街頭で聞こえてくる「正直ビミョーっすね」「あの先輩ウザい」「ここのつけ麺ヤバい」といった若者言葉に嫌気が差している人は多いだろう。だが、ビジネスシーンを中心に、もっと厄介なフレーズがある。それは「わからない」。最近の若者はなんでもかんでも「わからない」で済ませているのだ。おい、お前らよく聞け。「わからない」にもいろいろあるんだ。ちゃんと〝仕分け〟しないとヤバ…じゃなくて大変なことになるぞ!
「ひと昔前まで大学では『わからない』はさほど安易に口にしてはならない言葉だった。ところが、今の学生は二言目には『わからないです』。学問というのは『世界はわからない』ことが前提なので『わからない』ことがあるのは当たり前。問題なのは、思考の出発点にならなければいけない『わからない』を、その場を終わりにできるスイッチオフ用語として多用している点です」
こう話すのは、「働く大人の教養課程」(実務教育出版)を出版した岡田憲治専修大教授(政治学)だ。コレ、学生だけの話じゃない。皆さんの周りでも、既に似たような状況が頻発しているはずだ。部下と上のようななやりとりを交わしたことがある人もいるのでは?
【事例1】
「昨日お前がとってきた注文、納期はいつまでなんだ?」→「わかりません」
【事例2】「私はA案よりもB案の方がいいと思うのだが、お前はどう思う?」→「よくわかりません」
この事例でわかるように、今の若者は「わからない」と言えばその場を逃げ切れると誤信したり、「自分、頭悪いんで…」と卑下というよりは開き直りに近い発言をするのだ。さらに、問題の本質はもっと根深い。
「『わからない』を連発すると、もはや何が『わからない』のかがわからなくなります。大学の授業に出ているけれど『自分が何でここにいるのかわからない』という学生も出現しつつあります」(岡田教授)
親は勉強させたいと思って高い学費を払っているのに、子供には全く伝わってない!?
「だから、上司は若者に何がどのように『わからないか』をはっきり〝仕分け〟させる必要がある。これをやらないと上司も若手もお互い実に不幸な時間を過ごし、救われない関係になるだけです」
といっても、どうやって仕分けりゃいいのか。
岡田教授によると、「わからない」状態を次の4種類に区別してみる必要があるという。
①「言葉の意味や背景知識」がわからない。「日本語」がわからない
②「どうしてそういう理屈になるのか」がわからない
③理屈はわかるが、「言っていることの意図や目的」がわからない
④「どう評価していいのか」わからない。「どれを選んでいいのか」わからない
例えば、①だったら「自分で調べろよ」あるいは「ググれ(グーグルで調べろの意)」と一喝してやればいい。ガツッと言ってやろう。
でも、②や③の場合は上司がきちんと説明してあげる必要が出てくる。②なら筋道を立てて、③なら意図や目的を中心に説明しないと、部下が成長しないどころか、「ひょっとしてあんたもわかってないんじゃないの?」とナメられてしまうのだ。
で、④は論理も意図も目的もわかっているが、議論から導き出される選択肢が多岐にわたっていて重要なポイントが判断しづらいという状況。若手がここに到達できていれば悲観しなくていい。
「ここで悩むことができれば大したもの。①の『わからない』とは比べものにならないくらい多くの言葉を使って考え抜いているはずです。これこそ仕事がデキる人の悩みです」
とはいえ、若手社員にいきなり④を期待するのは酷というもの。ここは我々オジサンが怒ったり、しっかり説明するなど粘り腰を発揮して、少しずつ後押ししてあげようではないか。ちょっと面倒だが〝わからないマン〟が減った方が皆さんもストレスが減るのでは?
◇ビミョー、ウザイ、ヤバイは幼児語?
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