のエースはスピードよりキレとコントロール」が、原巨人の新たな補強コンセプトなのだ。
交流戦初優勝で勢いをつけた巨人、この調子で突っ走れば前半戦を首位で折り返す可能性も十分にある。前半戦終了後、原監督が毎年恒例の渡辺球団会長へ前半戦終了報告に訪ねた際、その場で早くも「成瀬」の名前が話題に出るかもしれない。